「子どもの権利条約を学童保育に活かす」(安部芳絵著/高文研)から「第Ⅱ部子どもの権利条約 条文解説」を読んで

 「子どもの権利条約を学童保育に活かす」(安部芳絵著/高文研)から「第Ⅱ部 子どもの権利条約 条文解説」を読んでみました。ここから読み始めたのは、Twitterであるフォロワーさん(療育保育士の方)が「子どもの権利条約」にたびたび言及していたこと、この「子どもの権利条約」は保育所保育指針や児童福祉法等の根底であることから、いつか触れておく必要性を強く感じていました。また、私も保育士の資格を持っていますし、将来的な仕事として考えているので読んでおこうと思ったということもあります。今回は読んでみた率直な感想や意見等を書いてみたいと思います。
 まず、どの条文も子どもに保障して当然ではないかというのが率直な感想でした。でも、わざわざ「条約」「条文」として言語化・明確化しているということは、それだけ「子どもの権利」が蔑ろにされているということであり、それは同時に「力ない立場」(子どもや女性、障害者等)の権利が蔑ろにされているということでもあると考えています。特に第12条「意見表明権」はそうなりやすいと思います。「子どもの意見だから」ということです。私も中学校の相談員時代に心の底でそう考えて子どもの意見を退けてきた可能性は否定できません。しかし、その言動は第12条「意見表明権」や第2条「差別の禁止」、第3条「子どもの最善の利益」、第6条「生命への権利、生存・発達の確保」の「一般原則」に抵触していたと言えるでしょう。
 そうなると、どの条文も子どもに保障して当然と思いながら、なぜ一般原則に反するような言動をしたのだろうかと、自身に問いかけたくなります。「子どもの権利条約」を知らなかった、子どもの言い分を丁寧に聴いて対応できなかったという理由はごもっともです。ただ、最も重要な理由は自身が相談員という「力ある立場」であることの自覚がなかったからではないかと考えています。だとすると、子ども(生徒)は「力ない立場」です。その関係は対等ではありえません。「力ある立場」が「力ない立場」をエンパワして対等性を確保する義務と責任を負わなければならないのです。そのために「子どもの権利条約」や「保育所保育指針」等を読んでおく必要性があると最近は考えるようになりました。
 もちろん、現段階の学習では子どもを理解することには程遠いと感じています。なので、まだまだ勉強は必要です。ただ、保育士という立場で子どもの前に立つことを想定すれば、見えないけどそこにある力関係には自覚的である必要性があると考えています。要するに、保育士は子どもとの対等性を確保する義務と責任があるということです。そのためにはまず何より、第2条「差別の禁止」、第3条「子どもの最善の利益」、第6条「生命への権利、生存・発達の確保」、第12条「意見表明権」の「一般原則」が守られているか、常に考慮する必要があります。その上で他の条文や「保育所保育指針」等の知識を組み合わせたり等、それぞれの子どものニーズに合わせて対応していくことになると考えています。
 ここまで「子どもの権利条約を学童保育に活かす」(安部芳絵著/高文研)から「第Ⅱ部 子どもの権利条約 条文解説」を読んで、自身の中学校での相談員時代のことについて振り返ってみました。この条約も含め、様々な知識を身に着けながら子どもの意見等を聴いて対応することは、もちろん大事です。ただ、保育士という「力ある立場」として子どもという「力ない立場」の前に立つという自覚を常に持ってそうしていきたいと考えています。
 最後に、原宿カウンセリングセンター顧問の信田さよ子氏による言葉を載せて結びとしたいと思います。ここまで読んでくださった方に心から感謝申し上げます。
 「マイケル・ホワイトが常々言及するように、臨床家たるもの言葉の隅々に埋め込まれた権力に鋭敏でなくてはならない」【岩壁 茂編「臨床心理学増刊第16号」(金剛出版 2024 p22)】(黒の強調は筆者による)

 参考文献:「子どもの権利条約を学童保育に活かす」(安部芳絵著/高文
      研 2020)から「第Ⅱ部 子どもの権利条約 条文解説」
      「臨床心理学増刊第16号」(岩壁 茂編/金剛出版 2024)p22          


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