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「短編小説」あるがまま、を大切に
いつもどおりの日曜の午後。違うと言えば、
しとしとと雨が降っている。
このところ週末になると決まって雨になり、少し憂鬱だ。
山根家のみんなもそれぞれの日曜日を過ごしていた。
父の智明、母の佳子、広告会社に勤めて三年の洋一、
女子大二年生の美佳、といったごくありふれた四人家族。
父の智明は、現在北海道へ単身赴任中。
父が不在の一家においての女性軍は、好き勝手出来ると
羽根を伸ばし放題だ。
忘れてはいけない家族があと、ふたり。正確にはあと、二匹。
茶トラ猫四歳の小太郎と黒猫三歳のモモである。小太郎はコタ、モモはそのままモモと、まるでおそろいの食器のように呼びかけの音もそろえている。
ちょうど一年前に、母の佳子が猫の保護活動をしている友人から二匹を一緒にもらい受けたのだ。
二匹はとても仲が良いから別々の家に行くのは気が引けると友人が
言ったそうだ。
佳子も二匹の様子を見れば言わずもがなだと思った。
そしていつもの姉御肌を発揮して二匹とも引き取ったのだ。
噂通り、血のつながりはないものの、とても仲が良い。どんな時でも、癒してくれるふたり。我が家にとって彼らはアイドル、いや太陽かもしれない。
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