菌活・腸活の危険性②:菌活や善玉菌が有害になった症例その②
前回はその①として、プロバイオティクス投与によって敗血症になった症例を紹介しました。
今回は、プロバイオティクス投与や善玉菌と呼ばれる菌によって、部分的な症状が起こった症例を紹介します。
50歳男性がラクトバチルス・ラムノサス(LGG乳酸菌)菌血症、僧帽弁大動脈弁感染性心内膜炎、敗血症性塞栓が原因と考えられる脾梗塞を発症しました。
男性は歯肉裂傷があり、貧血の既往歴があったものの元々の健康状態は良好でした。
男性は10年にわたりプロバイオティクスのサプリメントを服用していました。[1]
遺伝性出血性毛細血管拡張症と大動脈を人工血管にした患者が、ラクトバチルス・ラムノサス菌血症と心内膜炎を発症しました。
患者は市販のプロバイオティクス製品を大量に服用していたことが明らかとなりました。[2]
36歳の女性が、アルコール性肝硬変で入院後、ラクトバチルス・ラムノサスによる心内膜症を発症。
その後、多臓器不全により入院12日後に死亡しました。
女性は市販のプロバイオティクスサプリメント3種類をパッケージ通りに服用していました。[3]
65歳の糖尿病の女性が、ラクトバチルス・パラカゼイ菌血症による肝腫瘍と診断されました。
女性はプロバイオティクス飲料を毎日少なくとも1本摂取していました。
この症例では、結論としてプロバイオティクスの摂取が肝腫瘍の原因である可能性が高いことが示唆されています。[4]
ある多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験による臨床試験では、感染性合併症(感染性膵壊死、菌血症、肺炎、尿毒症、感染性腹水など)とそれに伴う死亡率が、プロバイオティクス群とプラセボ群において、プロバイオティクス群の方が死亡率が優位に高くなりました。
また、プロバイオティクス群の9件は腸管虚血を起こしましたが、プラセボ群では起こりませんでした。[5]
乳酸菌は心内膜炎や菌血症に頻繁に関連していることが報告されています。
また、腹膜炎、腫瘍、髄膜炎にも関連し、カゼイ菌とラムノサス菌がよく検出されています。[6]
起こった症例としての報告数は少ないものの、
一般的に善玉菌と呼ばれている乳酸菌が、感染症を引き起こす症例を紹介しました。
どうしてこのような感染症が起こるのでしょうか。
【参考文献】
[1] Lactobacillus endocarditis in a healthy patient with probiotic use
IDCases. 2020; 22: e00915.
[2] Probiotics and infective endocarditis in patients with hereditary hemorrhagic telangiectasia: a clinical case and a review of the literature
BMC Infect Dis. 2018; 18: 65.
[3] Probiotic related Lactobacillus rhamnosus endocarditis in a patient with liver cirrhosis
IDCases. 2018; 13: 4.
[4]Lactobacillus: the not so friendly bacteria
BMJ Case Rep. 2017; 2017: bcr2016218423.
[5] Probiotic prophylaxis in predicted severe acute pancreatitis: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Lancet . 2008 Feb 23;371(9613):651-659.
[6]Pathogenic relevance of Lactobacillus: a retrospective review of over 200 cases
Eur J Clin Microbiol Infect Dis . 2005 Jan;24(1):31-40.