私が唎酒師を選んだ理由。
私が好きなもの、友達が好きとは限らない。
人によって「好き」は違うから「好き」を話す内容も話し方も変わる。「好き」の伝え方次第でその人の「好き」になることもある。
たまにふと思う。
「私が好きなこれ、たぶんあの子も好きな気がする」って。
全部じゃなくて、好きかぶりが一つでもあって、
それが周りにいる人たちな気がしてきた。
20代の頃はそんなこと思いもしなかったけど、だんだん何かの感覚が似ている人たちが、気軽な距離にいることに気づくと面白い発見がある。
それが全部の感覚じゃなくて、この陶芸とか、あの音楽、この一冊、そんな私の好きになったものを勧めたくなる。全員にじゃない、その人それぞれにそれぞれのもの。
だから話す内容も違って当然だし、それによって刺激を受け合えたりする。
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「これあの子に勧めてみよう」
って映画や芸術を味わった時に思う。
でもそれは、今までに友達や先輩が私にしてくれてたことだった。
「これ長内ちゃん好きだと思う」
「これ映里香が好きそうやから買ってみた」
って。
それが本当に好きだったりするから、みんなすごいなって思う。
でも言われなかったら自分から全く触れてなかったかもしれないと思うと「教えてくれてありがとうございます」と毎回なる。
その発見の広がりがおもしろくて、
だから日本酒も、それぞれの好みに合ったものを飲んで楽しんでもらいたいって気持ちが年々増した。
自分が飲むよりも、「好き」を伝えて一緒に楽しみたい。
それをもっと的確に面白くできたらいいなぁと。
そんなわけで、唎酒師になりました。
日本酒はまだまだ偏見や昔のイメージが強くて、入り口が狭いジャンルだなと勉強すればするほど感じる。
でも、その人の好みに合いそうなのを勧めると「日本酒ってこんな美味しいものだったの?!」とみんな目を丸くして言ってくれる。
その反応が私は大好きで、たまらなく楽しい。
それをちゃんと説得力もってできるためにも唎酒師になろうと思った。
新しい楽しみ方も唎酒師だから提案できる気がした。
私が推奨したいのは、日本酒のソーダ割り。
その名も、ポンボール!
これも説得力のためにまず商標登録を取った。
収益なんて何も考えてなくて、ただただ気軽に日本酒を楽しんでもらえたら嬉しいと思ってソーダ割の名前を考えてすぐに取った。
おうちに眠ってる日本酒、
開けて時間が経ったもの、
ソーダで割るとまた新しいおいしさに!
買ってみたけど好みじゃなかった日本酒も
ソーダ入れるとフレッシュさを感じられる!
おうちだけじゃなくて、飲食店でもハイボールのように、ポンボールが広まればいいなぁと思っている。
築地のお店の方が考えてくれたポスター。
やっぱり何事も一人ではできないため、多くの人の協力に感謝の日々。
なぜ日本酒なのか。
思えばギャップに驚いたからかもしれない。
ガツンと来る、飲みにくい、という実感が、「美味しい」日本酒を飲むとガラリと変わって、こんなにもまろやかでフルーティーで優しい味なのか!というギャップにハマったのかもしれない。
酒蔵は47都道府県に必ず一つはあることや、原料は日本の美味しいお水とお米というのも日本ならではのお酒だなと、日本酒のことを知れば知るほど同時に日本の魅力の発見にも繋がり、知りたい気持ちが止まらなくなった。
そして日本酒の生産量1位が地元兵庫県というのも、勉強して知ったこと。地元のことって意外と知らないなぁって切なくなるけど、同時にこんな素晴らしいことは知ってもらいたいと思い、唎酒師になろうとしたのかもしれない。
何かを勉強したいって気持ちは「好き」が始まりだとしても、いろんな理由が重なり合って追究するからただの「勉強」では終わらない。
商標登録取るなんて勉強する前は浮かびもしなかった。
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ある日、共演した子と日本酒の話になり
「どういうのが好き?」と聞いたら、
「映里香さんの好きなものが好き」
と言われたことがある。ドキッとした。
日本酒よりもその子のことが好きになった。
より身が引き締まる瞬間でもあった。「好き」を伝えるにもやっぱり真心は必要だねって。
自分で信じられる「真心」のためにも唎酒師を選んだのかもしれない。