茶室の第一の道具・掛物
茶室の床の間には、掛物がかけられている。茶室に入るとまず掛物の前に行き、一礼をして拝見をする。他の道具も拝見をするが、お辞儀をするのは唯一掛物だけである。
千利休のわび茶の思想を伝える『南方録』という古書にも、客も亭主も共に茶の湯を極めようとする者にとって、なくてはならない物であると伝えられている。
亭主の気持ちを表現することができる茶室の最上位である床の間に掛けられ、師匠が弟子に向かって教え諭しているように、客にも亭主にも共に茶の湯の教えを示している。
これが他の道具と少し違った扱いがされている所以である。
「掛物の前だけ一礼するのは、なんでだろう」と疑問だったが、書かれた方に対して敬意をもって一礼しているというのは納得した。掛物の意味だけでなく、書かれた人となりも感じる必要がある。
亭主、客、いずれの立場でも、この心を大切にしていきたい。
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