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虚無と証明とフワフワと松本隆
【喫茶店で松本隆さんに聞いたこと】
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京都の有名な喫茶店で、超有名作詞家 松本隆さんにホホホ座の山下さんがあれこれ聞いたよという本。
言ったことある喫茶店が出てくるだけでテンション上がるのに語り手があの松本隆さん。
ルビーの指環、木綿のハンカチーフ、赤いスイートピー、風をあつめてを作詞したあの松本さん。
世代ではないが、父のレコードから松本さんの歌詞はよく耳にしていた。
松本さんの歌詞には色と空気感が滲み出ている。
直接的な表現はせず、分かりそうで分からない、掴めそうで掴めないあのフワフワと浮いている歌詞がたまらない。
この本も、フワフワとした松本ワールドに包まれていて、読みながらその喫茶店に自分も同席して聞いてるような錯覚に陥った。
本の内容を一言でまとめろと脅されたら
【虚無と証明】になる。
20世紀以降の芸術とか哲学とか全部虚無だと思うの。
だから僕もベースは虚無。
ベースは虚無、とても共感する言葉だ。
僕も何者でもない、何事も相対的な価値、意味は無いと思う類の人間である。
デフォルトが0ベース。
それでも気を抜けば虚無が横に座ってることがたまにある。
そこで証明という言葉が効いてくる。
松本さんは証明という言葉を多く使っていた。
才能があるかないかは自分で証明するしかない。才能があると思うんだったらつくればいいし、自信がなかったらやめればいい。
「松本さんの詞はいいね」と言ってくれるから、やっとそこで自分が証明しようとしてきたことが証明される。
これは虚無がベースになっているからだと思う。
何者でもない自分がベースだから、何者かになりたいと思える。
何かを作り出し、証明されることで虚無から脱出しようとする力の原動力となる。
タモリさんの期待をしない生き方(全てが加点方式)を採用している僕は深く共感。
たまに襲ってくる虚無感も悪い奴じゃない。
襲ってきたらコーヒー片手に話を聞いてやるくらいの付き合い方がいいのかもね。
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この文字量、本の薄さで1500円は高いなとはじめは思っていた。
今はそんな気持ちはない。
松本さんの話を聞いているのになぜか自分の内省タイムが始まる不思議な本。
読み終えた後の爽快感は特にない。
でもどこか心地よいフワフワした感覚に陥る。
これが松本ワールドなのか。
また火裏蓮花の日本一美味い抹茶ケーキを食べにいこう。
以上です。
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だらだら過ごしてる生活があるとして、そこから余計なものを削っていくと、詞になる。それを整理して抽出してあげる。それが詞になったり、曲になったりする。
ー松本隆