映画「逃げ切れた夢」病気なのか、家族に褒められたいのか
病気なり、教頭を辞める決意をした末永周平。先生からも生徒からも頼りにされているが、物事を忘れる病気なり、人生の転換点を迎える。生徒や友達、知り合いに合いながら、家族には学校を辞める決意を話す。実は家族には今までの人生、家族に尽くしたことを褒めて欲しいとのことだった。これは定年退職のニュースなどで見たことがある。辞めた後に褒めて欲しい。これは子供の頃からの欲求でもある。親から配偶者、子供に変わるわけだが。お金だけを家に入れる生活をして、劇中でも毎日同じような生活を送っている描写があったように思う。やっぱり人ってありがとうと言われたいのだと思う。感謝されないとやる気が出ないし、若い頃は野心などもあり、まだまだやるぞーと言えるが、定年間近で退職となると、やれることも限られるだろうし、子供大きくなり、思うこともある。周平の妻は浮気しており、周平もそれをしっている。人生の中で家族とは、学校ほど上手く行っていないからこそ、褒めて欲しいという欲求が発生したのだと思う。生徒や長年の幼馴染には本気で話せたのに、妻と娘には本気で話せない。見ていてヤキモキしたが、本音の告白シーンでの発狂に近い豹変ぶりが物語に深みを与えている。
気になったのは、周平の病気のこと。静かな映画であり、淡々と物事が進むのだが、忘れていくという描写が少なかった。明確にあったのは、卒業生の平賀が働く定食屋で料金を払わなかったことぐらいだ。妻の浮気や娘に頼んだ香水、生徒の指導、同僚のプライベートなど記憶が曖昧になっている印象がない。何がやりたいことがあって、それを実現するための嘘かと思ったら、別にやりたいことは劇中では明らかにされない。何か病気かとイメージしていたが、そんなことはなく、平賀と街歩きをして、別れた部分で物語が終わるために割とびっくりした。病気が発覚した後に昔の夢を追うのかと思ったがそうではなく、平賀に言いたいことを言った感じになり、元生徒を救う的なエンディングになる。病気は本当であり、医者に四ヶ月ですみたいやシーンがあるからだ。とはいえ具体的な説明はなく、周平に悲壮感がないから困惑する。周平のやりたいことは分からないが、家族に認めてほしいことは理解できた。良かったシーンは、松重豊さん演じる幼馴染との食事と帰路だ。周平は本音で言いたいことを言うのだが、幼馴染が見事に受け止めていた。病気のことは言わないが、家族に言えないことをいえる関係に見えた。
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