デザイナーは、利益を生み出すプロフィットセンターなのか。もしくは、収益に貢献しないコストセンターなのか。 デザイナー個人にとっても、デザイン組織にとっても、重要な問いです。 プロフィットセンターとコストセンターデザイナーが売上や利益に対する責任を持ち、定量的な数字目標を掲げている。自身の評価にも数字が絡んでくる。これは、プロフィットセンターとしてデザイナーが活動しているケースです。 事業会社のデザイナーであれば、営業など他部署と同じ目線とリスク感覚で成長を目指しているよ
デザインプログラムマネージャーが足りない。 これは、デザインの現場の切実な思いです。デザインプログラムマネージャー(以下、DPM)がいれば、仕事が上手くまわるはずなのに良い人がいない。大変な現場がなかなか改善されず、げっそり疲弊してしまう。 もっと言うと、産業のデザイン活用が進むなか、DPMがいないことによる機会損失も広がっている。せっかくデザイナーを何人も採用しても、組織運営に問題が生じてしまう。DXが進まない。いくつもの企業で起こっている課題です。 デザイナーの間で
「デザインも広告も水物商売だからね。」 10年以上前でしょうか。クライアントとの打ち合わせの帰り道、一緒に動いていたクリエイティブディレクターが発した言葉です。「デザイン」は私の仕事、「広告」はそのクリエイティブディレクターの仕事を象徴してのコメントです。シニカルな自虐とも取れるし、覚悟の現れとも取れる複雑な言葉でした。 水物商売というのは、市場の潮流や景気に依存するような商売。見通しが立ちづらく収入が不安定な仕事のこと。 水物商売。実際に当時の私はまったく同じ考えを持
なかなか抜けない癖がある。 「これで良いでしょうか?」「どれが良いでしょうか?」と、デザイナーがお伺いの姿勢になってしまう。ついついそんな癖が出てしまう。 お伺いは「あれっ?」と不審を走らせ、周りに違和感を発することがある。お伺い自体が悪いわけではありませんが、お伺いが続いてしまうとデザイナーのプレゼンスが下がっていく。もったいないことです。 判断の丸投げはしないたとえば、デザインアウトプットを提示するとき。依頼者側が意思決定するにしても、「これで良いでしょうか?」と全
デザイナーの役割は、ここ20年ほどで大きく広がっていきました。 そして、2024年7月。次なる変化を象徴するものとして、デザイン会社コンセントの中に、「Organization Design Group(組織デザイングループ)」が誕生しました。 今回の記事では、Organization Design Group設立の背景を紹介しつつ、コンセントの事業の変遷を通して、最終的にそこから見えてくる「これからのデザイナーの役割」についても言及したいと思います。デザインの理想という
「企業で働くクリエイター向けウェブマガジン『CreatorZine』」にて、私の連載がスタートしました。 連載タイトルは「デザイナー五年目からの教科書」。 一定のスキルを身に着けたデザイナーが、デザイン外部との境界で貢献できる能力を身につけ、さらに上のレベルで活躍できるようになる。そんなコンセプトの連載記事です。 連載のきっかけは、編集者が私のnoteを読んでくれたことでした。 noteを書き始めた1年半前は、このような企画の記事を自分が書くとは、まったく想像がつきま
デザインは自己表現ではない、という指摘があります。 デザイナーは依頼された仕事を自分の作品のように扱う、という批難もあります。 私は一部に賛同しつつも、自己表現や作品という言葉が抽象的であるがゆえに誤解を生みやすく、危険をはらんだものだとも考えています。 ( ※ 本記事で表記する「デザイナー」はビジュアルデザインなどの造形分野のデザイナーだけでなく、UXデザインやサービスデザインなど広い分野のデザイナーも含めたものとしています。) デザインは自己表現ではないと過剰に意
デザイナーは実力の生き物。だから、一つひとつのプロジェクトで経験を重ね、なんとかなんとか実力を積み上げないと生きていけない。 今回のテーマは、キャリア形成を効果的に進めるためには、プロジェクトにどうアサインされたら良いか。 実のところ、自分のキャリアのためには、アサインされるのではなく、アサインする側になるのが一番。やっぱりそうです。成長機会を自分で作りコントロールできるから。 それはそうですが、今回はそうなる前の「アサインされる」ことを念頭に進めていきます。アサインに
成り行きまかせのアサインに落ち、時に成果を傷つけていないか。プロジェクト要件を想いやり、メンバーの胸に突き刺さるアサインができているか。 どのプロジェクトにどのメンバーを割り当てるか。今回のテーマは、デザインプロジェクトのアサイン。組織から見た優れたアサインのしくみはどんなものか。個人のキャリア形成に優位なアサインはどんなものか。組織と個人の両面で、記事を2回に分けて考えていきます。 今回は組織の視点からです。アサインの理想に触れることで、デザイン組織の成長とは何なのか、
ヒアリングに行くのではない。最初から価値を与えること。これは、プロジェクトの初期対応でデザイナーが取るべき基本的な態度です。 今回のテーマは、デザインの初期対応。その効果的な動き方を紹介します。 デザインプロジェクトのスタートは、他者から依頼を受ける場合と、デザイナー側から提案を始める場合の2つのパターンがありますが、今回はそのうちの「デザイナーが依頼を受けるパターン」について。 初期対応の時点で、デザインの成果の半分は決まってしまいます。それくらい重要なものですが、な
5月。新入社員はいろいろと思いを巡らせる季節です。それに合わせてか、自分の新卒1年目のことを記事にする方もいらっしゃいます。 私も見習って当時のことを書いてみようと思います。昔は良かったとか悪かったとか。そんな目を向けるのではなく、少しでも今の気づきになるように。 最初に言いますと、私が新卒1年目で行ったことの6割は、電話の取次ぎ、画像のスキャンや切り抜き、色調補正などの雑用。4割は雑誌の定型レイアウトです。地味な仕事に見えますが、それでも重要な1年を過ごしたと感じていま
会話のテンポが速くなっている。 デザインの現場を20年。自分自身や周りを見わたして、ふと思ったことです。 昔はもっとゆっくりしていました。単純に話すスピードもありますが、会話に「間」が少なくなったことも大きい。そう思います。 例えば15年前。私はアートディレクターでした。その時の会話は10秒くらい黙ったり、ゆっくり考えながら言葉を探し、時には言葉を撤回し、言い直し、なんとかなんとか喋っていました。 会話能力が低かったということではありません。言葉にならないものをじっく
デザイン会社コンセントでは、デザイン業務に対して「生産性」の指標を取り入れています。 「生産性」は、デザインプロジェクトごとの利益率を表す指標。売上に対するコストの比率を数値化したもので、プロジェクトメンバーはその「生産性」を意識しながらデザインワークを進めています。 コンセントは、2019年から「生産性」を全社に取り入れ、業績を改善することができました。以後、安定的な成長を続けています。 今回は、コンセントの「生産性」活動について。加えて、デザイナーが自律的に損益分岐
知るべきことが多くて多くて、学べ学べとあせっていても、混乱極まり手につかない。 こんな状況、デザイナーなら誰しも身に覚えがあるのではないかと思います。もしくは若い読者ならこれから訪れる試練なのかもしれません。 技術が、社会が、デザインが。変化しつづけるその先端で、デザイナーは学びを重ね、成果を出し続けなければいけない。変化するのは自分自身も。年齢もポジションも状況も。今後のキャリアを考える中で、目の前のことをやっているだけでは手詰まりになってしまう。 学ぶことが多すぎて
「営業」という言葉が好きなデザイナーは少ない。 ひとつは単純な誤解です。「営業さん」はビジネススーツを身にまとい、お客様に頭を下げて何かを売る人。デザイナーは何かをつくり出す一方、「営業さん」は何もつくらない。そんな、古典的かつステレオタイプな「営業さん」像にまどわされて、本質が身に入ってこない。興味がわかない。自分とは関係ないものだと思ってしまう。 デザイナーからは「私は人見知りなので、営業みたいなことはできない」とキッパリと言われたこともあります。「数字が苦手だからデ
「デザイナー35歳定年説」というものがありました。 35歳になったらデザインをやめて別の仕事をするという話です。若い自分は恐ろしげに感じましたし、逆に「一生、手を動かしてものづくりをするんだ」と奮起したものでした。 似た話は今でも続いているらしく、業界の都市伝説としてひたひたと続いているようです。30代になったらライフステージや体力面から難しくなったり、感覚が市場と合わなくなる人が出てくるのは漠然とイメージできる。30代になったら、ディレクターやプロデューサーと言った川上