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雑記29 松井秀太郎さん、情熱大陸、ジャズトランペット、マギのモルジアナ

文字数目安:2500〜2700

最近、テレビ番組の情熱大陸で、ジャズトランペット奏者の 松井秀太郎さんが紹介されていて、とても興味深く感じ、何度か繰り返し視聴した。

視聴後も、不思議とその内容が心に浮かび上がってくるので、自分のための記憶のためのノートとして、思い浮かぶ言葉をここに記録しておきたい。





松井秀太郎さんについては筆者はそれまで何も知識がなかった。
近頃、漫画・ブルージャイアントを複数冊読んで、トランペット、サックス、ジャズという単語に アンテナを急に張り出したため、視聴するに至った。

(ブルージャイアントについては、1部、2部、3部から1〜2冊ずつという飛び飛びの読書で、それでも目覚ましい面白さを感じた。アニメ映画版は、1部を描いたものだと筆者は認識している。)

1部→BLUE GIANT
2部→〜Supreme シュプリーム
3部→〜Explorer エクスプローラー
4部→〜Momentum モメンタム





松井秀太郎さんは、順風満帆な道を歩んできた人ではないらしい。
現在20代の方だが、10代の時にジェンダーの問題で、煩悶を抱えるようになり、学校に行けなくなってしまったらしい。煩悶を抱いて身動きの取れない、自己の内面を見つめるしかない時期に、ものごとの垣根の少ないジャズの世界に心が惹かれるようになっていき、(それまではクラシック音楽を専門にしていたが) それから ジャズトランペットの演奏に没入するようになっていったと番組の中では紹介されていた。

(当時同居していた松井さんの祖父母の御二方が、松井さんの良き理解者・見守る人たちとして傍に居続けてくれたことが番組では紹介されていた。当時子ヤギだった"コメコ"さん(今は成熟している。) との交流も心の支えになったようであった。)





上記の松井秀太郎さんの煩悶を伴う心の旅の話は筆者の心に強い印象を残したのだが、それと同時に印象深く記憶されたのは、松井さんの「息のコントロールの実演」の場面の映像であった。

松井さんは、以下のような趣旨のことを話していたように筆者は認識している。

「自分のトランペットの奏法は、ダーツをする感覚に似ている、と感じている。
演奏時、喉や口から息を吐き出すが、その吐き出した息が、前方に飛んでいって、トランペットの どの部分にヒットするか (ここがダーツが的のどの位置に刺さるか、というのと松井さんの感覚の中では似通っているらしい。) 、 それを 工夫することで、トランペットの音程操作を司るバルブを操作しなくても 複数の音程を出すことができる。
音を高く出したければ 吐く息をトランペットのある場所にヒットするように放出し、音を低く出したければまた別の場所にヒットするように放出する。」





筆者は、トランペットなど吹く楽器について疎いため、その技術がその界隈の中でどのくらいの水準なのかわからないが、素人の目でその松井さんの実演を見て、「こんなことが可能なのか!」と驚いた。

無造作に話し、無造作に実演する松井さんの様子を見ていると、「自分自身の体や心の動き方を長い時間をかけて観察してきた人なのだな。一人で自己を見つめ、観察する時間を沢山積み重ねてきた人なのだな。」ということを筆者は感じる。





それにしても、番組内の松井秀太郎さんのトランペットの音を聴いていると、トランペットの音というのはこんなにも良いものか、と思い、これから松井さんの演奏を中心に、聴く機会を増やしたいと筆者は思っている。

昔、エフゲニー・キーシンの演奏する、リストの「愛の夢」を聴いて、「こんなにもピアノ演奏を聴くのは嬉しい気持ちになるものか」と思い、それから次第にキーシンの演奏音源を中心に楽曲を求めるようになったが、なんとなくその時のことを思い出す。




松井さんは、次第に活躍の場が広がり、番組内では、アメリカで現地のミュージシャンとのレコーディングを行なっていた。
昔、煩悶していた頃には何かとエネルギーの不完全燃焼状態だったであろうが、今は存分に外に向けてエネルギーを放出できるようになっているようであった。

平たく言うと、どんどん感覚や感情、考えを共有できるジャズ仲間が増えていくサイクルに入っているようであるが、そうした姿を見ていると、昔読んだ「マギ」という漫画の「モルジアナ」というキャラクターを筆者は思い出す。

漫画・マギの モルジアナは奴隷として売られた少女で、不遇の身となるが、次第に良い出会いに恵まれて自由の身となる。
しかし、自身の民族の仲間は皆、滅びているようで、「同じ種族の仲間にはもう会えないものなのか」と思っていたが、実際はそう多くはないが同族の仲間は確かに残存しており、漫画の物語が進む内に、ある時に急にまとまった人数に遭遇して、驚いたり喜んだりする、という話に進む、と筆者は理解している。

この「自分にとって同質の人間に中々巡り会えない」という状態から、「同質の人間に急に次々遭遇する」という状況は、他の人の境遇や人生の物語を聞いていると時折見かけるものだ、と感じている。
自分は「モルジアナを連想する」と内心感じることが多々ある。





ブルージャイアント・漫画の 2部の2巻に、 主人公ダイについて、楽器店の店主・ボリスがこういうことを言う。

  • 引用 「彼が何を思っているかなんて何もわからない。ただ、彼が"真剣"なのは分かりました。
    何かに対して"必死"で、とても"真剣"なんだというのは、すぐに分かりました。英語で言ったら、Seriousということになるのかな。
    Seriousさは目に現れるんですね。先日も彼のCDを聴きましたが、目に出るものは音に出るのかな。
    思えば、初めて聴いた日から今日まで、彼の音はいつだってSeriousなんだ。」

    (ブルージャイアント Blue giant 作者:石塚真一  
    2部相当の BLUE GIANT SUPREME の2巻、巻末の"ボーナストラック"より、 ハンブルクの楽器店主 ボリスの台詞から。)


松井秀太郎さんの演奏にも、そうした"Seriousさ"というものがあるのではないか、と期待している。

ジャズ界にアンテナを張っている人ならもっと前に知っている方かもしれないが、自分は情熱大陸を見なかったら当分知る機会が無かっただろうと思う。とても良い番組を観ることができたと感じている。
情熱大陸の製作スタッフの方達に対して感謝を念を抱いている。


■ ここまでです。

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