小学生のふりをして書く読書感想文②
娘が読書感想文に選んだ本で書いてみました。
なるべく小学生のふりをして、でもこういうのを生徒が書いてきたら感動して涙ながらに褒めちぎっちゃうわ、というレベルを目指して書いています。
最初にひと言。
とってもいい本です。
タイトルから「学習教材のようなわざとらしいお話かな」と予想してしまう方もいるかもしれませんが(実際、妊娠や出産について学べる、保健体育の教材としても秀逸ですが)、物語として非常に楽しめます。まっすぐで力強く、明るくてテンポのいい、読みやすい文章です。おもしろい文章を書く人だなあと思って作者について見てみると、なるほどこういう人だからこそこの話が書けたんだなあと納得しました。
こちらたまご応答ねがいます
ある日、六年生になったばかりの卓(たかし)の頭の中に不思議な声が響きます。
「おにいさん、おにいさん。こちらたまご、応答ねがいます」
「たまご」は、お母さんのお腹の中にいます。できたての「受精卵」です。不思議な力で卓に話しかけ、
「ぼくがちゃんと生まれるように、協力してください」
とお願いします。お母さんは子供をあまりほしがっていないようだから、と。こんなふうにして二人の物語は始まりました。
お腹の中でどんどん成長していく「たまご」は、卓にいろいろなことを教えます。たとえば、つわりが始まってまだ間もないころに、身長が二センチくらいになり、頭と体の区別ができるようになり、心臓が動き、手足がのびて指ができはじめたと報告します。
さらにその二週間後には、身長は五センチになり、目も鼻も口もできたと言います。
わたしは、この本からたくさんのことを学びましたが、中でもこれは特に大きな驚きでした。こんな早いうちにもう人間の形になっているなんて、と。「たまご」は「命」なんだと実感しました。
だからこそ、このあとの中絶をしようとする場面では胸がぎゅっと痛くなりました。
赤ちゃんを産むことの大変さや、高齢出産は危険性が高まるということも、わたしはこの本から知りました。そして、人それぞれの事情や選択があるということもわかりました。
でも、卓はまっすぐでした。「たまご」を、自分の弟を死なせたくないという一心で走り出します。叫びながら、泣きながら、がむしゃらに走ってお母さんを止めに行きました。わたしもまるで卓といっしょに走っているような気持ちになりました。
卓は「たまご」を守りました。そして、そのあとも、「たまご」との会話をきっかけに、お父さんやお母さんから、また幼なじみの女の子から、いろいろなことを学び、目標を見つけ、成長していきます。
(ここから自分の話)
あとがき。
難産でした。出産が、ではなく、この感想文を書くことが。
読書感想文としては書きにくい部類だと思います。
というのも、この「命」についてのまっすぐなストーリーは、これだけでテーマとしても完結しているわけなので、感想文を書こうとすると同じような話になりがちです。つまり、「命の尊さと問題の複雑性」みたいな感じです。
今回は、もうとにかく主人公がお母さんを止めに走るシーンがめちゃくちゃかっこよくて、まっすぐで男前で、なんてすばらしいシーンなんだと涙があふれて止まらなかったので、それで一点突破しました。
さて、ここでとっておきの裏ワザのご紹介です。
読書感想文はとにかく「自分の話」ができるかどうかにかかっています。
わたしも、ここでは省略していますが「こういう体験談につなげよう」とイメージしながら書き始めます。
その「自分の話」ですが、なければ家族に聞きましょう。「この本について家族とこんな話になった」という体験談を書けばいいのです。それは全然ウソにはならないし、読書感想文の意義に沿っています。裏ワザとは言ってしまいましたがインチキではまったくないのです。本について家族と話すなんて、それだけでものすごい価値のあることです。
今回のテーマは、まさにそれにうってつけですね。
こちらたまご応答ねがいます
作: 岸 信子
絵: 本間 弘子
ポプラ社
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