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これからのデザイナーの役割とは? コンセントOrganization Design Groupの始動

デザイナーの役割は、ここ20年ほどで大きく広がっていきました。

そして、2024年7月。次なる変化を象徴するものとして、デザイン会社コンセントの中に、「Organization Design Group組織デザイングループ)」が誕生しました。

今回の記事では、Organization Design Group設立の背景を紹介しつつ、コンセントの事業の変遷を通して、最終的にそこから見えてくる「これからのデザイナーの役割」についても言及したいと思います。デザインの理想という視点に加え、デザインビジネスの現実的な側面にも光を当てながらお話できたらと思います。

ビジネス環境がデザイナーの役割にどのような影響を与えるのか。そのケーススタディとして読んでいただいても、参考になるかもしれません。



Organization Design Groupとは?

Organization Design Groupは、デザインで組織能力を高めるグループです。デザインによる人材開発・組織開発を行い、企業や行政の価値向上を支援する組織です。

クライアントが抱える問題に応じて人材育成やデザイン機能強化を行い、組織の持続的な成長に貢献することを目的としています。

デザインの技術や態度を社会に取り入れることで、産業競争力の向上や豊かな社会生活の実現を目指しています。

メンバーは、デザインストラテジスト、サービスデザイナー、UX/UI デザイナー、コミュニケーションデザイナーなどの実務担当が8名。専属のカスタマーサクセス担当と、PR・マーケティング担当をあわせて合計10名で活動しています。私は取締役と兼務する形で、Organization Design Groupのグループマネージャーを担当しています。

プロジェクトの流れは、クライアント組織とのディスカッションからスタート。問題の分析から課題を整理し、理想の組織とそれに対応する人材像を定義した上でロードマップを引きます。各種アクションをクライアントと協働しながら、組織の成長や変革を目指していきます。業務プロセスの整理、各種ガイドラインの整備、研修プログラムの設計や実施、評価制度の設計、採用支援、社内外への広報支援など、活動は多岐にわたります。

DXを叶えるため、イノベーション創出を体質化するため、事業ポートフォリオの柔軟性を高めるため。このような目的に対して、クライアントの経営戦略に応じた、デザインの思考や態度の導入を提案し、組織の創造性を高めていく活動をしています。近年増えている、企業内のデザイン組織に向けた支援も活発に行っています。

Organization Design Groupは10名ですが、実際のプロジェクトは約250名のコンセントメンバー全員から動員し、それぞれの専門性に合わせた体制を組み、支援をしています。

デザイン会社の事業の変化

デザインの仕事に詳しい方ならば、Organization Design Groupは、特段新しい性質の組織だと思わないはずです。そうです。新しくはありません。

コンセントでは、人材や組織に対する支援はおよそ10年ほど前から行っています。企業だけでなく、官公庁や自治体に向けても積極的に支援を重ねていました。(ここでは細かく見ていただく必要はありませんが、参考までに行政事例のリンクを設定します)


このような、10年ほどの実績を踏まえた上で、この領域の技術蓄積や知識創造を加速する目的で、このタイミングで組織を新設しました。

コンセントは、デザイン会社としては幅広い事業運営をしています。事業ごとの収益性を見ながら全体のポートフォリオ管理をしていますが、組織開発や人材開発に関する売上は年々上がってきています。市場の期待値がだんだんと高まっていく肌感もあります。これは、おそらく、コンセントだけでなくデザインエージェンシー全般に訪れている流れと言えるでしょう。

デザインを組織や企業経営に活かす動きは、ここ10年ほどをかけて、その対象はアーリーアダプターのラインを脱し始めている状況と見ています。組織の新設は、コンセントのマーケティングとして、本格的な普及期に備えるような意味合いもあります。

昨今の、企業のデザイン内製化の流れの中で、デザインエージェンシーの存在価値も移り変わっています。より高度な技術を持つ集団であり続けることはもちろんのこと外部視点からデザインに関する問題解決にあたることや内部デザイナーを鍛えるような動きも求められるようになりました

加えて、私たちのようなデザイン人材の集団が、クライアント企業の文化形成に関わるような期待も生まれています。イノベーション創出や事業ポートフォリオの見直しを迫られるクライアント企業が、創造的な企業変革に対してデザイン会社を起用するような動きも生まれています。

コンセントメンバーの歩み

コンセントは、もともと紙媒体のエディトリアルデザイン専業の会社でした。雑誌や企業広報誌など、情報が魅力的に正しく伝わるようにデザインする仕事です。

紙に加えてウェブメディアにも拡張した後、2000年代中頃にはUXデザインにも対象が広がりました。単一タッチポイントから体験のデザインに拡大。現場感覚として、無形のものをどうデザインするのか、戸惑いがあったのを覚えています。これは、「つくる」ことなのか。痛烈な問いが胸をかすめました。

さらに2012年。サービスデザインという「事業そのもの」のデザインに発展。急速にビジネス知見の必要性が高まり、組織を上げて学習を進めました。私は当時はサービスデザイン組織を立ち上げたマネージャーでもありましたが、この業容転換は本当に大変なものだったと記憶しています。

サービスデザインは、事業を持続的に運用するための業務や組織にも対応するもの。必然的に組織そのものをデザインするプロジェクトも増えていくことになりました。産業課題としてDX人材や創造性人材の必要性が増す中で実績を重ね、順調に提案価値を磨き上げていきました。

ここ20年のデザイナーの役割を俯瞰すると、個別のタッチポイントから体験全体へ体験全体から事業へ事業から組織経営へ。そんな流れをたどっていきました。

組織と共生する人へ

そして、Organization Design Group が直面している変化は「組織経営から人へ」というものです。「組織と共生する人へ」と言い換えてもよいでしょう。

「人」というのは、いわゆる「従業員」の響きのような平面的なものではありません。価値観や働き方が多様な個人。遠方勤務や複業のような柔軟性をもった個人。組織に依存しすぎないキャリア自律性を持った個人。組織アジェンダと個人のアジェンダのギャップを好意的に捉えて自発的に動く個人。そういった立体的な像を持つ個人です。

いわゆる「人的資本経営」的な産業の論点でもありますが、コンセントではそこに、個の創造性や表現の可能性を加えていきたい。

コンセントでは、クライアント担当者とデザインプロジェクトを協働するなかで、担当者の創造性がひらかれていく場面を何度も見てきました。

リサーチの過程でユーザーの生の声にふれることで、ユーザーと「人間と人間の関係」に置かれるようになる。ユーザーが単なる買い手でない体温のある人間として結像する。ユーザーに耳を傾ける、心に触れる、語りかける。クライアント担当者の当事者性が強烈に高まる。

自分の手でプロトタイプをつくる中で、そこに自己が宿っていく。「労働ではない自己表現としての仕事に目覚めていく。つくりながら考えることで、自分の身体の可能性に気づいていく。仕事の成果物の進化と自己の進化がシンクロしていく。

かたちにして示すことで、臆せずに自分の提言を組織にぶつけられるようになる。自らの感性や価値観にわずかながらでも自信が芽生える。かたちを構想する苦難を経験することで、他者の主張を尊重しながらも、友好的でクリティカルな議論を展開できるようになる

構想し、つくる経験から、対象を観察するようになる。人や生活や体験に一歩踏み出し、近づき、相対化し、自分のなりの洞察が駆動し始める。発見する。それを伝え表現する欲求が生まれる。

挙げればきりがありません。

デザインプロセスは創造的な成果を生み出すためだけでなく、その過程を経ることで、参加するメンバーの能力や態度を形成するための発達の過程でもあります。

コンセントではビジネスパーソンだけでなく、中高生・小学生に対してもデザインプログラムを実施してきました。このようなデザインプロセスの価値は普遍性があるものだと確信しています。


おそらく多くのデザイナーはこのような「プロセスの価値」に心当たりがあるはずです。経験したこともあるはずです。その価値を社会に向けて提案していきたい、私たちはそう考えています。

多様で自由な生き方が増え、同時にその責任を負う自律的な個人のあり方も当たり前になる。そんな世の中において、この価値はますます重要になってくるものだと感じています。

これからのデザイナーの役割

タッチポイントから体験へ、体験から事業へ、事業から組織経営へ。そして、組織経営から人へ。ここ20年の変化の中で、デザイン対象は手触り感のないものに拡大していきましたが、ここに来てまた手触り感のあるに戻ってきたようにも思います

私は、デザイナーでも教育者でもあったブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)に思いを馳せます。昔からデザインする者は教えていた。そんな事実です。

彼は、デザイナーとしてだけでなく、芸術家でも作家でも研究者でもありました。それらの活動は内面においては地続きだったのだと思います。教えることは単なる啓蒙ではなく、教え、導き、遊ぶことで、その結果として、自分の目や手がひらき、つくることができる。教えること、つくること。その循環や重層の中で社会を構想することができる。

AIの普及から、予定調和なものづくりの作業は職業的には成り立たないものになるでしょう。決まったものを期待通りに仕上げる。そんな反復作業からデザイナーを解放し、「構想する主体としてのデザイナーに立ち戻ることができるチャンスになるものだと思います。

創造力とは、社会を構想する力。人とデザインを共有することで、社会や産業の全体の創造力を上げる。それが、これからのデザイナーの役割だと感じています。その実効性を信じて、Organization Design Groupの始動です。

コンセント Organization Design Group メンバーの画像。10人のポートレート。
コンセント Organization Design Group メンバー

 

[参考]コンセント Organization Design Groupが提供する「デザインで伸ばす 人と組織の成長支援 CONCENT DESIGN DOJO


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