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【エヴァ考察】 アダムが登場しない理由

今回は新劇場版アダムについてこれまでとは異なる視点から考察してみました.新劇場版にもアダムは存在したと考える立場からの考察になりますが、そうでない方にも興味深いものになることを願います.
以下、旧作(TVシリーズ及び旧劇場版)は○話として参照元を示します.ただし25話’は『Air』、21話’は劇場公開後に増補修正されたバージョンを指します(詳しくは末尾の記事参照).

1.アダム計画

話を旧作のアダム計画から始めます.本編では次の台詞にのみ登場します.

(14話C-0126)
冬月「アダム計画はどうなんだ?」
ゲンドウ「順調だ.2%も遅れていない」

(1)ネルフ3大計画
知らない方のために簡単におさらいしますと、『エヴァ』にはネルフ3大計画(人類補完計画、アダム再生計画、アダム計画)というものがあり、アダム計画はその1つでした.各計画をざっくり一言で説明するなら以下のようになります.

・人類補完計画
ミサト「出来損ないの群体として既に行き詰まった人類を完全な単体としての生物へ人工進化させる補完計画」(25話’C-43,44)

・アダム再生計画
アダムのコピー、エヴァンゲリオンを建造する計画(通称、E計画)

・アダム計画
オリジナルのアダムを復元する計画

(2)アダム計画の行く末

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そのアダム計画ですが、セカンドインパクトで卵にまで還元されたアダムさんを利用したものになります(25話’C-303).その体は胎児まで復元することに成功し、サルベージされた魂は渚カヲルに宿ります(24話’).

そして胎児アダムは加持が持ち出しゲンドウに渡り、彼の右手に移植されます.詳細は省きますがゲンドウに流れたことはゼーレの計画にそぐわないものでした.

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(14話C-0123)
ゲンドウ「切り札たる物は全てこちらが擁している.彼らは何もできんよ」
(25話’C-102)
ゲンドウ「リリス、そしてアダムさえ我らにある」
冬月「老人たちが焦るわけだ」
※「彼ら」「老人たち」はもちろんゼーレのこと

台詞からは,復元アダムも補完計画の切り札に位置付けられているように読めます.そしてそのゼーレの計画とは異なり,アダムに関して彼らはコントロールできていなかった.このことを念頭に置いて次に進みます.



2.新劇場版へ

(1)アダム計画がない?
さて、新劇場版に話を移します.旧作と異なり,上記3大計画のうち人類補完計画とE計画は確認できますが(下記画像や台詞)、アダム計画は確認できません.

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(序C-0140)リツコ「技術局一課、E計画担当責任者、赤木リツコ」

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ちなみにプロジェクトエヴァンゲリオン=E計画です.新劇にアダム計画がないこと.アダム再生計画ではなくE計画あるいはプロジェクトエヴァンゲリオンと呼称されることについて、いずれも新劇にアダムが存在しないとする立場からは自然といえます.では,新劇にもアダムは存在したとする立場から筋の通った解釈はできないか.

(2)ゼーレは考えた
例えば次のように考えられないでしょうか.

前の世界ではことごとくゲンドウに裏切られてしまったゼーレ.ゲンドウにオリジナルアダムの体を独占されてしまいました.同じてつは踏まないと新劇場版では策を講じます(一応ここでは新劇のゼーレは、ネブカドネザルの鍵を使ったゲンドウが旧作の出来事を認識できたのと同様の能力を持った存在ということを前提にします.詳細はまたの機会に).

そのゼーレの策とは、あらかじめアダムをゲンドウの手の届かないところに避難させることだった.それがセカンドインパクトだったと考えられます(詳しくは下記リンク).つまりインパクトによって南極のアダムを白き月ごと宇宙に飛ばしたというものです.こうした理解は次の台詞につながります.

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(破C-0302,0303)冬月「月面のタブハベースを目前にしながら、上陸許可を出さんとは.ゼーレもえげつないことをする」

どうしてこのとき上陸させなかったのか.上の理解を踏まえれば、ゼーレの措置は当然なのです.アダムをゲンドウらから遠ざけるために地球外に避難させたのですから、これ以上彼をアダムに近づけたくないわけです.月面の巨人をアダムとするとこのように理解できます.

(破C-0203,0204)
加持「で、いつものゼーレ最新資料は先ほど——」
冬月「拝見させてもらった.Mark.06建造の確証は役に立ったよ」

Mark.06の存在すらネルフに隠そうとしていたことが伺えます(加持からゲンドウらに漏れることは承知でしょうが).

こうなってくると、セカンドインパクトの意味合いが旧作とは異なってきます.旧作では使徒が目覚める前にアダムを無力化することに1つ目的がありました(次の台詞).

(25話’C-304A)ミサト「15年前のセカンドインパクトは、人間に仕組まれたものだったわ.けどそれは、他の使徒が覚醒する前にアダムを卵にまで還元する事によって被害を最小限に食い止める為だったのよ」

しかし,新劇では人類補完計画の一環である海の浄化に加えて、アダムをゲンドウから遠ざける目的もあったのではないか.今度はしっかり自分たちの管理下におこうということだったりしちゃったりしないか.



3.シン・アダム計画

(EO#15-1)ゲンドウ「計画の全てはリンクしている.問題はない」

上述のネルフ3大計画は相互に密接な関係にあるため、具体的にどれがどの計画の成果なのか判別し難いですが、上述の通り少なくともオリジナルアダムの体の復元=胎児と、魂の復元=渚カヲルはアダム計画の成果なのでしょう.

これを参考に新劇のアダム計画を考えると、アダムの体はMark.06、魂は渚カヲルと考えられます.新劇の補完計画も謎ばかりですが、両者とも計画に利用されたようです.カヲル君はシンジ君を13号機に乗せて2本の槍を確保すると同時に同機体を覚醒に導き、黒き月を復活させます.Mark.06については空白の14年、サードインパクトの際に活躍したのでしょう.

(Q・C-1096)
カヲル「自律型に改造され、リリンに利用された機体の成れの果てさ」

以上から、新劇場版でアダム計画が登場しないというのは、存在したけれどもネルフの計画に含まれていないということであり、それはゼーレが旧作を反省した結果はじめからネルフとアダムを切り離し、ゼーレ主導のもと秘密裏に進めるためだった.このようにまとめられそうです.

そしてアダムが登場しないのはアダム計画がネルフから取り上げられていたため、ということになるのです.ひたすら隠される存在だったのであり、存在しなかったわけではない.アダム計画は人類補完計画に必要という設定自体は新劇場版にも変わらずあった.このように考えられないでしょうか.

今回は以上になります.最後までお読みいただきありがとうございます.


記事内の略語については以下を参照ください.

新劇アダム問題,一応結論が出ました.

Mark.06の正体につき他説の可能性.

画像:©khara/Project Eva.

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