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知らなきゃ損する!子どもの能力の捉え方

はじめに

 「先生は俺のこと分かってくれていない。」
 初任の時、ある男の子に言われた言葉です。今でも思い出すと胸が痛みます。通知表を渡す時、彼の成績にCをつけました。それは、今はもうない『関心・意欲』の項目です。その理由は、彼が授業のノートを全く書いていなかったからです。後々、この判断が大きな間違いであったことに気づきます。

多様な能力をもった子どもたち

 クラスの中には、実に多様な能力を持った子ども達がいます。発表したり説明したりすることが得意な子もいれば、文字や絵・図などで表現するのが得意な子、グループ学習で友達と協力するのが得意な子など実に様々です。その一方で、話したり聞いたりするのが苦手な子、書くのが苦手な子、友達に合わせるのが苦手な子もいます。このように、能力や適性が違う子どもたちがクラスの中にはたくさんいます。しかし、現状では一方向的な見方で評価され、自尊心を深く傷付けられている子どもがいます。先ほど紹介した男の子はまさにその典型的な例です。その男の子は、実はノートの小さなマスの中に文字を書くことができず、ノートを書きたくても書けなかったことが後から分かりました。しかし、話すのは得意で、交流の時間にはたくさん自分の考えを話していました。このような子どもを、得意な部分で認められなかったことは、非常に大きな失敗といえます。小さなマスに文字が入らないのなら、大きなマスのノートを用意すればいい。字を書くのが苦手な子どもは違う手段を使えばいいんです。

「多重知能理論」とは

 先程の例のように、学校現場では子どもが本来の能力を認められないケースが他にも多くあるはずです。また学校では、成績優秀などいわゆる学力の評価を受けているのは、言語能力や論理的・数学的能力などの分野に偏っています。このような状況に疑問を感じ、人間の能力の可能性について研究したのが、心理学者のハロルド・ガードナーです。ハロルド・ガードナーは、人間の能力には大きく分けて8つの分野があると示しました。それは、◯論理的・数学的能力 ◯空間能力 ◯身体・運動能力 ◯音感能力 ◯人間関係能力 ◯自己観察・管理能力 ◯自然との共生能力 です。これら8つの力は、社会で「生きる力」の源であり、どれも同じように評価されるべきなのです。これらは、後の研究者によって、子どもにも分かる平易な表現に変えられ、ピザを用いて表されました。

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多様な子ども達に多様な学び方を

 このように子ども達の能力は実に多様で、得意不得意も同様です。そのような中で、学び方を統一し、子ども達の能力を低く評価するのは危険です。子ども達は、自分の学び方の多様性に気づくと共に、自分に合った学び方を選択する力をつけなければなりません。子ども達を誤った見方で否定してしまわないように、様々な角度から子どもの得意・不得意を受け止め、子ども一人ひとりに合った学びを提供していきたいものですね。

 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今週も心優しい子ども達にかこまれて幸せいっぱいの日々でした。また、来週も子ども達と最高の学校生活を送っていきます。

 参考文献
 「授業のユニバーサルデザイン Vol.2」桂聖、石塚謙二、廣瀬由美子、小貫悟・一般社団法人 日本授業UD学会、2020

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