地図を捨てたら最高の夕陽に出会えた【北海道旅4日目】
カモメの声で目が覚める、釧路の朝。昨日は北海道の海の幸をたらふく食べて、寝袋に滑り込むようにして爆睡したっけ。
今日の目的地は根室。日本の最東端だ。
▼前回までのあらすじ
ぶりんぶりんの生牡蠣からスタート
まずは釧路和商市場へ。お目当ては釧路で採れた「仙鳳趾産牡蠣」。ここではぶりんぶりんの大きな牡蠣が1個300円~食べられる。せっかくなので、2種類の牡蠣を食べ比べてみる。
あ~もうたまらんね。ぶりんぶりん&てやんてやんの大きな牡蠣をつるんと流し込むと、お口いっぱいに濃厚ミルキーが広がって思わず目を閉じる。味覚以外の五感をシャットアウトして味わいたいくらい、うまい。
牡蠣って結構見た目グロテスクだけど、最初に食べようと思った人はどんな奇人だったんだろう。先陣切って食べてみてくれてありがとね。
釧路湿原で見つけた"旅の醍醐味"
お腹を満たして、向かうは釧路湿原。今日は天気が良くて気持ちがいい。心なしかカブも嬉しそうで、エンジン音がルンルンしてる気がする。
釧路湿原の細岡展望台に到着。人がいない道を通ってきたものだから少し不安になっていたけど、展望台付近にはちらほらと観光客がいて安心する。
展望台を後にして走っていると、道の途中でハッとする景色に出会った。カブのスピードを落とし、ウィンカーを出して、道の端に停める。
誰もいない池のほとり。水面が鏡みたいで、そこに青空と雲が映っていて、ゆるやかな風に乗って雲がゆっくりと流れている。
原付旅は「あっ」と思った時、すぐに止まれたり引き返せるのが良い。車だと路駐できなかったり、大きなバイクだとUターンが億劫だったりする。加えてガソリン代も抑えられるし原付の旅はメリットたくさんだ。難点といえば、北海道クラスの長距離になると運転がしんどいくらい。……くらい(白目)。
こういう偶然の出会いこそが、旅の醍醐味だと思う。これまでの旅でも記憶に残っているのは、予想外で想定外な寄り道での景色だった。
発展途上国の乞食みたいなキツネ
お昼はセコマで済ませて、旅路を急ぐ。今日のルートは釧路湿原→別海厚岸線→霧多布岬→北太平洋シーサイドライン→根室で走行距離は156km。
厚岸大橋を渡ったあたりで「クマ注意」の看板が増えて気が引き締まる。神に祈りながら目をかっぴらいて運転していると、道のど真ん中に犬みたいな動物が2匹いるのが見えた。キタキツネだ。
スピードを落としてゆっくり走る。1匹は道路の真ん中に、もう1匹は路肩に座ってこっちを見ていて、2匹とも距離が縮まっても道を譲ろうとしない。そのままゆっくり進んでいくと、あと5mくらいまで距離が縮まったところでひょいと避けた。
後ろを振り返ると2匹はすぐ元の位置に戻り、また座り込んだ。なんか既視感のある光景だなーと思ったけど、これ発展途上国の乞食と同じやり口やん。触れるか触れないかギリギリのところまで迫ってきて、ガン無視すると諦めて次の観光客を狙う。
後から地元の人に聞いた話だと、あのあたりのキタキツネは、道路に座り込んでいると車が止まって餌をくれることを覚えているらしい。賢い。
北太平洋シーサイドラインで絶叫
その後も何度かキタキツネに遭遇しながら進み、ようやく霧多布岬へ。霧の無い霧多布岬は水面に映る太陽がキラキラと眩しくて、なんだか神秘的な気分になった。
綺麗な景色を見たのになんかモヤモヤするな~と思ったら、また今日の宿を決め忘れていた。根室の「インディアンサマーカンパニー」というライダーハウスに電話をすると、17時までに来れば宿泊可とのこと。急がねば。
国道44号を通っていくのが最短ルートだったが、どうしても通りたい道があった。北海道のライダーさんにおすすめされた「北太平洋シーサイドライン」だ。
↑筆者撮影。左手に草原、右手には海が広がっていて爽快&走快。緩やかなアップダウンがあって運転も楽しい。広大で日本離れした景色にテンションが上がって、やっぱり叫んじゃう。
「ほっかいどー!!!」
「でっかいどー!!!!!」
何度も、なんども叫んだ。うまく言えないけど、とにかく最高なんだ。
北海道に来たんだ。30歳手前で無職だし、独身だし、将来のことは何も見えていないけど、北海道に来たんだ。私はいま、旅をしているんだ。
地図を捨てたら最高の夕陽に出会えた
17時ギリギリにインディアンサマーカンパニーに到着。チェックインを済ませて外に出ると、西の空がピンク色に染まり始めていた。長距離の運転&叫びすぎたせいでヘトヘトだったけど、呼ばれているような気がして再びカブに跨る。
根室の夕焼けスポットはどこなんだろう、とGoogleマップで調べても情弱なせいか良さげな場所が出てこない。いいや。スマホをポケットにしまう。とにかく空が赤い方に進んでいこう。
空の赤を追いかけたら、港のような場所に着いた。観光客らしき人は誰もいなくて、釣り人がぽつりぽつりといるだけ。
風がなくて、つるっとした水面がうらうらと揺れている。カモメの鳴き声が響いては海に消えていく。
夕陽が沈んでからだんだん赤が濃くなっていって、あたりの雲まで染めていく。
圧巻だった。こんなに綺麗な夕陽を見たのは初めてだ。Googleマップという便利な地図を捨てて、ひたすら空が綺麗な方に走ったらこの景色に出会えた。現代人の私はどこへ行くにもスマホで下調べをしてしまうが、余計なことは考えずに直感に従って進むことこそが旅なんじゃないか。
空が暗くなった頃、お腹が空いていることに気づいた。そうだ、ここは根室。ハセガワストアがあるじゃないか。
ハセガワストアの看板商品「やきとり弁当」を買って交差点の石段に腰掛ける。夕焼けの余韻に浸りながら、タレがかかったご飯を頬張る。初めてのやきとり弁当はビックリするくらいおいしくて、それはもう今朝の牡蠣を超えるくらいだった。
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