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【弁当の日】09.大人になっても弁当、弁当!

 この記事は、小学生が親の手伝いなしで弁当を作る「弁当の日」の素晴らしさを伝える記事です。

👇過去の記事は、こちら👇

 私が今回、この記事を書く目的はつぎのとおりです。

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◆教室では学べないことを学べる「弁当の日」の素晴らしさを知ってもらう
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1.「弁当の日」一期生が20歳になったら?

 「弁当の日」発祥の滝宮小学校の子どもたちが20歳になったら、どうなったのでしょうか?

 滝宮小の“弁当の日”一期生(小6時のみの1年間で5回、”弁当の日”を経験)
が20歳になったとき、日常的に自分の食事を「とてもよく作る」(55%)、「まあまあ作る」(15%)で合計70%でした。

 二期生(小5.6時の2年間で1回、“弁当の日”を経験)が20歳になったときは、
「とてもよく作る」(45%)、「まあまあ作る」(36%)で合計81%でした。

出典:『「ごちそうさま」もらったのは”命”のバトン』p140

 70%、81%という数字は多いでしょうか。
 比較してみましょう。

 ある料理専門学校では、入学してきた18~20歳代の生徒に一年間、調理技術を教えましたが、カップ麺、スナック菓子、ジュースの生活をやめて日常的に自分の食事を調理していたのは4%でした。

出典:『「ごちそうさま」もらったのは”命”のバトン』p140


 人生は、学校を卒業してからが、ある意味本番。
 学校の外に出たとき、”学んだことを活かせるか”が大事だと考えています。

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出典:『100年未来の家族へ ぼくらがつくる”弁当の日”5.7.5』p42

   次は、滝宮小学校で第一回「弁当の日」を経験した森さんが大学4年生になった時に書いた文章を紹介します。

自炊の日々

(森 佑樹  二十二歳)

 いま僕は大学四年生です。親元を離れて下宿生活を送っています。

 友人たちのなかには、朝ごはんを食べなかったり、菓子パンやカップラーメンを主食にしたり、外食したりして、ほとんど自分で食事をつくらない人もいますが、僕はふつうに自炊ができています。

(中略)

 手抜きすることもありますが、積極的に野菜をとるようにしたり、彩りでおいしそうに見せたり、旬の食材を取り入れたりして、晩ごはんはだいたい毎日自分でつくっています。

 最近では旬の食材はおいしくて安いという「食の金銭感覚」も身につきました。
 タンパク源に、高い肉よりヘルシーで安い豆腐を使ったり、レタスやキャベツのほかに赤や黄色の野菜も選んだり、いろいろ考えて買い物を楽しんでいます。

 親からは、お米や新鮮な野菜を詰めた宅急便がときどき届きますが、親も僕の自炊生活を喜び、自慢にも思ってくれているようです。

 料理ができるようになったおかげで、母や食堂のおばさん、米や野菜をつくる農家の人たちにも心から感謝できるようになりました。

 そういう気持ちがあると、少しぐらい嫌なことがあっても、すぐに立ち直って前向きに考えることができるのです。
 そんないまの生活の原点が「弁当の日」だと、自信をもっていえます。

出典:『弁当づくりで身につく力』p82-p84

 

「弁当の日」を学んだ子どもたちは、立派に成長しているようです。

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出典:『100年未来の家族へ ぼくらがつくる”弁当の日”5.7.5』p116

※写真は森さんではありません。

2.サラリーマンも「弁当の日」

 なんと、「弁当の日」を会社で実践された方もいます。
 2004年度に九州大学(大学生版「弁当の日」が活発な大学)農学部を卒業した馬淵崇さんです。

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 専らコンピ二弁当や出来合いのもので済ますことが多かった。 

 自分のデスクにじっと座ったまま、仕事の資料やインターネットを見ながら無言で食べる。
 まるで仕事の延長線上にある一つの「作業」のように、無機質な食事は20分ほどで呆気なく終わる。(中略)

 しかし、あるワークショップで「弁当の日」に出合うことになる。 初めて参加した「弁当の日」。

 他の参加者は知らない人ばかりだったが、ひとたびお互いのお弁当を食べ合えば笑顔が溢れ、会話も弾む。(中略)

 会社でもやりたい。
 自然に湧き出た感情だった。

 すぐに同僚に声をかけ、いよいよ「サラリーマン弁当の日」がスタートする。

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 やり方は、大学版「弁当の日」と同じく、一品持ち寄り形式。

 最初は少し照れくさかった。
 自分が作ったものを他人に食べてもらうということは、なかなか恥ずかしいことだ。

 それでも自分が作ったお弁当を「おいしい」と褒められたときは、仕事が上手くいった時以上にうれしい。(中略)

 「弁当の日」参加メンバーに、「弁当を作るときに意識していること」を尋ねてみた。

 ある社員は「冷めてもおいしいもの」を心がけているそうだ。

「取り分けやすい料理」や「メタボ対策の野菜中心ヘルシーメニュー」を意識している人もいれば、一人暮らしの独身社員を気遣い「懐かしい味の家庭料理」を作る人もいる。

 自分一人が食べる弁当ではなく、みんなで食べる弁当。そこにはたくさんの思いやりや優しさが詰まっていることを実感できる。

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 「サラリーマン弁当の日」を始めて3ヵ月たとうとしているが、その影響はさまざまな場面に出始めている。

 「普段業務上でしか接する機会がない方と、(飲ミュニケーション。以外で)プライベート的なコミュニケーションをとられるのが、とっても有意義。そこから発生するつながりが、仕事に役立っています」

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「父には味見をしてもらったり、母には調理方法のアドバイスを求めたり家族とのコミュニケーションも増えました」

 仕事や家庭においても多くのコミュニケーションを引き出している。
 午前中の仕事がどんなに辛くても、「弁当の日」が始まればかき消されてしまう。(中略)

 食を大切にすることは、人を、人生を大切にすることなんだなぁ。

出典:『弁当の日 食べ盛りの君たちへ』p90-p93

画像の出典は『サラリーマン弁当の日』:ゴーシ先生チャンネル

 私は高等学校に勤務することになってから、「ランチミーティング」をしていたことがあります。

 ミーティングと言っても、話す内容は公私混同しています。

 大人からも畏敬の念を抱かれる体育の先生が「ケーキ作ってきたわ」とチーズケーキを持ってくるなど、意外な一面が見られて楽しいものでしたよ。

3.「弁当の日」Q&A

「弁当の日」に興味を持った方の参考になるようなQ&Aを2つ紹介します。

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Q.私の子どもが通う学校には、「弁当の日」がありません。どうすればいいですか?
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A.

 子どもに家事の手伝いをさせましょう。
 台所仕事を手伝わせましょう。
 子どもが作ったものをおいしいと言って食べましょう。
 それで子どもは自己肯定感が高まるはずです。
 弁当の日と同じ効果が得られるはずです。

出典:『すごい弁当力‼』p136
※佐藤剛史さんの言葉です。

 『すごい弁当力‼』では、【みそ汁隊長】の例も紹介されています。
 
【みそ汁隊長】とは、朝のみそ汁を作る当番のことです。
 親と子が、ローテーションで順番にみそ汁を作るのです。

 健康に良い「みそ汁」を家族で作るなんて、素敵な取り組みです。

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出典:『できる!を伸ばす 弁当の日』p107

 弁当ではなく、家族のためにみそ汁を作る「みそ汁の日」もあります。

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Q.もし事故が不幸にして発生した時、責任はだれが、どのようにとるのですか。
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A.

 まず結論から言います。責任は誰もとれません。

 弁当の日、をスタートさせて1年たちました。全国で実践校は1000校
(2012年度末現在)を越えました。
 
 今のところ、弁当作りの最中の「指の切断」や「火災という「事故」の事例を1件も耳にしていません。

(中略)

 危険性のある “弁当の日”をなぜスタートさせるのかというと、小さなケガ
の経験は大きな事故を防ぐ力になると考えているから
です。
 
 小さな「痛い経験」から「もっと痛い経験」をイメージする力が育ち、あらかじめそれを避ける行動がとれるようになるからです。
 だから「失敗」が「事故」を減らすことになるのです。

(中略)

「失敗」体験を、「事故」を減らす力につなげるような指導に活用すればいいのです。それを親、教師、地域民の連携でするべきです。

出典:『「ごちそうさま」もらったのは”命”のバトン』p133-p135

 竹下先生は、「責任は誰もとれません」と明言されています。
 また、「小さなケガの経験は大きな事故を防ぐ力になる」という言葉も、本当にそのとおりだと思います。

 人間、失敗したことからの方が学ぶことが多いですからね。

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出典:スラムダンク

 イギリスの思想家、カーライルも「経験は最良の教師である」と言っています。

4.次回予告

 さて、次回は最終回です。
 最終回のテーマは、『未来へ』。

 「弁当の日」を2年経験したある男子児童は「自分一人で弁当を作れるようになりました」と言いました。

 しかし、「やはり自分一人では弁当を作れない」と気がつきました。

 いったいどういうことなのでしょうか?

 ご期待ください。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

続きはコチラです☆

トップ画像は、『100年未来の家族へ ぼくらがつくる”弁当の日”5.7.5』p88です。

引用した部分は、note上で読みやすくなるよう改行などを加えました。
また、太字にしたのも私です。

参考文献一覧は、こちらです(外部サイトにまとめてあります)

 

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