『森村誠一の侵略夫人』(1984年/土曜ワイド劇場) <2時間サスペンス感想>
隣りの団地妻を覗いたら…(サブタイトル)
監督 富本荘吉
脚本 北原優子
原作 森村誠一
出演 泉ピン子、結城しのぶ、伊藤孝雄、なべおさみ
<あらすじ>
マンモス団地に住む主婦がヒドい目に遭いまくる。
これは怖いドラマ。強姦魔のセールスマンに殺人事件など、怖いことしか起こらない。
そのなかでもメインとなるのは、泉ピン子がヒロインの生活に土足で踏込み、傍若無人に振る舞うホーム・インベージョン展開。これがターミネーターばりのしつこさで、ピン子が訪ねてくるたびに「ヒィッ!」と悲鳴を上げそうになる。
一方、本来は同情すべき被害者なはずのヒロインも殺人に関与しているのか否かがクライマックスまでボカされているため、視聴者に対しても煮え切らない態度を取り続け、こっちはこっちで信用し切れないのだから、観ているこちらはストレスフル極まりない。
ちなみに殺人事件はラストで唐突に解決。予想外の真相に「えーっ!?」と驚くこと必至だが、これを数分でサラッ~と流してしまうのが凄い。しかも、この真相を踏まえて、いくつかのシーンを思い返してみると、本作の怖くてイヤな部分が追加されるオマケ付き。
ここまでくるとイヤミスの<イヤ>要素がでかすぎる気もするが、「これ、最後はどうなるんだよ!?」と気になって、チャンネルを変えられない。観る者をグイグイと引き込む富本荘吉監督の演出が光る。
しかし、本作は単にイヤで怖い話ではない。噂話と陰口が飛び交う団地内の描写やクライマックスのヒロインVSピン子、そして、殺人事件の真相からは「人の本質は、表向きの一面や人づての評判、噂ではバイアスがかかり、決して捉えることはできない」というテーマが浮かび上がってくる。
40年前の作品とはいえ、これは今の時代にも十分通用するものだろう。