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あなたのイランのイメージは大間違い!?『イランの地下世界』
若宮總『イランの地下世界』、KADOKAWA
タイトルを見ればイランのマフィアかなにかの話だと思うでしょうが、そうではありません。この本で書かれている「地下世界」とは、イスラムという建前に隠された、イラン国民の本音の部分です。
そもそもイスラム教の国は、毎日お祈りをしたり、食事に禁忌が多かったり、コーランを燃やされると全員が怒り狂うなどという「イスラム命!」の宗教に熱心なイメージが強いと思いま
とにかく刺さる一冊。小林秀雄『読書について』
小林秀雄『読書について』中央公論新社、2013年。(1430円)
小林秀雄の読書法
「僕は、高等学校時代、妙な読書法を実行していた。学校の往き還りに、電車の中で読む本、教室で窃に読む本、家で読む本、という具合に区別して、いつも数種の本を平行して読み進んでいる様にあんばいしていた(9頁)
本屋で最初の3行を読んだ時、ああこれは自分がやっている読み方ではないか、と驚きました。とはいえ自分で発明し
これは官能本か、いや哲学書か?『娼婦の本棚』
鈴木涼美『娼婦の本棚』中央公論新社、2022年。
見た目に騙されるな
ドギツいピンクの表紙に、刺激的な言葉が並ぶ表紙ですが、この本はそれだけではありません。著者は「痺れる一文が1行でもあれば、(中略)私はその本を読んだ甲斐があったと感じます(14頁)」と言いますが、私はこの本の10ページに一つくらいは痺れるような言葉に出会うことができました。
著者は夜の世界で活躍しながらも、東大で修士まで行っ
日本美術が一気に分かる!「日本美術の底力」
山下裕二『日本美術の底力』NHK出版、2020年。(1200円+税)
日本美術の見方を知る
私は西洋美術はかなり好きで本もたくさん読んでいるのですが、日本美術はどうしても眠くなるというか、ピンとこないなあという印象でした。
正直パッと出てくる日本絵画といえば、北斎の富士山のやつ(富嶽三十六景 神奈川沖浪裏)というくらいの知識でした。しかしこの本を読んで、一つの対立軸を持つことで格段に理解できるよ