見出し画像

雑記76 ある臨終の人の言葉、"不安の多くは実現しなかった"

雑記76 ある臨終の人の言葉、"不安の多くは実現しなかった"



文字数 1600




イギリスの首相を務めた経験がある チャーチル が書いた「第二次世界大戦」と言う本を昔読んだ。

その本の中で自分の印象に残っている記述がある。



この記事を書くにあたって、該当の正確な引用をしたいと思って該当箇所を探してみたのだけれども、分厚い本で、なかなか該当箇所を見つけることができなかった。

そのため自分の記憶に頼って、その文言について思うところを書いていきたい。



チャーチルは第二次世界大戦勃発後、首相に任命され、イギリスの政権運営を担うことになった。

イギリスはドイツと交戦中であり、ドイツの豊富な戦力によって、ドイツが近々イギリス本土に集中的に攻撃を仕掛けてくるのではないかということが懸念されていた。



いつ、その集中攻撃が来るかわからず、またどの地点から攻撃が来るかもわからない。

そのためチャーチルはイギリス国土、特にブリテン島の周囲の数多くの場所に対して防御の備えをあらかじめしておく必要に迫られた。

チャーチルの心の中では、多くの不安要素が脅威として存在しており、数多くの、もはや無数といっていい心配事があった。





そうした政権運営をしている日々の中で、チャーチルはある老人の臨終の場面に立ちあったらしい。

その老人は長い生涯を終え、親しい人々に囲まれ、臨終の時を迎えようとしていた。
チャーチルはその場において、その老人が話す言葉を聞き、印象深くその言葉を記憶に刻んだらしい。



その老人の語った言葉は以下のような意味の内容である。




「私は自分の人生の中で実に多くの心配事を抱えていた。人生のいろいろな時期にそれぞれの不安を抱いていた。
将来これこれの事が自分の身に降りかかるのではないか、ということで先々のことを不安を持って予期し、心配を抱いた。
実に多くの心配と不安が私の心の中に数多く存在していたのである。心配事を常に抱えながら生きたと言っていい。」

「そして今私は臨終の時を迎えようとしている。
今自分の一生を終えようとしている私の目からすると、私が一生の中で心の中に抱いてきた不安と心配の大部分は、結局実際に私の身の上に降りかかってくる事はなかった。
私の長く抱いていた心配と不安の多くは私の頭の中、私の心の中にしか存在しないものだった、ということを私は今この臨終の時に一つの感慨として、そういう感想を抱いている。」




正確な引用ではないが、チャーチルの本を読んで、自分が理解した通りのことを自分の言葉で記述すると以上のような具合になる。


チャーチルは政権運営にあたって実に多くの心配事と不安、懸念を抱いていた。そうした最中に、耳にしたこの言葉はチャーチルの心に強く刻まれたようであった。

こうした事柄は、この出来事について書かれた文章を読んだ自分の印象にも強く残った。




自分の心の中にもいろいろな心配事や不安が実に多く存在している。今も存在しているし、昔も存在していた。


しかし、考えてみると例えば15年前に自分が心配し不安に思っていた事は今はもはや自分は意識して思い出そうとしなければほとんど忘れている。


15年前に自分が心底心配し、不安に思っていた事は、15年経った今になって点検してみるとほとんど夢や幻のような物のように感じられることさえある。


心配や不安は適度に抱くことは危機回避に必要で有意義なことに自分としては思っているが、それが過度になることは害をもたらすように思う。


自分はこのチャーチルの耳にした、老人の隣の言葉を時折、自分自身に言い聞かせるべきだと感じている。

この言葉を一つの教訓深いものとして自分は感じており、時折それを思い起こしておきたいと思っている。



ここまで

いいなと思ったら応援しよう!

OndokuAikouka(音読研究×小林秀雄散策)
記事をお読み下り有り難うございました。OndokuAikoukaと申します。よろしければサポートをお願いいたします。🙇いただいたサポートは、クリエイターとしての活動費や勉学費用に使わせていただきます。(書籍、文具、機械類など)どうぞ応援のほど、何卒よろしくお願いいたします。