質問を活用した振り返りの有効性について
こんにちは、秋山です。
今日は、論文よんでみたシリーズです。
昨日に引き続き、アクションラーニングに関する論文です。立教大学経営部の名物授業である「リーダーシップ入門」で行われた「質問会議」を活用した授業振り返りの有効性について調査したものです。
さっそくいってみよう〜
3行サマリー
リーダーシップ入門は、企業からプロジェクト課題が渡され、グループで課題解決に取り組むというもの(産学連携型のプロジェクトベースドラーニング、以下PBL)
授業の目標は、自分なりのリーダーシップをの発揮方法の理解と、専門知識の必要性を知る、ということ。プロジェクトの中間振り返りで質問会議を用いて、プロジェクトの進捗や進め方について振り返る。
質問会議がその後のグループワークの進め方に有効だったと回答した人は83%(293/353人)。進め方の軌道修正や、反対意見を言うことを臆さなくなったなど効果が見られた。
授業の進み方
授業は387名の学部生全員が参加する。20クラスにわかれ、さらにそれが5-6名のチームに分けられる。各クラスに一名の教員とアシスタントティーチャーがつく。
授業内容は全てのクラスで共通で、最終評価はビジネスコンテスト形式で決まる。今回の質問会議は、7回目の授業で行う中間振り返りで実施された。
補足:
2022年度 課題:大学生が将来のことをワクワク考えられるためにマイナビができることを提案せよ!
質問会議を取り入れた理由
質問会議は、アクションラーニングの生みの親であるマーコードと、日本アクションラーニング協会代表の清宮さんが共同で設計した組織開発フレームワークである。
質問会議では、質問が中心となって議論が進んでいく。
問題の問い直しが起こり、問題解決につながることが期待されている。
質問会議のすすめかた
まず、一般的な質問会議の進め方を示す。
人数4-8名推奨
役割分担
アクションラーニングコーチ1名
問題提示者1名
そのほかの参加者
アクションラーニングコーチの役割
ファシリテーター
会議の内容には介入しない
会議の進行と学習過程にのみ質問を用いて介入する
問題提示者の役割
自分が抱えている問題を提示する役割
例「グループワークの負担が自分一人に偏っている」
その他のメンバーの役割
できることは、質問のみ
提示された問題について、意見やアドバイスは一切してはいけない
「いつからその問題は起きていますか?」といった質問を通じて、問題そのものを掘り下げたり、問題が明確になってきた後に「問題の再定義」を行う
問題の再定義
問題提示者は、他者からの質問を通じて問題を捉え直し、再定義する
例「グループワークの負担が自分一人に偏っている」>「それぞれの負荷がオープンに共有されておらず、お互いが遠慮してしまっている」
解決策の検討
再定義された問題にたいして、解決策の検討をみんなで行う
質問会議自体の振り返り
セッションへの影響、関わりを振り返ることで自分のリーダーシップ行動を振り返る
提示された問題の種類
アクションラーニングコーチがメモした内容を元に問題の分類を行った結果、以下の4つに集約ができた。その結果「ディスカッションの不活性」が最も多かった。自分の意見を言うこと(反対意見含む)に困難を抱えている学生が多くいることがわかった。
グループワーク改善への効果
質問会議後に行動を変えた人は、83%
問題提示者は全体の16%(62名)なので、提示者以外にも改善行動が見られたことがある。
なぜ、質問が行動改善に役立つのか?
一つのグループの変遷をまとめたものが以下の通り。
質問を通じて「学生Aが問題をどのように考えているのか」が移り変わっていくのがわかる。
学生Aは問題を環境から自分自身に変化させた。質問を通じて問題の捉え直しがおこることで、「問題の主体に対する認識の変化」が起こるという示唆が得られた。
個人的感想
質問会議は、一種のピアコーチングととらえることができそうだ。「アドバイスや意見を一切いってはいけない」という制約を設けることで、質問しかできない、強制的なコーチング的場作りができるメリットがある。
また通常のコーチングとは違い、質問する側のメンバーも影響を受け行動を変えるというのはとても興味深い。問題提示者と質問するメンバーが、同じプロジェクトに参加する学生という共通した立場だからこそ、自分に置き換えて考えることができ、行動変容が引き起こされるのではないか。
質問会議が企業の組織開発で有効なのも、同じ会社・チーム・役職など共通点があるからこそだろう。
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