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厨に立つ私

スーパーに行く時には、何を作ろうかな、ではなく、何が安いかな、と品物と値札を睨み、カゴを提げて歩く。
何を買っても、後でどうにかなると自分を信頼している(稀にどうにもならない時もある)。

ふむ、今日は茄子が安い。
茄子が安いということは、夏。
ふくふくと太った、色気のない茄子が3つ入った袋をカゴに入れ込んだ。
精肉コーナーを歩くと豚こま肉がいつもより安くて、あと鶏むね肉はいつでも安くて、とりあえずそのふたつをカゴに入れる。
他にも、"仕事から帰ってきてどうしようもないくらい疲れているけどお腹は空いている時"のために冷凍パスタなんかもカゴに入れたりもした。
余裕のある時に、余裕のない日の自分の逃げ道を作ってあげることは、意外と重要なのです。

さて、家に帰ったら厨に立つのです。
座ったら最後、ここは勢いが大事。

まずは鶏むね肉。お前をどうしてくれようか。最近茹でてばかりだから、たまには下味でもつけて焼いてやろうか。
そうと決めたら、まずはフォークを肉に刺しこむのです。
焼き縮みしやすくなるとか、そういう意味があるらしいのだけど、もう私は「フォークで肉を刺す」こと自体が目的になっている。気の済むまで刺す。死んだ鶏をオーバーキル。
ついぞ気が済めば、ひと口大に切って醤油とみりんと酒とにんにくと袋に漬け込む。

肉に味を染み込ませるという愛

さて次は、茄子。
茄子はもう、カゴに入れた時から決めていた。私が愛してやまない、揚げ浸しにする。
茄子は、油を吸うために育つもの。油を吸って縮こまり、色が変わっていく様は、もはや肉。

人様に出すものではないので、盛りつけも何もない

食欲をそそる油の香りと、BGMで流していたアンジュルムにあわせて小踊りをしながら次の一品へ。
(先日の横アリ公演、最高でした…佐々木莉佳子さんは宇宙一のトップアイドルです……)

揚げ浸しのあとの、茄子の旨味が染みた油で豚こま肉を炒める。これはもう本当に炒めるだけ。
粗熱を取ったら、ぽん酢と梅肉で和えて完成です。気分は夏ですから、豚も夏仕様にさっぱりですよ。
買い物中にこのメニューを思いついてたら、しそ買ってたな。後悔。(写真は撮り忘れた)

作り終えた達成感からか、少しずつつまみ食いをしたせいか、お腹は空いていない。だから、今日作ったものには手をつけず、明日からの自分へのプレゼントに丸々取っておく。

買う私、作る私、食べる私、そして稼ぐために働く私。
どれも同じ私で、地続きの私だけど、どこか違う私。
中でも、モスグリーンのエプロンを掛けて木の菜箸を持つ「作る私」を、私は結構好きだ。

自分で作らなくてもご飯は食べられるから、余裕がない時はまず先に「作る私」が死んでしまうけど、でもやっぱり、いつまでも「作る私」を愛して、大切にしてあげたいな。

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