「防災」から「サバイバル」への転換戦略
地域のブランディングに関わるお話をします。
東日本大震災から、10年が経ちました。
当事者でない私がどんな言葉にしても、軽い言葉になってしまいますので深くは語りませんが、私にとっては、何が起こるかわからない世界で生きていることを実感する出来事でした。
そして、日頃の何気ない一瞬を大切に感じることができるようになったきっかけともなっています。
今被災地では被害を忘れないように、ということで、自治体が先頭に立って色々な遺構を残したり、民間企業が語り部などのツアーを実施していますね。これは被害にあった当事者感情として様々な議論はあるでしょうが、自然の恐ろしさを後世に学びとして伝えることは、とても大切なことだと思います。
ただ、個人の感覚として、少し違和感が残るのが、震災に合わせてよく見かける「防災」という言葉です。
もう少し詳しく言うと、防災そのものの必要性に疑義を感じると言うことではなく、「防災ツーリズム」というワードを使って、被災地へ人を呼び込もうとする動きに対しての違和感です。
例えば、広島の原爆ドーム、沖縄のひめゆりの塔、ドイツのアウシュビッツ収容所など、これらも遺構として残って実際に観光地の1つなっていますが、これらはあくまで「人の過ち」を後世に残すことで、未来の人間が同様の過ちを犯さないように、いわば教育目的として存在意義があると理解しています。
これに対して、地震に関しては自然災害です。これがいかに危険か伝える。大事なことではありますし、これも教育目的ということは間違いない。しかし、その加害の発生プロセスに人為的なものは介在していない。
考え方もクソもない、起きちゃったら終わりなわけです。落雷事故に対して、防雷なんて概念はなく、あるのは避雷です。鳥のフンが頭に落ちてくることに対して、防フンなんて概念はありません。どちらも、被害にあった際、運が悪いというニュアンスの方がしっくりくるのではないでしょうか。
それなら、個人のコントロールの余地を残す「リスクマネジメント」ひいては「サバイバル」という単語を使った方が、私は地域のブランディングに資するのではないかと考えています。
極論で言えば、津波の場合、防災なんて言われても、津波が来たら逃げるしかないのですから、そこで学びは完結して終わりです。突き詰めれば、家を建てる場所を考えましょう、と言うところまで行き着きます。
しかしそれでは、地域に誘客する要因にはならないでしょう。少なくとも、津波の被害を受けた場所で「防災ツーリズム」と言われても、そもそも学びは「津波が起きたら逃げる」しかないのですから、貴重なお金と時間を費やして学びに行きたいと思う人はほとんどいないのではないかと思います。
では、どうすれば良いか。私の考えるストーリーはこうです。
そもそも、我々は平和安全な生活に慣れすぎていて、明日死んでもおかしくない世界にいることを忘れて、完全にコントロールできる前提で考えています。しかし、歴史的に見て、気候変動も、海面上昇・降下も、地殻変動も一定のタイミングで起きているのは明らかで、我々は地球に「生かされている」というのが真実なのです。
それを理解した上で、受け身ではなく前向きに、リスクを防ぐのではなく、可能な限りでリスクをコントロールできる能力を鍛えていく。守るのではなく攻める能力を身につける。例えば、
・電気水道ガスが使えなくなったら、どうやってご飯を作れば良いか?
・布団がない場合、少しでも暖かく睡眠をとる方法は?
・避難場所まで辿り着くために、日頃から備えておいた方が良い筋力は?
・スマホが使えなくなったら、どうやって意思疎通すれば良いか?(モールス信号など)
こういったテーマを中心として地域をブランディングしていくことができれば、震災で被害を受けた、という唯一無二の経験値を、(世界に対する)観光客に対する誘引力に変換していけるのではないか、と考えています。
この点、今ブームとなっているアウトドアにその片鱗があると考えています。これは「コロナウイルスと言う未知の病原菌」というリスクと「病原菌がある中でいかにして余暇を楽しむか」(生存よりは上位ではあるものの)サバイバルがリンクしたものだと考えています。
この流れで「サバイバルツーリズム」と言う単語が生まれてこないのが、個人的には非常に不思議です。(なんでもかんでも「ツーリズム」と言う名前をつけたがるのは、あくまで仕掛け人側であり、観光客には知ったこっちゃない話ですが)
そこまで考えているかはわかりませんが、自治体としてスピード感を持ってキャンプ場整備などのアウトドア支援施作を実施できているところは、当該部署に優秀な方がいらっしゃるのだと個人的には思います。(自治体も結局は、中にいる人なので、自治体=優秀な組織ではありません。評価は属人的です)
もし私が判断権者であれば、民間企業と組んで、自治体職員全員に一定のサバイバル訓練を受けさせ「世界一災害に強い自治体組織」として、日本ではなく、対世界に情報を発信します。
さらに、民間企業の力を借りて、一般住民向けにも春夏秋冬ごとに講習会を開催して、平均的なアウトドア力を高めるとともに、街全体を、世界一アウトドア力(サバイバル力)が高い街としてブランディングしていきます。
最後は単なるアイデアを書き殴りました。すいません。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
ひとりシンクタンク