憧れの高山、名古屋めしの旅 旅立つまでの日々
いつもは、旅をする前や旅の最中に、記録をつけ始める。その時その時の気持ちを最大限に残したいのからだ。そして帰宅した後に、ゆっくりまとめ上げる。しかし今回は帰りの新幹線に乗り、静岡駅を通過しあと30分で新横浜駅に到着するというタイミングから書き始め、そして今、書き終えたのは新年明けて2日だ。約ひと月前となる旅へのきっかけから順番に思い返してみる。
ある夜。お店の営業をしていると、東京に来ていたと言う姫路のお友達がひょっこり私の店に訪ねてきた。事前に何も連絡をもらってなかった私の顔は、まさに「鳩が豆鉄砲喰らった顔」だったことだろう。重い芋焼酎の一升瓶を携えての来店。ちょっぴり乾杯。お互いの近況報告。すると12月末に名古屋へ行き、そこで名古屋や岐阜にいる仲間と飲もうと思うけど一緒にどう?と、お誘いを受けたのだ。
集う日は12月23日月曜日。私としては定休日なので全く問題はない。ただ、飲みに行くだけだと交通費と宿泊費がもったいなと正直感じていた。妻からは、どうせなら日曜日から旅に出たらどう?との言葉で、旅への欲望、一気に火が着いてしまった。
名古屋からすぐ近く、岐阜市には私が行ってみたいと思っているウイスキー専門店がある。そして岐阜と言ったら柳ヶ瀬の繁華街。岐阜に住む友達がよく柳ヶ瀬で飲んでいる投稿をしている。そうだ!柳ヶ瀬の居酒屋を案内してもらおう。そう考えると頭の中には、美川憲一が歌う「柳ヶ瀬ブルース」が流れ始めてしまった。もうこうなったら自分の気持ちを抑えられることは出来ない。岐阜を満喫し、名古屋を満喫する。そんな旅を思い描き始めた。
そんな先走った気持ちは、冷静さを失っていた。何も考えず、新幹線の予約をし、岐阜駅前と名古屋駅前のホテルを予約したのだ。値段と立地条件だけで。その手配を岐阜の友達に伝えると、柳ヶ瀬の多くの飲食店は日曜日が休みのところが多いと。そして行ってみたいウイスキー専門店も定休日であることに、この時点になって気付いたのだ。金華山ロープウェイや岐阜城、岐阜タンメンに鶏ちゃん、今の時期ではないが長良川の鵜飼などを考えると、岐阜市への旅はそう、今回ではないのだと自分に言い聞かせた。自分の店の定休日に合わせ手配すると、全てが企画倒れになる。
すると気持ちが迷子になってしまった。2日目午後には名古屋駅に着きたい。なら1日目はどこへ行くのが正解なのだろう。京都?伊勢?美濃太田?名古屋から行ける観光地を調べるうちに昔から憧れていた飛騨高山方面はどうかと思った。奥から白川郷、高山、郡上八幡や下呂温泉、平湯温泉と岐阜県には見どころが沢山ある。すると再び動き出した私のワクワクは、岐阜の友達に迷惑をかけないだろうかと心配になってきた。柳ヶ瀬で飲む約束をしていたからだ。それを断って山間部へ1人旅をすることが失礼にならないか。しかしそんな不安を吹き消すように、「どこへでも付き合いますよ」と岐阜の友。車でも電車でもと。ならば列車で行ける高山が良いなと行き先が決まった。嬉しい嬉しい2人旅が決まった。
旅の再設計を始める。冷静さを失っていた時の手配を全てキャンセル。取消料がまだかからない時期で良かった。新幹線と宿泊をセットで手配する方がかなり安く出来る。JTB、日本旅行、楽天トラベルなどなど比較検討していく。旅の手配を分割し、手配する理想形はこうなった。
①新横浜→名古屋、1日置いて名古屋宿泊、そして名古屋→新横浜(私)
②名古屋→高山、高山宿泊、翌日高山→名古屋(私)
③岐阜→高山、高山宿泊、翌日高山→名古屋(友達)
①のように1日空白の空く手配が出来る旅行会社はJTB、日本旅行しか見つからず、また③のように発駅と着駅が誓う手配、喫煙室禁煙室と分けられたり、駅からや見どころに近いホテルを取り扱っているのはJTBが理想だった。
名古屋から乗車する特急ひだ号。川沿いを高山に向けて走るエンジンとバッテリーのハイブリッド車両だ。さて車窓からの景色が良いのは右側?左側?とネット検索。すると飛水峡と言う渓谷が現れるのは右側らしい。ならば座席を右側にしようと考える。するとここに落とし穴があると言う。一般的に進行方向下り方面の先頭車両が1号車2号車、座席番号は左からAB、通路を挟んてCDとなる。しかしこの特急ひだ号は岐阜駅までは東海道本線を使い1号車が先頭で進むが、岐阜駅にてスイッチバック(進行方向が逆転)して10号車が先頭を走る形で高山線を走る。なので名古屋出発時には左側の席も岐阜からは右側となる。そしてこの岐阜駅までの20分間は進行方向とは逆向きに予め座席の向きが変えてある。左に岐阜城、右に犬山城、飛水峡と見えてくるが、蛇行する飛騨川と高山線は何度も交差するので素敵な景観は左右どちらからでも見られる。飛水峡を見たいのなら座席番号ABだ。
参考になったサイトをここに紹介したい。
そしてもう一つ冷静さを失っていたことがあった。名古屋を舐めていた。巨大な碁盤の目の街並みの名古屋。みんなが集う居酒屋を栄と言う地区に手配してくれた小牧市の友達。それなのに名古屋駅前の方が集まりやすいのでは?と勝手に思ってしまったのだ。しかし色々聞いてみたり調べてみると、名古屋においての繁華街は栄地区。駅からは地下鉄で2つほど離れた場所。銀座のような渋谷のような新宿のような。そんな名古屋の構図を知らなかった私とは言え、彼を振り回して失礼してしまったと深く反省した。
YouTubeや観光サイト、高山の見どころをスマホでリサーチする。食べたいもの見たい所をGoogleマップに登録する。そして観光地での居酒屋選びも大切だ。良い店ほど早く埋まってしまうだろう。観光客向けの居酒屋が多い。インバウンド向けの英語のメニューを前面的に表示している店は避けてみた。ここいいな?と思った店は日曜日が定休日だったりもした。口コミや立地場所など考慮し、ある1軒のお店に予約の電話を入れてみた。すると予約はOKだが、喫煙室など喫煙場所がないのと、店の前のアーケードも禁煙なので、喫煙する方にはご迷惑をおかけしてしまいますよと丁寧な説明。翌日同行してくれる友達に確認を取ると全く問題ないと。再度連絡をしてみると、問い合わせの時の私の名前を控えてくれていて、「◯◯さま。お待ちしています」と丁寧な対応に心躍った。全ての手配を終え、旅の日が近づくのを指折り数えた。
旅の途中に思い出した。私の住む横浜市鶴見区。鶴見駅西口には飛騨牛を提供する「山三」と言うお店がある。
もう何年も前からお店の存在は知っているものの、なかなか訪れる機会がなかった。それはお値段や営業日によるものだったが、ランチならはと訪ねてみたのは昨年の夏のことだった。高山出身の店主との会話、美味しいお料理、この時すでに高山へ導かれていたのかと思うと、旅の途中、1人車窓を眺めながらニヤッとしたのを思い出す。
そして旅する前に、仕入の途中で買ったカップ麺。旅から戻った後に食べてみる。フムフム、節系の香り、鶏油、甘めのスープをちゃんと表現していた。旅を振り返り、実店舗とカップ麺の食べ比べもこれまた楽しい。
以上長々と失礼しました。また高山へ旅をする方への参考になれば幸いです。ありがとうございました。