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映画「僕が愛したすべての君へ」愛する人×大切な約束×人生の選択

君愛を観たときには期待していなかったが、想像以上に良かった。老人になった暦と栞が出会う、ほんの5分程度の時間にすべてが凝縮されていて、あれこそが暦が望んだ未来なのだ。君愛で人生を懸けた暦の集大成。原作でも印象的で、「名乗るほどのものではございません」の台詞は君愛を観たご褒美だと言える。60年後に出会う二人は、約束の横断歩道で会話する。大切な出会いであり、何気ない会話の中に二人の幸せが詰まっている。こーゆー、ちょっとした会話で、物語の根幹を説明するのは大好きだ。老人の暦は、和音と幸せに暮らしているが、スケジュールに8月17日のある横断歩道に10時の約束が入っている。そのちょっとしたことが大切なのだ。スケジュールを入れたのは、暦の妻の和音だ。実は、君愛の和音がパラレルシフトして、情報を伝えていた。しかし、夫が人生をかけてまで愛した女性の元に送る姿には何とも言えない憐憫を感じだ。君愛でかなり過酷な人生だった和音だが、僕愛でも過酷な人生になる。暦と出逢えて結婚はできたが、一人息子が殺されてしまう時間軸もあり、その彼女と入れ替わってしまうのだ。和音がいったい何をしたのか。まあ、暦に愛している、すべての可能性の和音を愛していると想われているから、ヒロインとしては素晴らしい。暦が最後に和音も、他の世界の和音も、それ以外の妻に対しても愛してる。たどり着いた暦の選んだ未来だということだ。

老齢の暦と栞が出会うシーンは何度も観ても読んでも良い。何も知らない二人だからこそ、出会う価値がある。二人が出会うと、君愛の世界に行って二人共不幸になってしまう。本質的には、父親に付いていけば暦は栞と出会い、暦は狂気に走り、母親に付いていけば和音と結婚し、老齢の栞と出会う。ある意味で究極の選択であり、3人の人生を決定づけることになる。シンブルな物語だからこそ、内容が濃い、濃すぎる。映画化されると、特に僕愛が印象的になる。役者の演技もよく、聞きたかった老齢の暦が素晴らしかった。西岡徳馬さんが演じていて、かなりマッチしている。若い頃のたどたどしかったが、西岡さんの演技に感情移入できた。君愛では若干演技にイワカンガあったが、僕愛では気にならなかった。


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