孔子は、中国春秋時代の人です。
それは絶え間なく内乱や国同士の戦争が行われていた時代でした。
それもあってか、孔子は「蛮勇を好む礼無き者」を相当嫌悪していたようです。
冒頭で紹介した彼の言葉を見れば、それは容易に判断できるでしょう。
翻って現代を見渡せば、孔子の時代と大差ない状況であることがわかります。
と言うより、この地球上で何かしらの内乱や戦争が無かった平和な時代というものを人類は未だかつて享受したことがありません。
そのような意味では、人類は孔子の時代から、ほとんど進歩していないのかもしれません。
自らの欲求を実現し、自らを表現する手段として、武力や暴力、権力といった「力を誇示する」という手段しか持ち合わせていない人たちが、どの時代、どの国にも厳然として実在し続けたことが要因と言えるでしょう。
孔子の言葉は、戦争や争いが絶えない時代にあっても、決して諦めたり迎合したりすることなく、「正しき道はこれだ」と示しているからこそ、どの時代であっても、多くの人々の心や魂に響くのです。
それ故、『論語』は学ぶべき名著として、今日まで世界中で読み継がれてきました。
学問の道を歩む者として、孔子が説いている「理想の社会」を実現するために、何か出来ることはないかということは、常に念頭に置いておくべきでしょう。
人類が持ち合わせている生物としての闘争本能や攻撃本能は、スポーツとして昇華することで、わずかばかりでも解放されるようになりました。
また、過去2回の世界規模の大戦を経たことで、次の世界大戦では、人類としての存続は難しくなるという共通認識のもと、国際連合をはじめ、様々な地球規模のシステムや機関によって、戦争にならないための方策がとられるようになってきています。
それでも、国同士の争いが止む気配はありません。
「人として礼を尽くす」という簡単なことさえ、まだ人類は為し得ていません。
悲しいかな「人としての尊厳」「人間らしさ」というものが蔑ろにされているというのが実情です。
このような状況にある現代の我々にとって、全人類的な規模で目標とすべきことを孔子はしっかりと示してくれています。