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戦略人事実践塾 for DMM.com

DMMで人事部長をしている大嶋です。

先日投稿した続きで記載しておりますので、リンクを貼っておきます。

前回は「3年で日本一の人事部にして」と向き合ってきた背景と人事部全体の取り組みに焦点を当てて文章を書きましたが、具体的な取り組みもさらに紹介できればと思い、掲題の通り「戦略人事実践塾」という人事内の教育施策についてご紹介いたします。

戦略人事実践塾とは

「人事として力強さ」を身につけ、人事リーダーとして一皮むけるキッカケを作ることを目的にした実践塾のことです。

jigyojinの宇尾野さんや、Ethnographerの神谷さんらが実施している「戦略人事実践塾」に弊社メンバーが複数人参加しており、メンバーからオススメです!との複数意見を貰ったこともあり、「それであれば、DMM ver.にカスタマイズして人事部有志メンバーに受けてもらうような調整をしてみよう!」といった流れで実現に至りました。

人事メンバーから実際に貰った声

戦略人事実践塾を始めた背景

私自身が3年間HRBPや事業部人事、子会社管理などをプレイヤーとしてやってきたノウハウやナレッジ、スタンスや行動をメンバーに対して教育するということの難しさも感じていました。

※HRBPとして動いてきた取り組みについては別記事記載しておきます。
 長文記事になっているので、あとで整理出来たらしようと思います。

DMMにおいては事業がコングロマリッドな状態で存在しているため、メンバーがそれぞれ向き合う事業ごとに組織課題や事業課題が異なる現状があり、私が実体験としてやってきたことがそのままノウハウ・ナレッジとして使えなかったり、それぞれのフェーズや個々人の能力やスキルに合わせてハンズオンでフィードバックや問いを立ててあげるといったことが必要でした。

事業ごとに求められる支援内容イメージ

近年、HRBPや事業部人事、採用人事など、細分化された職種がありますが、本質的には事業にとって必要な事を人事を土台に対応していくことが求められており、変化の多いDMMにおいては細分化された職種役割にこだわらず、場面場面において自分の役割を柔軟に変えていくという一種のクレイジーさも求められてきます。

ゆえに、役割を明確にした上で必要なHOWの教育をするというよりも、適宜役割を変容していくための視座を上げたリーダーシップや現場と向き合うスタンスの教育をする必要があると考えました。

人事メンバーが現場と向き合うときに出てくる3つの壁

一方で、私自身のミッションとしては人事部内の強化だけではなく、会社全体に対しての人事部長と言う役割もあり、DMM全体の組織課題と向き合う時間も増やさなければいけないというジレンマを抱えていました。

人事部組織を強化することは、DMM全体の組織課題を解決することと密接に関わってきているとはいえ、人事施策全般の企画や、経営陣との向き合いを優先させざる得ない状況になってきたこともあり、外部のプロフェッショナルな方々の力を借りて組織の強化を推進できないかということを模索しはじめました。

そんな折に、冒頭でも触れた通り、部内のメンバー複数人が外部受講している「戦略人事実践塾」の話を聞き、DMM出張版として、個別カスタマイズの可能性がないか相談させてもらえる運びとなりました。

塾の内容を一部公開!!

■実現する状態

担当する事業戦略と、それを実現するための組織の課題を正しく捉え、事業責任者と共に伴走している状態。

■そのために何をするか
人事部の中で、上記の取り組みに共感し、自ら行動を変革し続ける意志ある方を募集し、手を挙げてくれた人向けにカリキュラムを構築することにしました。参加者は人事メンバー6名で、実現する状態に持っていくための品質維持などを鑑みて、初回は6人という人数に絞って実施することにしました。

6名のメンバーを担当事業別にチームを組み、毎月1回3時間の講義とチーム別の作戦会議を実施し、事業戦略整理とそれに伴う組織戦略の課題整理、具体的なアクションプラン設定を実践塾講師陣と共に行っていくとともに、1人1人に対する中間レビュー面談を実施し、学習を促すようなカリキュラム設計でスタートすることにしました。

■実施にあたって大切にしたこと

  1.  「実践」を起点に「経験学習」を促す場であること。

  2.  成長意欲の高い参加者同士の相互啓発する場であること。

  3. 人事にとって「リーダーシップを開発する」場であること。

  4. DMMの組織課題解決の一役を担うこと。

■座学の内容も一部共有
座学を担当されているEthnographerの神谷さんに確認を取ったうえで、一部資料も共有させていただきます。 画像の内容は、補足説明がないと読み解きにくいものもあるかもしれませんが、リーダーシップや、学習の場の必要性、経験学習とは何か、情報の移転はどのように起こるのか、社内政治の本質とは何かなど、日常的に発生している事象について体系的に教えていただきました。

<参照> 小出琢磨, 城戸康彰, 石山恒貴, & 須東朋広. (2009). 人事部門の進化~ 価値の送り手としての人事部門への転換~. 産業能率大学紀要, 29(2), 35-52.
<参照> Bass, B. M., & Riggio, R. E. (2006). Transformational leadership. Psychology press. Russell, R. F., & Stone, A. G. (2002). A review of servant leadership attributes: Developing a practical model. Leadership & organization development journal.
<参照> Stewart, G. L., Courtright, S. H., & Manz, C. C. (2011). Self-leadership: A multilevel review. Journal of management, 37(1), 185-222.
<参照> Mun, Y. Y., & Hwang, Y. (2003). Predicting the use of web-based information systems: self-efficacy, enjoyment, learning goal orientation, and the technology acceptance model. International journal of human-computer studies, 59(4), 431-449.
<参照>Von Hippel, E. (1994). “Sticky information” and the locus of problem solving: implications for innovation. Management science, 40(4), 429-439. Szulanski, G. (1996). Exploring internal stickiness: Impediments to the transfer of best practice within the firm. Strategic management journal, 17(S2), 27-43.
<参照>Hansen, M. T. (1999). The search-transfer problem: The role of weak ties in sharing knowledge across organization subunits. Administrative science quarterly, 44(1), 82-111.
<参照>Jawahar, I. M., et al. "Self-efficacy and political skill as comparative predictors of task and contextual performance: A two-study constructive replication. " Human Performance 21.2 (2008): 138-157.
<参照>Kimura, T. (2015). A review of political skill: Current research trend and directions for future research. International Journal of Management Reviews, 17(3), 312-332.
<参照>Ferris, G. R., Treadway, D. C., Perrewé, P. L., Brouer, R. L., Douglas, C., & Lux, S. (2007). Political skill in organizations. Journal of management, 33(3), 290-320.
講師と事業/組織課題についてディスカッション①
講師と事業/組織課題についてディスカッション②

資料を多めに載せてみましたが、どうでしょうか?資料を見ながら実体験を振り返ると、なるほどなーと思うことがあるのではないかと思います。

体系的な知識をもとに事業側と会話したりすることで、より納得感を持って貰いながら一緒に進めることが出来るようになるので、これらの学習結果を自分の言葉で語れるようになるように、繰り返し繰り返し反芻し、咀嚼してアウトプット機会を増やしていくことが大切なのだなと感じました。
※そんな気づきもあり、noteを書かねばと思ったわけです。

■やってみての振り返り

まずは、やってよかった!と素直に思いました。

適切に情報を共有すれば外部メンターや外部コーチは成立する

私1人でメンバーに対して丁寧なフィードバックをやりきれていなかった所を補完してくれるような印象があり、私自身が会社全体や人事部長という役割と向き合う時間を作り出しながら、人事部内の組織強化を進められた感触がありました。

毎回実施後に講師陣と人事マネージャーによる1時間半くらいの振り返りを実施していますが、この振り返りの中で、第三者視点で見えるメンバーの良さや課題、向き合ってくれている事業の印象などを得ることができ、本来の主旨とは異なる部分でも多角的な情報収集をすることができました。

このことが、上司陣の学びにも繋がり、マネジメントのアプローチを変更するきっかけにもなったこともあり、やってみないと見えないことがあるのだなと学びになりました。

知識基盤を揃えることは色々役立つ

座学より経験学習のほうが実感知は多いというのはその通りだと思いつつ、そんな先人達の経験学習から得られた「知識」というものを、体系的に学ぶということは、洗練されたマニュアルを基に仕事をすることだと私は考えています。

そして、その個人学習を仲間に還元すること、それを繰り返すことが組織を成長させるということを学びました。

Stage1 型の構築・導入(守)
まずマニュアルを基にやってみる
Stage2 型の運用・効率化(破
運用をしていく中で自分達用にカスタマイズして、効率化していく
Stage3 型からの脱却と探索・実験(離)
トライ&エラーを重ねながら、新たな型を作っていく。

組織内で知識の基盤を作るべき意味

つまり、組織を成長させていくためには個人学習が必要不可欠であると、そう思います。

共通言語があると1on1がしやすくなる
メンバー各位が組織論に対しての共通言語を持てたことで、個別メンバーとの1on1において会話がしやすくなった感覚があります。

メンバーそれぞれが使っている言葉のニュアンスや意味合いに違いがあることを、参加したメンバー各位も理解できたため、メンバー間での情報連携にも良い効果があったように感じます。

暗黙知をもっと意識しなければいけない
例えば「任せる」という言葉は、どこまでを「任せる」のか、期待値はどういったものかなど多様な解釈があり、それを理解し上司の癖を知ることが仕事を円滑に進めるために重要だと思っています。

私の場合、細かい指示出しをしなくても大丈夫だと判断しているときは、前後の文脈を割いて「任せる」という言葉を使ってしまうことがあります。

この言葉の前後には、「今までの経験値があれば問題ないと判断しているよ」「お手並み拝見みたいなことはしないから、もし躓きそうなときはいつでも聞いてね」というニュアンスが込められているのですが、中途採用メンバーにはその意図が正確に伝わっていないことがあることに気付き、反省しています。

より意識的に暗黙知を伝えるようにし、円滑なコミュニケーションを図っていかねばと思いますので、このNoteのように自分自身の思考や想いを言語化していくように頑張りたいと思います。

組織規模が大きくなり、中途入社者が多くなると、どの組織においても起こりうる

DMM全体においても私と同じような学びが通じると考えています。

DMMの成長には、経験学習からの学びや仕事を通じた成長の考え方が大きな役割を果たしてきた一方で、組織規模が大きくなり、中途入社者が多くなった現在では、同じような原体験を共有することが難しくなっていると感じています。

そのため、DMMは、過去の歴史や教訓をインプットし、想像し、成果を出して貰えるような教育基盤を整えていくことが必要だと考えています。このような教育基盤を整えることで、中途入社者がよりスムーズに組織に馴染み、生産性を高めることができると考えています。

しかし、それでもDMMらしい行動規範や文化を守り、維持していくことも重要です。DMMは、自らのルールを作り、独自の哲学で成長してきた企業です。この哲学を守り、引き継ぐことが、DMMの今後の発展につながることになると信じているため、いいところどりをしていけるようなアプローチを考えていきたいと思います。

まず人事から

採用強化、キャリア開発、組織開発、能力開発、チェンジマネージメントなど、組織をより良くするためのあらゆるアプローチがあると思いますが、現場に対して人事施策を自信を持って提案して実行支援していくためにも、それらの施策を現場メンバーとして実際に受けることがどれだけ大変で、めんどうなのか、実感知を持っている必要があると思います。

そうでないと、日々数字と向き合い、事業を伸ばす事と向き合っている事業責任者に対して、それでもやる必要性がある、価値があると、彼ら以上の熱量や本気度で、事業組織と向き合うことが出来ないと考えているからです。

つまり、何がいいたいかというと、、、
「まず自分(人事)たちから」やる必要があるのです。

人事部門自身が良い取り組みを行っていないのに、他の部署に対して自信を持って施策を提案することは出来ないです。そのため、人事部門自身が実際にやって良かったことを共有し、他の部署にも良いノウハウとして広めていく。これが人事部門の仕事だと私は考えます。

それゆえ、現場を支援する人事部門には、自分で人事施策を企画・実行した経験があるか、複数の組織で人事と連携して施策実行をした経験がある人が必要です。さらに、組織責任者として人事施策を実行した経験があるか、複数の事業組織でのマネジメント経験がある現場の優秀な人材を、人事部門に採用・登用することが必要なのだと考えています。

DMMの人事部門には、このような経験がある人材が必ずしも揃っているわけではありませんが、複数事業のケーススタディをスピーディーに学習することができる環境が整備されています。
他の事業や組織で上手くいったケースや、逆に上手くいかなかったケースのノウハウ/ナレッジがあるため、自分が介在している組織においての成功確度を高めるないしは混乱リスクを低減させることができる組織であるというのが、DMMの人事部門の強みであると私は捉えています。

私の仕事は、DMMならではの環境優位性を認知させながら、学習環境や成長環境を整え、それらを広く社内全体に伝播させていくこと、伝播できる組織を作り続けていくことだと考えています。

最後に

最後に、戦略人事実践塾とは直接的には関係ないですが、このNoteをまとめながら感じたこともメモとして残しておきます。

複雑さを取り込む

今回、個人学習や組織学習のアプローチを一例を紹介するとともに、DMMの実態に合わせた学習や組織の在り方について振り返りをしてきましたが、改めて感じたことが、意図的に「複雑さを取り込む」ことが重要なのかもしれないということです。

DMMが17領域60事業の幅広い事業展開をしているのも、顧客の複雑なニーズに応え続けていくために、敢えてその市場の複雑さをシンプルに絞らずに複雑なまま受け入れるのが適していると判断したからだと考えています。


これは組織にも同じことが言えると考えており、例えば人事部においても人事組織をシンプルにしたり、役割整理をすることで、仕事がしやすくなったり、単一的な領域においては成果が出しやすくなると思います。

一方で、短期的な成果創出にはつながるかもしれませんが、柔軟性とはかけ離れていき、実態に合わない組織が中長期的には出来上がってしまうと考えます。

向き合うべきは、その「複雑さに複雑なまま対応すること」であり、無用にシンプルにすべきではないと思っています。事業側のニーズ変化や多様性に対処するためには、人事部内の組織や役割もニーズ変化や多様性に合わせて都度再設計し直すとともに、新しい仕事や大幅に変わった仕事に人材を配置するなどの策を続ける必要が出てきます。

それらを行いやすくするためにも、日常的に人事組織においても「複雑さを取り込む(受け入れる)」ことが重要であると考えているため、個々人の職種を無用に固定化せずに、何でもやれるように個人の能力開発をすることで、組織の柔軟性を担保しておくことが必要なのかなと考えています。

回りまわって、一本目に書いた内容とほぼ同じことを繰り返してしまっているのですが、複雑さや、変化のスピードに合わせて即時判断・意思決定が出来る状態の人事部が日本一の人事部であると思っており、そのためには、人事部メンバー一人一人の能力と意欲を向上させることが必要条件だと私は考えています。

まだまだ、会社全体に対してもやり切れていないことは満載なのですが、人事部の組織強化と会社の組織強化が太く繋がっていくと信じて、求められた期待に応えていけるように頑張りたいと思います!

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