早稲田の古文 夏期集中講座 第30回 『増鏡』後醍醐親政
『増鏡』では、御醍醐天皇親政期の繁栄の様を描く所があります。たとえば、「十五夜歌合」という記事がそれです。元享元年(1321年)、天皇三十三歳の時です。
「院にも内にも、朝政(あさまつりごと)のひまひまには、御歌合のみしげう聞こえし中に、元享元年八月十五日かとよ、常よりことに月おもしろかりしに、上、萩の戸に出でさせ給ひて、ことなる御遊びなどもあらまほしげなる夜なれど、春日の御榊(さかき)、うつし殿におはしますころにて、糸竹(しちく)の調べは折あしければ、例のただうちうち御