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1泊300円のライダーハウスに泊まる夜

北海道旅7日目、エアマットの空気がだんだん抜けていく夢を見た。起きたらかったい床の上で寝ていて、エアマットの空気はすっかり抜けていた。正夢だった。

▼前回までのあらすじ


青い池より綺麗な「神の子池」へ

今日の天気は快晴。クリオネキャンプ場を出発して、神の子池に向かう。北海道のライダーいわく、神の子池は道内で一番心が清らかになる場所なんだとか。その絶景を一目見るべく、小さなカブを走らせ青空の道東をゆく。

神の子池

おぉ~こりゃ綺麗だ。青く澄み渡った水に倒木が影を落としていて、水面にざわめく木々が反射している。こんな神秘的な場所、初めて来た。ジブリみたいだ。

水が澄んでる

水温が一年中低いままだから、倒木が腐らないらしい。美瑛の青い池も有名な観光スポットだけど、個人的にはこっちの方が感動した。人が少ないのも良い。

ここの近くの滝で、ライダーらしきおっちゃん3人組が三脚を置いてセルフタイマーで写真を撮っていた。しかしおっちゃん、足が遅くてどうしてもシャッターに間に合わない。見かねた私は、声をかけてシャッターを押した。

駐車場で再会したので話をすると、3人は岡山から来たらしい。なんだか懐かしい方言だなと思ったら、やっぱり岡山県民か。私は新卒で岡山に本社を置く会社に就職したため、研修で3か月間岡山に住んでいた。その後に配属された東京支社も岡山県民だらけだったので、岡山弁には馴染みがあったし、好きだった。

岡山トリオ

摩周湖の駐車場でまた会った。なんだか素敵な3人だったので、写真を撮らせてもらう。やっぱり岡山の人ってなんかいいや。おおらかで、ふにゃっとしてて、太陽みたいに笑う。そういえば東京研修に来た岡山出身の同期が、東京駅を見て「ここがハチ公っていうんじゃな~」って感動してたっけ。アイツ元気かな。

駐車場で別れを告げて、またそこに戻るとヘルメットに缶コーヒーが入っていた。粋なことするなぁ、おっちゃん。

おっちゃんがくれた缶コーヒー


この日の摩周湖は晴天で、裏摩周から見る景色もGOOD。言い伝えで、晴れの摩周湖を見ると婚期を逃すだとかなんとか……。

晴天の摩周湖

もらったコーヒーを飲んで、旅路に着く。次の目的地は美幌峠だ。北海道の乾いた風を体に受けながら進んでいく。季節はすっかり秋だ。

絶景の美幌峠で思わずねころぶ

美幌峠。頂上まであと少し
頂上着いた!絶景だ~
カブも気持ちよさそう

美幌峠のてっぺんから見る景色は立ち尽くしてしまうほどの絶景で、思わずそのまま芝生に寝転んでしまった。

ヴァンビかわいい

晴天の美幌峠は最高で、人生で3本の指に入るくらいの絶景だ。岡山のトリオたちも、この景色見れたかな。見れてたらいいな。

そんなこんなで余韻に浸りながら走っていたら、網走に向かう途中に一時停止違反で切符を切られる。まじで気付かなかった。標識にも警察署にも。

違反金5,000円也。危うく網走監獄入れられるとこだった。

闇夜を駆け抜け300円のライダーハウスへ

さて今日も宿を決めていない。まぁ網走のホームセンターかリサイクルショップでテント買って、そのまま近くのキャンプ場に泊まるっしょ。

………。

テント、売ってない。近くのキャンプ場、テント貸し出してない。うかうかしているうちに日は暮れて、どんどん暗くなっていく。まずい、このままじゃリアル野宿だ。9月の北海道は日に日に寒さが増している。

血眼で地図を探すと、65km先に「計呂地交通公園」というライダーハウスがある。旧計呂地駅を活用したこのライダーハウス、駅舎は500円、列車は300円で泊まれるらしい

意を決して紋別方面へと向かう。30分走った頃には辺りが真っ暗になって風も冷たくなってきた。北海道の道は街灯なんて全然なくて、道端に現れる反射板を頼りに進んでいくしかない。

動物が飛び出して来たらどうしよう。お化けが追いかけてきたらどうしよう。暗い、寒い、怖い、疲れた。自作の変な歌を大声で歌って気を紛らわす

PM6:40、計呂地交通公園に到着。

旧計呂地駅舎

すぐに管理人の方が来てくれて案内をしてくれた。駅舎は500円、列車は300円ということで、列車を選択。今日は私のほかに同年代の男性2人が列車に宿泊しているらしい。

列車はこんな感じ。奥は女性専用スペースとして使っているそうで、今日は私が独り占めだ。荷物を下ろしたところで列車泊の2人が買い物から帰ってきて、晩御飯を一緒に食べることに。

駅の連絡通路が飲食スペースになっていて、そこに3人で腰掛ける。彼らはバイクにとても詳しくて、専門用語が飛び交う会話はわかるようでまったくわからなかった。かろうじて副詞や接続詞はわかるので、外国人に聞こえる日本語ってこんな感じなんだろうなと思った

全然わからなかったけど、楽しそうにバイクの話をする彼らの話を聞いているのは心地よかった。2人とも、良い顔してる。

「星を見よう」ということになったので、3人で外に出る。空を見上げると、満天の星空が広がっていた。

カブと踏切と星空

バイクと星空をカッコ良く撮るために、彼らとああでもないこうでもない言いながら地面に這いつくばって写真を撮る。何度も画角を変えて、最高の1枚を追い求める。自意識を手放して夢中になっている時が一番幸せだ

そのあとは星を見上げながら歯を磨いて、列車でまた少し話してから電気を消した。

今日はエアマットの空気が抜けませんように。祈りながら眠りについた。



・・・next・・・


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