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うまくいくコミュニティの共通点(前編)

今回は、コミュニティがうまくいくポイントを紹介したい。


コミュニティと真正面から向き合い、OSIROというコミュニティ専用プラットフォームを開発し始めて8年。これまでクリエイター向けから、メディアやブランド、国のプロジェクトまで、合計300強のコミュニティ創出に幅広く関わらせていただいた。様々なタイプのコミュニティを多くみてきた中で、うまくいくコミュニティの共通点を発見した。

そもそも、何をもって「うまくいくコミュニティ」といっているのか。
それにはこれらの意味が含まれる。

・長期間コミュニティが続いている
・コミュニティがメンバーの居場所になっている
・メンバーと主宰者にとってコミュニティが価値ある場所になっている
・ほどよい熱量が長期間にわたり維持・保温されている

こうしたうまくいくコミュニティの共通点を、ぼくらがこれまでの経験から学んだ内容を踏まえて紹介したいと思う。まだ整理しきれておらず、荒削りで内容に濃淡もあるが、ひとまずライトに書き綴らせてもらおう。(なお、紹介する順番は優先順位などとは関係なく、思い浮かんだまま書いている。)

目的の重なり

コミュニティをやる上で大事なのは、まずコミュニティを立ち上げたり、継続していくときに、なぜコミュニティをやるのか?という目的が明確に定まっていること。どうやるかよりも、なぜやるのか?何のために立ち上げるのか?なぜ継続するべきなのか?ということが非常に重要である。

実は、方法から入ってしまう場合も少なくない。コミュニティが流行っているからではなく、今行っている活動を続けていきたい、そのために応援してもらいたい、とか。こういうことを考えているので仲間が必要なんだ、とか。同じ価値観で同じ熱量で話せる仲間がほしいから、などなど。

自分たちの利益よりも、業界そのものを変えたいなど、社会的意義のある想いがベースにあるほどうまくいっているケースが多い。

例えば、小説家の平野啓一郎さんがナビゲーターをつとめる「文学の森」というコミュニティでは、平野さんのファンコミュニティを形成されるというより、平野さんが純文学を広めたいという想いからコミュニティが発足している。

さらには、この主宰者の目的はもちろんのこと、メンバーになる方の想いやニーズとの重なりをつくることも大事なポイント。うまくいっているコミュニティは、「主宰者の目的」と「メンバーの目的」の重なりがきちんと設計されている。さらに、この2つの重なりに加えて「コミュニティの目的」の3つが重なると、より継続性が高まる。

目的の重なりイメージ図

熱量フィット

次に、コミュニティメンバーを募集する際、入会ハードルを設け熱量を担保すること。

熱量の測り方はいろいろあるが、たとえば入会時にコミュニティの目的や価値観への共感度、コミュニティに入ってやりたいことを聞いてみる。最もわかりやすいのは、会費を設けることだ。

さらに、コミュニティのメンバー数の規模は、熱量が高いユーザー数に合わせること。
たとえば、あるクリエイターのコミュニティをつくるとして、「300人集めよう」と決めるのは熱量を無視することになる。そうではなく、「このくらいの熱量のある方々に集ってもらいたい」「設計したハードルを超えた200人の応募があったけど、熱量が高いと判断できるのは100人だ」「予想より多い人数から応募があったが、熱量の高いXXX人に入ってもらおう」など。熱量が高い方々がどれぐらい集まったかに応じて規模を設計するという考え方である。

一般的に少人数のほうが交流しやすいが、少なすぎても心地よくない場合もある。濃すぎるからという理由だ。同じ熱量の人々であれば、人数が多少想定よりも多くてもそれ自体には問題はないと思っている。偏愛する人たちだけが集まる場をつくることで、その熱を保温し、さらにアップすることができるからだ。

偏愛している人たちの集まりは、同じ熱量だからこそ成立する。
もし二人のうち一人が偏愛していて、もう一人がそんなに興味のない場合、会話が成り立たずに冷めてしまうだろう。それは規模が増えても同じだ。

では、どうやってメンバーの熱量を測るのか?
OSIROでは、オーナーが入会ハードルを調整できるようになっている。会費の設定もその一つだし、入会時の設問内容など、入会希望者がコミュニティとフィットするか判断材料をつくることで熱量を確かめている。

逆に、月会費なし、入会・退会いつでもOK、とすると、ユーザーの温度差に開きが生じてしまうため、運営の難易度が上がってしまう。

なのでコミュニティをつくるときに大事なのは、同じ熱量の人だけに参加してもらうこと。たとえ、ハードルを高くしてもそのハードルを超えたメンバーだけと集う。

熱量フィットのイメージ図

ビッグバン現象

熱量の高い人たちが集まったコミュニティは、いわば、高熱高密度な状態。では、その状態からコミュニティを活性化するために何をするか?

それは、集ったメンバーの興味をそそる企画や提案をするという着火剤をつくることだ。

第13回で紹介したクルマ好きのコミュニティを例にすると、一定のハードルを超えた、全国から集まった熱量の高いメンバーだけが集っている。個々の熱量は非常に高いのだが、それだけでは何も起こらない。

そこで「◯◯というレースに出たい人いますか?」と投げかける。それが着火剤となって、みんなの偏愛が爆発した。レースに出るためにライセンスを取得し、ヘルメットやレーシングスーツを買いに行き、サーキットで練習し…それぞれ自発的なイベントが立ち上がり、みんなで準備を進めたのだ。

一つのお題を投げかけたことによって、みんなのわくわくスイッチが押され、爆発が起こり、広がっていく。ぼくはこれを「コミュニティのビッグバン現象」と呼んでいる。

大事なことは「盛り上げる」ではなく、自然と「盛り上がる」こと。
運営側はあくまで起爆材を投げるだけだ。起爆剤は必ずしも運営だけが投げられるものでもない。メンバーからの発案が起爆剤になることもある。文春野球学校さんのコミュニティでも、メンバー発案で「偏愛選手名鑑」というユニークな企画が生まれ、メンバーといっしょに作ることが恒例行事になっている。

熱量が高い人たちの集りでしか発芽しない種をもとに、みんなが自発的に動き出す。そうすることで、発芽する。そうしてコミュニティは豊かになっていくのだ。

…と、連ねたが、まだまだほかにもコミュニティのうまくいくポイントはあるので、続きは後編で紹介したいと思う。

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