タワー・オブ・テラーを克服した話|エッセイ
タワー・オブ・テラーを知っているだろうか。上から下に落ちるタイプの浮遊感のあるアトラクションだ。私は大学生の時、このアトラクションに軽い乗って、トラウマになった。ふわっとする感じが苦手なのだ。過去の記憶が鮮明に、過剰にこびりつき、私はタワー・オブ・テラー(というか絶叫系全般)を避けるようになっていた。子供の頃はむしろ絶叫系が大好きで楽しくて仕方なかったのに、いつの間にか不安に埋め尽くされて、恐れや挑戦を避けるようになっていた。
そんな私だが、なぜかタワー・オブ・テラーに挑戦していた。新アトラクションがオープンしたらしく、そっちに人が集まり、ものすごく空いていた。人気アトラクションの待ち時間がないと、お得な気がして乗ってみたくなった。テーマパーク特有のハイテンションと、待ち時間の短さゆえの逃げる時間がなかったのもある。
とはいえ、怖い。昔見たアニメの「Another」のエレベーター死亡シーンが頭の隅にうっすらと蘇っていた。私は怖さを紛らわすために、人生で嫌だったことを古い順から思い出して耐えていた。友達に笑われた体験、面と向かって初めて人に嫌われた時、大学受験を失敗したこと、社会人になって社畜で家に帰れなかったこと、メンタルを病んで一時期は毎日自殺を考えたこと…テーマパークで思い返すことでもないが、歳老いるごとにエピソードも重くなっていく。つまり、これらの辛い経験を総合すれば、エレベーターから落下するくらいなんてことはない、とデータキャラのように自分に言い聞かせた。ここまでして乗ろうとしていたのは謎だけど、自分より小さな子供も乗ってるんだから大丈夫と言い聞かせてた。そしたら、一緒に乗車した客は全員大人だった。ナッシング子供…!!気づけば、シートベルトをしっかり固定して、逃げられない段階まで来ていた。
タワー・オブ・テラーは、呪いの木像を手にしたホテルマンが原因で、ホテルマンの追体験として、8階のエレベーターから落ちるという設定だ。私は下民なのでタワマンに住んだこともないし、8階にはそこまで縁がない。末広がりの数字なのになぜこんなことに…と思っていると、落ちる寸前にホテルマンが「ここにいてはいけない!私と同じ目に会う前に逃げろ…!」的なことを言ってくる。ここがめちゃくちゃ怖い。だって、キャストさんが発車前に「シートベルトは固定しました!」と言ってたから今更シートベルトは外せないし、外したらむしろやばいことになるから、そんなこと言われたって逃げ場がない。なのに、逃げろと鬼気迫って言われる。矛盾するな。無茶を言うな。
この時点で他のお客さんも怖かったみたいで、「やっぱ無理かも、怖い、帰りたい」と泣きそうな女の子がいて、私の不安をさらに煽る。私も無理かもしれない。過呼吸になったらどうしよう。上から下に吐瀉物がスプラッシュマウンテンするかもしれない。緊張はピークだった。そして、一瞬見える視界後、落下。
………あれ?全然怖くないぞ?なんか微妙にふわっとするけど、そこまで落ちない。私は今までこんなものに怯えていたのか?!気づけば私は叫んでいた。
「思ったより、全然怖くない!楽しい!!!」
気分爽快で、両手をあげていた。私はタワー・オブ・テラーを克服した。写真もにっこにこだった。
それからはスターを取った無敵状態で、今まで恐れてたいろんなことが乗り越えられる気がした。過去の怖かった記憶は今の自分にはそうでもないかもしれない。恐れ過ぎず、楽しもう。なんかこれからの人生もいける気がしてきた。人生、詰んでないよ。
とはいえ、無理に克服しなくてもいい。各々、タイミングがある。なんとかなるタイミングで、楽しめればそれでいい。エンジョイ、ユアライフ!
※蛇足)ちなみに、ディズニーシーではシンドバッドが一番好き。名曲で毎回元気をもらい、感動する。「コンパスさ、地図はないけれど〜♪」 全然怖くないから、ぜひ乗ってね。あと、新アトラクションのピーターパンもめちゃくちゃよい。感動した。大人こそ乗ろう。いつまでも子供のように楽しむ心ででいよう!I can fly!!ありがとう、ディズニー!