林語堂「人生をいかに生きるか」【阪本勝訳・講談社学術文庫】
閑適生活を愛し、人生をいかに楽しむかを追求した林語堂は、アメリカ人には「三つの欠陥がある」と述べています。
それは、「能率」「正確」「功名成功欲」の三つです。(林語堂著「人生をいかに生きるか」阪本勝訳・講談社学術文庫・上巻第七章優遊論)
林語堂は中国福建省の生まれです。
父親はキリスト教の牧師であったそうですが、本人は、神学校を卒業した後、神学に懐疑を抱いたことから絶縁し、アメリカのハーバード大学、ドイツのライプチッヒ大学で学位を得た後、北京大学教授となったそうです。
その後、アメリカに移住し、英文の著作を刊行し、世界中でベストセラーとなるほど、彼の著作は愛されました。(同書・訳者まえがき:P.8)
かの渡部昇一さんも「人生達人の書」として、序文を書いています。
人生の豊かさというものは、人としての品性や品格というものを、じっくりと養うことにあるような気がします。
まずは「自分が豊かになること」が、人生最大の目的と言えるのではないでしょうか。
人間性の「養成」と「老成」、オーウェルが言うところの「decency」(人間らしさ)があれば、死ぬ直前でも、最高の自分でいられるでしょう。
「品性や品格を養うところに、人生の目標がある」とするならば、歳をとることも怖くなくなります。
ヘルマン・ヘッセの著作に「人は成熟するにつれて若くなる」というものがありますが、表紙に使われている晩年のヘッセの写真を見る度に、思わず惚れ惚れとしてしまいます。
この表紙にあるヘッセの老成の美と格好良さを目にしてしまうと、つくづく「このような人になりたいものだ」と思わずにはいられません。
林語堂は、ミレニアムの頃には、さすがのマンハッタン街を忙しなく闊歩するアメリカ式の「go-getter」も、東洋式な悠歩者として、悠然と歩くようになるだろうと考えていたようです。
今もなお、世界経済の中心であるニューヨークの午後がそうなる日は、はたして来るのでしょうか。
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