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「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」(西林克彦著、光文社新書)
この本を読んで
なんのはなしですか というコニシ木の子さんの記事を読んだことを思い出しました。
(勝手に引用してすいません)面白かったです。
*
「わからない」よりも「わかったつもり」でいることのほうがはるかに問題である。
「わかった」という状態は、「わからない」ことがないという状態である。
しかし、「わかった」と思ったら、実は「わかっていなかった」ということはよくある。
この「わかったつもり」になってしまうと「わからない」ことがないと思ってしまっているから、それ以上になれない。
「よりよくわかる」ためには、「わかったつもり」の状態は壊さなければならない。
つまり、「わかったつもり」の状態は、よりよくわかるための最大の障害である。
これが本書の問題意識です。
この「わかったつもり」状態の正体について、アハ体験的に暴いてくれるのが本書です。
「わかった」状態と「わからない」状態
本書は「わからない」「わかる」「よりわかる」について次のように整理します。
①文章や文において、その部分間に関連がつかないと、「わからない」という状態を生じます。
②部分間に関連がつくと、「わかった」という状態を生じます。
③部分間の関連が、以前より、より緊密なものになると、「よりわかった」「よりよく読めた」という状態になります。
④部分間の関連をつけるために、必ずしも文中に記述のないことがらに関する知識を、また読み手が作り上げた想定・仮定を、私たちは持ちだしてきて使っているのです。
読みの深まりは、文章の部分間の関連の緊密性が高まることによって生じます。
そして、私たちは、文中に記述のないことや読んだ側の想定や仮定で補うことで、文章の部分間の関連をつなげます。
その関連づけで「わかった」状態に至ります。
いちど「わかった」という安定状態になると、それを壊さないと「よりよくわかる」という状態に進めません。
一方で「わからない」という不安定状態だと、頭がその先の探索状態を継続させることになります。
「わからない」ほうが、頭が活性化するわけです。
「なんのはなしですか」が面白いのは、このモジモジ状態(?)ではないかと思います。
読み終わった後も、頭の中の探索機能が活性化し続けるので、頭に残ってしまいます。
文脈とスキーマ
なんのはなしかわからないと文法や単語はわかるのに「わからない」という状態になります。
これは「文脈」がわからないということが考えられます。「文脈」はよりよく読むための道具です。
①文脈がわからないと「わからない」。
②文脈がスキーマを発動し、文脈からの情報と共同してはたらく。
③文脈がそれぞれの部分の記述から意味を引き出す。
④文脈が異なれば、異なる意味が引き出される。
⑤文脈に引き出されたそれぞれの意味の間で関連ができることで文がわかる。
「スキーマ」とは、あることがらに関する、私たちの中に既に存在しているひとまとまりの知識を言います。
私たちは、文脈からなんの話かを把握して、そこから該当するスキーマを発動させて、意味を関連づけ、「わかった」という状態に至ります。
これがわからないと 「なんのはなしですか」になるのではないかと思います。
本書に以下のようなアハ体験的な例文があります。
新聞の方が雑誌よりいい。
街中より海岸の方が場所としていい。
最初は歩くより走る方がいい。
何度もトライしなくてはならないだろう。
ちょっとしたコツがいるが、つかむのは易しい。
小さな子どもでも楽しめる。
一度成功すると面倒は少ない。
鳥が近づきすぎることはめったにない。
ただ、雨はすぐしみ込む。
多すぎる人がこれをいっせいにやると面倒がおきうる。
ひとつについてかなりのスペースがいる。
面倒がなければ、のどかなものである。
石はアンカーがわりに使える。
ゆるんでものがとれたりすると、それで終わりである。
なんのはなしですか
この例文はこれだけだと意味不明です。
ここに「凧を作って揚げる」という文脈が入るととたんに、氷解します。
「凧を作って揚げる」という文脈が入ると、「凧を作って揚げる」というスキーマが発動し、意味がわかるという状態になるわけです。
この文脈とスキーマが曲者なわけです。
「わかったつもり」を壊して、建て直す
一度「わかったつもり」になると、普通それ以上探求するのをやめてしまいます。
この「わかったつもり」を一度壊す必要がある。
そのためには「わかったつもり」のワナとその壊し方と建て直し方をしることが必要です。
そのあたりのことを暴き出して、「よりわかる」構築のヒントが書いてあるのが本書です。
例文は小学生レベルなのに、うわぁまじで「わかったつもり」だったわぁとショックになります(笑)。
そのあたりのアハ体験は本書で。
*
昨日のつなわたりの倫理学も「わからなかった」ので、まだ、探索が続くわけです。これは難しさの性質が、文脈とスキーマだけではなく、問いそのものの難しさにもありましたが。。。
「わかったつもり」で思考停止になるのを避けて、「なんのはなしですか」と文脈とスキーマを活性化させて、「よりよくわかる」ようになりたいですね、そんな感じです。
というわけで、「今日一日を最高の一日に」
起床時間5:25
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