教会旋法(よく使うやつ)

前回の続き。

教会旋法は日本語では「なんとかア旋法」と書くが、英語では「なんとかan mode」である。ドイツ語では、英語のモードに相当する言葉もあるが、ドイツ語版のWikipediaによれば略して「なんとかisch」でいいらしい。読み方は「なんとかイッシュ」である。

それぞれの旋法の名前はギリシャにちなんだ地名から取られているので、基本固有名詞扱いらしく、頭は常に大文字らしい。ミクソは接頭語だが、これも先頭を大文字で書かれている。

フリギア旋法は英語では「フリジアンモード」で、ドイツ語は「フリギッシュ」のようだ。ロクリア旋法は英語ではLocrian mode、ドイツ語はcがkになってLokrischである。

そして日本語に輪をかけてややこしいのが長調と短調に相当するイオニア旋法とエオリア旋法である。イオニアは英語では「アイオニアン」である。ドイツ語ではイオニッシュ。

エオリアはドイツ語ではウムラウトを使ってÄolisch(読み方はほぼエオリッシュでいい)なので、英語ではAeolianになり、「イオリアン」もしくは「イーオリアン」らしい。スーパーのイオン、あるいは英会話のイーオンのどちらかで、少なくとも「エオリアン」ではない。

そして、主音に相当する音を付けてD Dorischのように書くのが普通のようだ。これは実音で書けば D E F G A H C D という音階を示す。C Dorischならば C D Es F G A B C である。

実音はドイツ語で書くことが多いので、以後はドイツ語をカタカナ書きして通そうと思う。細かいことをいうと短調っぽいのは音名を小文字で書くように見えるが、面倒なので全部大文字始まりで書くことにする。そういえばカタカナ音名と教会旋法の組み合わせは見たことがないかもしれない(ニ短調とは言うけど、ニドリア旋法は聞いたことがない)。

Dドリッシュはd mollに比べるとフラットがひとつ少ない。Cドリッシュはc mollに比べるとフラットがひとつ少ない。AドリッシュはA H C D E Fis G A となり、a mollよりシャープがひとつ多い。つまり、基本的に短調の響きに聞こえるが、シャープ1個分だけ長調に寄っている。和声的短音階と比べるとシャープの位置が入れ替わっている。

また、旋律的短音階(上行)に比べるとソがシャープになっておらず、旋律的短音階の上行ほどの突き進む感じはない。これは旋律的短音階の導音だったGisがGになったことで、主音への圧力が減ったせいもある。

教会旋法自体、そんなに見るものでもないので、調べたことはないし、正しいお作法なども分からない。が、臨時記号だけで転調する楽譜がそこそこ普通にあることを考えると、記譜の可能性は3パターンだと思う。

ひとつは例えば元がa mollの曲の一部がAドリッシュの場合で、この場合は臨時記号でFをFisにするのが楽だろう。移動ドで読む場合はa mollのまま突き進むのが楽だ。つまり、Aから「La Ti Do Re Mi Fi So La」と読む。

もうひとつは例えばC durの曲の一部がC ドリッシュになっている場合で、この場合はHとEに臨時記号を付けてB・Esにするのが楽だろう。移動ドで読む場合はC durのまま突き進み、Cから「Do Re Me Fa So La Te Do」と読むのが楽だと思う。

最初から最後までドリッシュの場合、調号で臨時記号が付かないようにするのが楽だろう。Dドリッシュなら調号なし(C durと同じ記譜)になる。これはDから「Re Mi Fa So La Ti Do Re」と読むのが楽だ。

こんな感じで、教会旋法を移動ド読みする場合は記譜に合わせて臨機応変に対応する方がよい。そうすると同じ旋法でもだいたい3通りの読み方ができてしまう。主音がどこなのかということと、他の人は違う方法で読んでいるかもしれない、というのは押さえておいた方がいい。

リディッシュ・ミクソリディッシュもよく見る方である。

リディッシュは F G A H C D E F だから、F durに比べてフラットがひとつ少なく、ファがシャープになる。CリディッシュにするとFがFisになり、C D E Fis G A H C になる。長調よりもシャープが多いので、もっとはじけた感じの音階になる。短調と比べるとシャープ4個分多いので、c mollの中にCリディッシュが入る場合、転調扱いにしない場合はC dur以上にシャープが付く。

ミクソリディッシュは G A H C D E F G なので、G durに比べてシがフラットになる。Cミクソリディッシュは C D E F G A B C である。長調に比べるとフラットがひとつ多く、短調に比べるとシャープが2個多いので、やはり長調と短調の間の響きになる。ドリッシュよりもフラットがひとつ少ないので、ドリッシュよりも長調に近い響きになる。

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