「カスハラ」についての一考察

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 いきなり「カスハラ」をテーマにしようと思ったのは、昨年の年末に書こうと思っていたら、いろいろ立て込んでしまったからです。でも、世間はお正月真っ盛りです。飲食店では初詣などのお客様で賑わっていることでしょう。もちろん、店員の方々は正月から忙しく働いています。その中では「カスハラ」防止に取り組む必要もあるでしょう。
 私は福祉事業所A型の飲食店で働いています(年末年始は休みです)。要するに、一店員の立場です。ただ、個人的には「カスハラ」という言葉には違和感を覚えています。ここからの考察は私個人の意見であることをお断りして進めていきます。
 「カスハラ」とは「カスタマーハラスメント」の略です。カスタマー(お客様)が店員(店)に暴言や嫌がらせなどをすることです。テレビなどの報道を見ると、カスタマー(お客様)による暴言や嫌がらせ、店員のトラウマなどがこれでもかというくらいセンセーショナルに取り上げられています。しかし、それでも私には違和感は拭えません。それはどういうことでしょうか。
 まず、カスタマー(お客様)と店員(店)との関係性を考えてみます。そもそもこの関係性は力関係上、店員(店)の方が圧倒的に力ある立場で、カスタマー(お客様)は力ない立場なので、対等ではない(非対称的な)のです。ということは、店員(店)の仕事はカスタマー(お客様)との対等性を確保するためにあり、店員(店)にはそれだけの権限や責任が発生するということになります。カスタマー(お客様)はそういう権限や責任がないからこそ、店側に自身の意見を表明する権利があると言えます。
 確かに上述の報道の例は行き過ぎでしょう。警察などが入った方がいいとは思います。ただ、力ある立場である店員(店)に対して対等性を確保しようとする言動と捉えることも可能です。絵空事などと言われるかもしれませんが、店側のマニュアルにある「毅然とした態度で対応」してハイ終わり、という在り方にも納得はできません。
 では、この「毅然とした態度で対応」とは何でしょうか。それは店員もカスタマー(お客様)同じ人間だから、暴言や嫌がらせなどされたら傷つくし怒りの感情も湧くから店を守るためにも主張してもいいということでしょう。ただ、この主張には先ほど申し上げた「対等ではない」つまり「非対称性」が抜けています。そう考えると、この店員(店)の主張はカスタマー(お客様)に対する抑圧と考えることができます。要するに、力ある立場から力ない立場への権力行使とでもいうべきものでしょう。また、これは力ある立場である店員(店)からの抑圧ですから、力ない立場であるカスタマー(お客様)が全て責任を負うという自己責任にもなりかねません。「毅然とした態度で対応」してハイ終わり、ということは店員(店)が自身の責任を放棄することにもなるわけです。そして何よりも、私は店員(店)が「カスハラ」と判断したら、カスタマー(お客様)の店に対する真摯な意見までもがそうなってしまうことに懸念を持っています。そうなると、店員(店)がカスタマー(お客様)を減らして収益を落とすという不利益が発生し、経営が傾くという事態にもなりかねません。
 以上のように考えていくと、私は「カスハラ」という言葉には違和感がありますし、「非対称性」の視点が欠けている「カスハラ」という言葉は個人的には使いたくないものです。
 ここまで「カスハラ」について考察してみました。今回はその対応に関しては自分の範疇を超えてしまうので書けませんでした。ですが、少なくとも店員(店)とカスタマー(お客様)との力関係を考慮しないことにはその対応は不十分なものになるということだけは確信できます。
 ここまで読んでいただいた方に心から感謝申し上げます。
 
 
 
 
 

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