
#45 年単位でみる農産物の価格推移 ~野菜の価格は上がっているのか?~
前回は果物についてみてきました。
今回は野菜について考えます。(データは同じく青果物卸売市場調査より)
1985年以降の野菜価格の推移
キャベツ・レタス


なんと、ここ30年にわたってほとんど単価が変わっていません。
むしろレタスは下がっています。
◯キャベツ:73円(1985年)→74円(2021年)
◯レタス:211円(1985年)→162円(2021年)
トマト・なす


トマト、ナスともに2010年を境に少し単価が上がっています。
◯トマト:231円(1985年)→323円(2021年)
◯なす:263円(1985年)→348円(2021年)
しかしながら、ここ7年ほどは単価は横ばい傾向です。
サツマイモ・ジャガイモ


さつまいもは2013年ごろ、じゃがいもは2007年ごろまであまり単価は変わりませんでしたが、
それ以降は上下はあるものの単価が上がっています。
特にここ3年は急激に単価が上がっています。
まとめると、、、
・品目によって傾向が異なり、キャベツのように30年間単価がほぼ横ばいのものもある。
・果物ほど単価が上がっている訳ではない。
といった傾向がありました。
なぜそのような傾向に?
先の報道と今回のデータを見るに、特に野菜では価格の据置傾向が問題になっているのではと思われます。
なぜ単価が上がらないのか。多様な要因があるかと思いますが、以下の点があるのではないでしょうか。
①果物と異なり、野菜などの日用的に使う商品は単価を上げづらい構造がある
卵が値上がりした際も大きく報道されましたが、日常的に使用される野菜の価格上昇はホットなニュースになりがちです。
小売店側からしても、普段使い商品は値上げするとお客さん離れの加速につながるのかもしれません。
②作り手と売り手が別組織
JAや市場が野菜製造を自社でしているわけではなく、各生産者の野菜をまとめて販売する機能を担っています。
売り手が作り手の製造コストの上昇をどこまでキャッチできているのか、そこをうまく反映できているのか、事実がわからないので何とも言えませんが、そこに改善の余地があるかもしれません。
③単価上昇ではなく、支援金で対応している
商品の価格上昇ではなく一時支援金などで製造コストの上昇分を補填する政策になっている点もあると思います。
個人的にはそういう方向性よりも、ハードルが高いのでしょうが、最終商品の単価を上げるような働きかけの方が市場経済として健全な印象を持ちます。
まとめ ~資材高騰下での農産物の価格とどう向き合うか~
ではどう向き合うのか。できそうな3つの方針になります。
①(作り手・売り手視点)原価を説明する。
適切価格での取引には、原価を示した交渉がまず有効だと思われます。
生産者がJAや市場に、市場が仲卸になど、各相手に対して数字を持って示すことです。
そのため、まずは普段からの数字管理ができていることが前提です。
②(作り手・売り手視点)自分で価格決定権を持つ
自分で価格決定権を持つお客様を相手に取引をする、つまり自社販売(自社直売所やネット通販)をすることで、価格設定を自分でできます。
食べチョクの生産者アンケートでは31.5%の生産者が値上げを実施し、今後も74%が値上げを検討中という結果が出ています。
③(買い手視点)価格上昇を認識しつつ、自分が納得できるお店を見つける
人件費や物価が上がっている現在において、価格が据え置きのことはまずありえません。
どこかで帳尻合わせ(支援金、サイズダウン、クオリティダウンなど)が行われているのが大半だと思います。
農産物も例外ではないです。
まずはその事実を認識しつつ、自分で納得できるお店を見つける他ないと思います。
私のオススメは、(近所に直売所がないので)日常はスーパーで購入しつつ、たまに産直ECサイトや生産者の直売所、マルシェで買っています。
産直ECや直売、マルシェの方が高い場合も多々ありますが、その際に生じる生産者とのコミュニケーション(産直ECの場合は内容物や包装でのコミュニケーション)に価値があると感じています。
長くなりました以上です!
今回もデータを貼っておきます!