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#001 本noteのトリセツ|"仕事と学びのデザイン"の連載をはじめるにあたって

Cover photo by Florian Klauer

はじめまして。本日よりnoteをスタートします。
テーマは「働き方」。仕事と学びを主体的にデザインするという発想に立って「自分ならでは」の働き方をモノにしよう。これが全編を通じて伝えたいメッセージです。
このnoteで実現したいこと、その背景などをまとめました。


届けたいことはなにか?(My WHY)

環境変化に翻弄されない。標準志向に追従しない。「自分で決める」を手放さない。そんな働き方を探究し、試行するための"叩き台"となる。

環境変化が激しく、仕事のコモディティ化が進み、私たちがコントロールできることが限られていく時代においても、個人の才能や価値観、動機づけ要因などの内的基準を大事にして、「自分ならでは」の働き方のスタイルをつくっていく

そんなことを念頭に置いて、仕事と学びの実践的なデザインについて考察します。

いま、なにが起こっているのか?

時間(WHEN)と場所(WHERE)について私たちがコントロールできることは限られている。

今、「時代」がブームである。VUCAの時代。正解のない時代。多様性の時代。時代の様相を物語るこうした表現が溢れる中で、私たちの仕事や働き方が直面する今日の状況は大再考時代と形容される。
 
その再考は、WHENWHEREに端を発している。2020年初頭からの世界的なパンデミックを奇貨として、時間(WHEN)や場所(WHERE)については多様な選択が可能になった。労働時間のフレックス化やリモートワークの浸透があり、私たちは柔軟な働き方の効用に目覚めた。

だが、パンデミックの収束とともに、こうしたポジティブな変化も揺り戻しの傾向にある。時間や場所に関するルールは組織の方針により決定される。私たちがコントロールできることは、残念ながら限定的であると言わざるを得ない。

仕事(WHAT)の地図はどんどん書き換えられていく。 

同様にWHATについても再考が必要とされている。これまでのキャリアデザインは、「将来どのような職務(WHAT)に就くか」をイメージすることが重視され、その実現を目指して行動することが一般的なアプローチとされた。

ただ、企業組織と仕事を取り巻く環境については不確実性が増している。デジタルトランスフォーメーション(DX)、ロボティクス、人工知能(AI)などテクノロジーの進展とともに産業構造は転換し、グリーントランスフォーメーション(GX)では新たな概念に基づく環境技術のビジネスへの実装が進む。
こうした変化に伴って、仕事の地図はどんどん書き換えられていく。慣れ親しんだ仕事が消失し、新たに多くの仕事が生まれている。将来の予測は困難で、先手が打ちづらい。私たちの対応は受け身になりがちだ。

ましてや、人生100年時代。より長いスパンでキャリアの捉え方が求められる状況においては、これまでのキャリアプランのような、職務中心主義でゴールありきのアプローチは見直しを迫られている。

どのような「これから」が考えられるか?

「働く」の再考において福音となるのは、WHYであり、HOWである。

このような状況において、私たちの再考に重要な意味をもつ問いはWHYであり、HOWである。

WHYによって問うべきことは、あなたが大切にしていること(WHY)を尊重し、その価値観を体現することによって、誰にどんなことを届けようとしているのか、ということ。
そして、HOWによる再考は、あなたの才能を発揮することによって、その大切なことをどうやって(HOW)届けるか、ということに他ならない。

昨今の組織・人事に関する潮流に目を向ければ、人的資本経営、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン (DEI)、心理的安全性など、私たちにとって追い風となる動きがある。
「個」の自律と活性化を目的とした戦略的投資が加速される状況において、私たちを衝き動かす源泉を探り多様性を価値創造につなげるとする考え方は自然であり、理にかなっている。

  • 私たちの意志と裁量によってコントロールすることが可能なWHYとHOWにフォーカスすること。

  • WHYとHOWの視点から自身の仕事を再定義し、新たな学びの方法論に取り組み、本来の意味での自律的なキャリアを創造していくこと。

このような方向感での仕事と学びのデザインが求められている。

筆者はどのような機会を「これから」に見いだしているのか?

働き方の現実は、私たち一人ひとりの内なる多様性に比べれば、限りなく一様に近い。それは、スマホを標準設定のまま使っているようなものだ。

多様性とは異なること。標準志向に陥ることなく、私たち一人ひとりの違いに目を向け、才能や価値観をバネにして、軽やかに逸脱する。そうすることによって、私たちは「自分ならでは」の仕事の成果を生み出すことができる。仕事への愛着だって深まっていく。

多様性の尊重とは、言い換えれば、パーソナライズ(個別対応)を進めること。価値観は多様化し、私たちの消費者としての活動はモノからコト、さらには意味の消費へと移行している。マタニティから葬送に至るまで、私たちの消費活動のほとんどが、つまりは、生活そのものの多くの部分がパーソナライズの方向へと舵を切る時代において、「働く」だけが取り残されているような気がしてならない。筆者は、ここに大きな機会があると考えている。

WHENとWHEREの柔軟性が働きやすさをもたらしてくれたとすれば、WHYとHOWの問い直しによる仕事と学びのデザインは「働きがい」へとつながる道でもある。

本編はどのような構成になるのか?

1)内的な基準(WHYとHOW)を知ることの意味と着眼点
2)仕事と学びのデザインの方法論
3)不確かな時代の働き方についてのインサイト(洞察)

次回からの本編では、まず内的基準を起点とするインサイド・アウトの概念を紐解くことからスタートし、才能、価値観、動機づけ要因の視点から自己理解ついて考察する。

次に、仕事と学びのデザインツールとしての人事の仕組みや方法論を取り上げ、職場での効果的な活用法を考察する。
ポイントとなるのは、従来のやり方を漫然と踏襲することなく、目的とするところを腹に落とした上で、新たな視点や異なるアプローチをもって行動すること。たとえば・・・

人事評価制度の行動基準は「査定ツール」であると同時に、高業績への道筋を示すコンピテンシーモデルでもある。自身の才能や価値観を高業績モデルに掛け合わせることによってバージョンアップし、「自分ならでは」のスタイルで仕事の成果を生み出すためのガイドラインとして活用する。

複眼思考で人事評価制度/行動基準を味方にする(予定稿)

評価制度の他には、主体的な学びのスタイルの基礎をつくるリフレクション、探索の扉を開く鍵を手にするためのフィードバック、仕事を学びと成長につなげる経験学習、仕事に変化を加え、経験をデザインするジョブ・クラフティング、学びの最適化を図るポートフォリオとしての70/20/10 モデル、不確実な時代のキャリアコンパスとなるパーソナルビジョンなどについて探究する。

同時に、現在起こりつつあることや将来予測される労働市場の変化が私たちのキャリアに与える影響について論じる。不確かな時代の働き方についてのインサイト(洞察)を得ることによって、私たちが漠然と抱いている不安を具体的な課題認識に変えることができる。具体的には、アジャイル、ジョブ型雇用、副業/複業、リスキリング、人工知能(AI)などのテーマを取り上げる。

筆者は何者か?どのような仕事のスタイルか?(My HOW)

「人事の仕事で実験的なんて・・」という懐疑的な声もある。だが、多くのことが不確実な時代に、人事の領域だけが完璧に、整然とお膳立てできるはずもない。アジャイルな仕事の進め方だってやってみる。

このnoteの着想は、人事ビジネスパートナー(HRBP)としての経験から得ている。他の多くの仕事と同様に、HRBPには「これだけやっていればOK」といった決められたルーティンは存在しない。網羅的に書き連ねられた職務記述書の項目をチェックボックスとして眺めることもない。あるのは、「組織のパフォーマンス向上に資する」という役割認識に立って、なにができるかを考え、動くこと。 

一般的に人事の仕事には、制度設計における厳密さや運用での前例主義が求められがち。でも、「働く」というテーマほど、社会・経済動向の影響を受けるものもない。労働市場の変化と競争力ある人材獲得のための雇用システムのデザイン、事業構造の転換を後押しするリスキリング施策への投資、ビジネスサイクルが加速する環境下でのパフォーマンスマネジメントの見直し、価値観の多様化に対応した選択型学習プラットフォームの提案、テクノロジーが進化する過程での「人間だからこそ」の提供価値の再定義、など。実際のところは、柔軟に思考し、機敏に、実験的に試行するスタイルが欠かせない。人事の仕事の内実は、アジャイルな進め方に妙味があるといってもいい。

仕事の進め方においては、これまでの慣例や従来のマインドセットを疑うこともあれば、ゼロベースで見直すこともある。たとえば・・・

「フィードバックはサンドイッチで」とする作法。研修でも鉄板のコンテンツ。ただ、やっていて違和感を覚えたら、そのモヤ感を直視する。学説や事例を調べてみる。同僚へのヒアリングで受け止めの現実を知る。やっぱりそうか、と合点がいく。それなら、と違った方法を試してみる。

逃走の果てにありついたサンドイッチの賞味期限(予定稿)

「三人のレンガ職人」の寓話。仕事にはパーパスが大事、とする揺るぎない教訓。でもなぁ・・。そればかりとは限らないんじゃないか、と疑ってみる。関連資料にあたる。他愛のない雑談で反応を探る。モチベーション3.0を下敷きにして、新たなストーリーを紡ぎ出す。

「三人のレンガ職人」の後日談(予定稿)

好奇心をもって世の中を眺め、これはという方法を試してみる。結果を振り返り、再現性や汎用性を検証する。

本noteで紹介するアプローチは、欧米日での先行研究や先進事例をベースにしつつ、複数の職場で実践した経験から得られた洞察に基づいている。


次回は本編へ

ここまでトリセツを読んでいただき、ありがとうございます。

次回からの本編では、一回あたり2,000字程度の記事を週1~2回のペースで投稿していく予定です。ひとつのテーマ(たとえば、フィードバック)については、全部で6回から8回程度の短期集中連載の形式となります。

第一弾となる連載のテーマは、インサイド・アウト – これからの「働く」の方向性を考えるです。

お楽しみに!



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