大義 18
プールに精子を撒き散らし、クラスメイト全員を妊娠させてやると
息巻いていた吉沢君だが、うちが男子高だということを失念して
いるようだった。
その事実に気づいたある梅雨の日。
しんしんと降る雨の中、彼はズボンからおもむろにペニスを出現させると、
雨に打たれる弱々しいペニスをじっと見つめ、なぜ男子高に入ってしまったのだろうと、自問自答を繰り返した。
女子高に編入したい。
頭の中は女子高一色になった。
気がつくと職員室の前にいた。
無意識に足が動いた。
「先生。女子高に入りたいのです。どうしても」
「吉沢君。いい顔だね。何か吹っ切れたようだね」
「はい。今は女子高のことしか考えられません」
「うむ。君は令和の空海だね。それにしてもいい顔をしている」
「先生。僕は女子高にはいりたい…いや、女子高になりたいのです」
「いまどき珍しい、大義を持った男だね。君は令和の劉備玄徳だよ」
先生は膝をぽんっと叩くと、自身のペニスを出した。
先生のペニスは、淡いピンク色だった。
ペニスからふんわりとした優しさが滲み出ていた。
しかし吉沢君にはどことなく頼りないペニスにも見えた。
「吉沢君。このペニスをよく見たまえ、僕も若い頃、君のような大きな夢を持った。けれど、現実の壁にぶつかり、自身の弱さを知ってしまった。僕はね、夢から逃げてしまったんだよ。その結果がこれさ。ピンクペニスだ」
吉沢君は、黙って、しゃべる度にひくひくと動くピンクペニスを眺めていた。
自分はとんでもない事に立ち向かおうとしているのではないか。
一瞬、心の炎が臆病風に揺らぎかけたが、彼の意思は強固なものだった。
「先生。僕はこんな人畜無害のピンクペニスで人生を終わらせるつもりは
ありません。もっと荒々しいペニスになりたいのです。僕は、女子高になって、女子生徒の登下校を、命枯れるまで一生見守りつづけてみせます」
先生は小さく微笑むと、ゆっくりと肯いた。
自分の夢を、諦めてしまった夢を、託せる男がついに現れた。
先生は胸が熱くなると同時に、股間が熱くなるのを感じた。
ペニスの先が少し湿った。
しかし、そんな小さなことはどうでも良かった。
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