ビジネスとしての作家活動の再現性について
こんにちは金曜お昼になりました。刺しゅう作家兼若手イラストレーターの展示をメインとしたギャラリーを運営している大図まことです。イラストレーターとハンドメイド作家のための「仕事とお金の授業」55回目となる本日のタイトルは「ビジネスとしての作家活動の再現性について」です。
※ここで書く作家活動とはクライアントワークとは別にイラストレーターが個展で絵を展示販売することを指しています。
私は東京の蔵前でイラストレーションの展示をメインとしたギャラリーを運営しています。個展をご一緒する作家の約半分が関東以外に在住しています。去年ご一緒した31名の内16名がそうでした。レンタルギャラリーでは無いので場所代は掛かりませんが在廊する際の旅費交通費がこれまで作家の大きな負担となっていたのは事実です。
先週まで展示を行っていた作家は鹿児島から来たので飛行機の往復チケットとホテルの宿泊費を含めたらまぁまぁな金額になります。ある程度の売上が見込めないと地方で活動している作家が自分のお金だけで東京で展示をするのはとても大変だという事は想像できると思います。
ギャラリー側からご一緒したい作家さんへ展示のお誘いをしてるのに滞在費が作家負担なのはおかしいとずっと考えてました。とは言え潤沢な資金があるわけでは無く無理して潰れたら本末転倒なので持続可能な仕組みとして活動に協賛してくれるスポンサーを探しました。今年最初の展示が本日はじまりました pic.twitter.com/whMxRoZqju
— 大図まこと (@makotooozu) January 4, 2025
旅費交通費に関してはずっと何とかしないとと考えていて協賛企業を探し、今はある程度補助が出来るようになりました。スポンサーの皆さんどうもありがとうございます。
作品を売って食べて行くための再現性
協賛企業を探す中で作家の出身校にも打診を行い、実際一校打合せをさせていただきました。こちらの要望は卒業生が私たちのギャラリーで個展を開く際にDMやポスターに学校名を記載するのでその代わりに旅費交通費の一部をサポートして欲しいという内容です。よく見るタイプの協賛広告としてです。
打合せの中で費用対効果を伝えるために作家の活動実績やギャラリーの来場者数、売上推移を見せながら協賛した場合どういったメリットが先方にあるかを伝えました。もはや1人電通マンです。
これまで数々の修羅場を潜り抜けて来たのでどんな質問にも答えられる自信がありましたがこの質問の答えには失笑されてしまいました。
質問:作家が個展で作品を売って食べて行くための再現性はあるのか?
答え:私たちはとにかく売ります。
質問の答えになっていませんよね。恥ずかしいです。今でもあの時どう答えれば良かったのか正解がわかりません。作品として販売しやすいモチーフを描けば良いのでしょうか?確かにおじさんを描いた絵よりかわいい動物の絵の方が一般的には販売しやすいと思います。でもおじさんの絵をどうしても作家が描きたくなったら作家の制作意図を聞いて解釈し私たちは一緒にアピールします。
何年もギャラリーを運営しているといつもは初日に作品がほとんど売約済みになる作家の作品があまり動かないということがたまにあります。イラストレーションとは言え額装済みの作品は決して安くはありません。作家がこれまでのテイストと異なるものにチャレンジして発表したのでお客さんにはすぐに響かなかった事が大きな原因だと思っています。
ここで言えるのはお客さんが求めるものと作家が描きたいものはイコールでは無いという事です。学生の頃よく聞いていたミュージシャンのライブに久々に行ったら全然知らない前衛的な曲ばかりのセトリで聴きたいのはそれじゃ無いと思うのと一緒です。もちろんどんなものでも受け入れてくれる熱心なファンがついている場合は話は別だと思います。
以上をまとめると作家は人気が出た作風を描き続ければ食べて行くための再現性はあるが、そればかりだと作家自身もお客さんもそのうち飽きてしまうのでとにかくそれで食べて行くには、やはり描いたものをしっかり一枚一枚売って行くしかないという事なのかもしれません。そう考えると私たちはとにかく売りますという返答もあながちおかしくないような気もします。
※私が運営するギャラリーでご一緒する作家さんのほとんどが副業を持っていたり、クライアントワークでの収入を得ています。作家活動一本という方は少ないです。
去年こんなnoteを書いていました。
最後のまとめとして当時こんな風に書いています。
大人になってしまった今、子供の頃のように描きたいものを描いて作りたいものを作るだけでは生活は難しいのかもしれません。でも大人になった今だから出来ることも増えましたよね。誰になんと言われようが自分が楽しいと思える事を自分なりにたくさんして行きましょう。
今日の授業はここまで。また来週金曜お昼にお会いしましょう!
■現在のギャラリー展示情報
私が運営しているTOKYO PiXEL. shop & galleryでは本日からイラストレーターumao個展「cat cat cat」がはじまりました。是非お立ち寄りください!
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cat cat cat umao solo exhibition
会期:全体 2025年2月1日(土)~24日(祝・月)
前期2025年2月1日(土)~11日(祝・火)
後期2025年2月15日(土)~24日(祝・月)
時間:12:00-19:00
※12(水)13(木)14(金)お休み
※前期最終日11日(祝・火)、後期最終日24日(祝・月)は17:00終了
※前期初日2/1(土)2(日)、後期初日2/15(土)16(日)に限りオープン12時から15時までの時間帯は事前入場予約制となります。
15時以降はフリー入場です。