2022年は「森林の金融化」
オシンテック代表の小田真人です。
まいにち、まいにち、世界のルールトレンドを見ていますと・・・お!これは新たな兆しかも!? というのが浮かんできます。新年なので、僕の脳内に浮かんだものを、予言風にnoteに書いてみることにします。
去年の11月。スコットランドで開催されたCOP26(気候変動枠組条約会議)で我々が注目していたのは「Nature Day」気候変動を自然ベースのソリューションでどう止めるのか、ということについて主に話し合う日でした。
気候変動枠組み条約の会議、というと、各国の代表が話し合っているイメージですが、かなりの数の「サイドイベント」という公式イベントも開催され、多国籍企業やNGOや金融機関なども参加して、お互いに協力してこんな取り組みをしよう!というようなイニシアチブなども立ち上がります(実際その多くは事前に取り決めておいて、当日お披露目ということになるのですが)。
自然ベースのソリューションを話し合うNature Dayで立ち上がったイニシアチブはかなりの数に上ります。
例えば、世界経済フォーラムや国連環境計画(UNEP)のほか、金融機関や非営利国際機関などで設立されたイニシアチブ「IFACC」は、金融の力を使って、ブラジルやアルゼンチンに広がる熱帯林を保護しよう!というもの。
アマゾンの熱帯林がたいへんな勢いで減少している、ということを知ってらっしゃる方も多いと思います。なぜ減っているのか。この理由はじつに単純で、伐採して農地にして、作物(その多くは大豆)を売ったら儲かるから。
熱帯林のままもっていても誰のお金にもなりませんが、作物を作ればお金になる、それなら現地の人はせっせと開墾しますよね。
https://rainforests.mongabay.com/amazon/amazon_destruction.html
Photo by Rhett A. Butler(Drone photo of deforestation in the Bolivian Amazon for soybeans.)
この流れを「金融の力で止める」というのが先のIFACCのイニシアチブです。では、具体的にはどうやって森林保護をするのでしょうか。
IFACCでは、主要な銀行、企業、投資家、資産運用会社を結集し、持続可能な生産分野への融資や投資を拡大するという共同コミットメントが表明されています。さらに、署名企業と協力して、「新しい金融メカニズム」の導入と拡大に取り組んでいく、ともしています。
ここから考えられるのは、森林伐採によってつくられた大豆ではない、という認証制度を強化したり(付加価値のために、多国籍企業はこぞって宣伝するはずです)、現地に、森林を保護したほうがお金が儲かるという仕組みを導入することになります。
つまり、
『森林が炭素を吸収したら証書を発行出来て、お金になる』
という仕組みです。
カーボンマーケット(炭素取引市場)は以前から存在していますが、COP26 ではパリ協定でのルールが明確になったことから、市場がいよいよ本格化するとみられています。この活性化は、国の削減目標に使うものだけでなく、企業が独自に取引する「自主的炭素市場」にも及んでいます。
この自主的炭素市場はシカゴではすでに先物取引まで存在しているんですが、最近そこに、Nature-based Carbon Creditという新銘柄が登場しました。これまでの炭素クレジットの多くが、再生可能エネルギーによる削減分などを証券化したものだったのですが、それとは別に森林などの自然が吸収したものに限定したクレジット、という新たな証券が加わったのです。
世界の金融界がめざすフロンティア、それは「自然」だと言っても過言ではないでしょう。
なので、誤解を恐れずに言うと、
今年は「森林の(脱炭素証書による)金融本格化の年」になるでしょう。
世界の250年続いてきた、線形経済の仕組みが大きく変わろうとしている今、我々がどんな世界に住みたいのか。ありたい社会をデザインするツールとして、多くの人がルールに着目し、インテリジェンスを学べるよう、今年もオシンテックは活動して参ります!
インテリジェンスを学びたい、RuleWatcherコミュニティ(無料版あり)に入りたい人は、是非下記リンクよりどうぞ!
P.S. 今年じゃないですが、日本における5年後の予言としては、
「日本でもNGOの存在感が増すでしょう」
この辺りにピンときた方、Webサイトからご連絡いただければ嬉しいです!