小学生でもわかるビジネス書要約〜イシューからはじめよ編〜
こんにちは。おなつです。
前回のビジネス書の要約が少し好評だったので、またやってみようと思います。今回の題材はロジカルシンキング・問題解決のバイブル、こちらです。
イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」(著:安宅和人)
ヤフーでCSO(最高戦略責任者)として活躍する著者が、問題設定やそれに対する解決法を書いています。
また、前回の記事は以下になります。
前回のThe Modelに比べると横文字の専門用語は少なく、図解が多々ありますが、内容量としてはやはり一筋縄ではいかない様子です。
ということで、今回も小学生でも分かるような、ビジネス横文字を一切排して本書を要約してみたいと思います。
お子様にイシューからはじめてもらいたい人は必見です。
著者について
著者は脳神経科学を研究していたことから、至るところに科学を使った例えを使っているのが面白いです。
ビジネスだけの話だと混乱してしまう部分も「脳神経科学では〜」「有名なサイエンスの例では〜」という説明で、感覚を掴みやすくなりますね。
要約
そもそもイシューとは?
issue とは直訳すると「問題」「論点」「発刊」という意味になります。
ここで著者の定義するissueは、以下の2つです。
①2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
②根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
序章:常識を捨て、犬の道に踏み込まない
まずは「常識を捨てること」が何より大事です、その上で、本書における代表的な考え方を提示してくれています。
「問題を解く」より「問題を見極める」
「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
「知れば知るほど知恵が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」
「1つひとつを速くやる」より「やることを削る」
「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」
また、「バリュー(価値)のある仕事とは何か」を以下で示しています。
イシュー度:自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ
解の質:そのイシューに対してどこまで明確に答えが出せているかの度合い
イシュー度と解の質が高いものが「バリュー(価値)のある仕事」です。
ただし、「一心不乱に大量の仕事をして右上(バリューのある仕事)に行こうとする」のはいけません。労働量により上に行き、左回りで右上に到達しようとするアプローチを著者は「犬の道」と呼んでいます。
根性に逃げて「犬の道」を辿ったとしても、自身だけでなく部下や周りにもそのやり方でしか仕事を教えられなくなります…
犬の道とは反対の、右回りのアプローチをすべきなのです。それには対象をイシュー度の高い問題に絞ることが大事です。
月〜金曜日の5日間で、「イシューからはじめる」アプローチをした場合の課題の進め方が以下になります。
このサイクルを「素早く回し、何回転もさせる」ことが重要です。ここからは上記の図に沿って各章ごとに説明していきます。
第1章:イシュードリブン 〜「解く」前に「見極める」〜
「犬の道」に入らず生産性が高い人は、問題を解く前にイシューの「見極め」をしています。見極めるための4つのポイントを以下に解説します。
1.仮説を立てる
2.よいイシューの条件
3.イシュー特定のための情報収集
4.イシュー特定の5つのアプローチ
まずは仮説(1)を立て、情報収集(3)をおこない、よいイシューの条件(2)を踏まえながら、イシューを特定(4)していきましょう。
1.仮説を立てる
見極めをするには仮説を立てることが必要です。理由は以下の3点です。
A.イシューに答えを出すことができる
→ 具体的なスタンスをとって仮説に落とし込むと、答えを出し得るイシューになります
B.必要な情報・分析することがわかる
→ 仮説があると、どの程度の議論をして答えを出すべきか明確
C.分析結果の解釈が明確になる
→ 仮説があると、出てきた結果が十分かそうでないかを解釈できます
また、自身や関わるチーム内の誤解や、認識のズレ、ムダを生むのをふせぐためにも言語化は非常に重要です。言語化のポイントは以下3つです。
ポイント1.「主語」と「動詞」を入れる
→ 言葉がシンプルになります
ポイント2.「WHY」より「WHERE」「WHAT」「HOW」
→ 「WHERE」は「どちらか、どこを目指すべきか」
→ 「WHAT」は「何をおこなうべきか、何を避けるべきか」
→ 「HOW」は「どうおこなうべきか、どう進めるべきか」
→ 「WHY」(〜はなぜか)よりも、答えを出しやすくなる
ポイント3.比喩表現を入れる
→ 相手の知識を使って表現するので、理解を得られやすい
(ちなみにこれは私が感動した比喩表現のツイートです)
2.よいイシューの条件
よいイシューは以下の3つの条件からなります。
条件1:本質的な選択肢である
→ 「AかBどちらなのか」という、結論によって大きく意味合いの変わるもの
例. コンビニで唐揚げが売れないのは、唐揚げの商品力がないのか、コンビニの販売方法がよくないのか
条件2:深い仮説がある
方法2-A.常識を否定する
→ 一般的に信じられていることの中で、否定できるあるいは異なる視点で説明できるものがないか
→ 例.天動説/地動説
方法2-B.新しい構造で説明する
→ 以下のような発見は、相手にインパクトを与える仮説を設定できる
→ 共通性の発見 / 関係性の発見 / グルーピングの発見 / ルールの発見
条件3:答えを出せる
→ 条件1、2を満たしても、「答えが出せない問題」ならよいイシューではない
→ 現在ある手法や工夫で、そのイシュー(問い)に求めるレベルの答えが出せるかに注目
条件2 の 方法2-Bについて、人間の脳神経は「これまであまり関係していないと思っていた情報の間に繋がりがあると、脳が大きなインパクトを感じる」ようにできていると言います。
そのため、以下の4つの発見ができると仮説のインパクトを高めます。
3.イシュー特定のための情報収集
イシューを特定するためには、テーマ・対象について「考えるために材料をざっくりと得る」ことが大切です。
時間をかけ過ぎずに大枠の情報を集め、対象の実態についての肌感覚を持ちましょう。細かい数字よりも全体の流れ・構造に着目することが大事です。
情報収集のコツは以下の3つです。
コツ①:一次情報に触れる
→ 現場で何が起こっているかを見て、肌で感じないと理解できないことは多い。
コツ②:基本情報をスキャンする
→ 得た情報の数字・問題意識・フレームワーク(枠組み)を、ダブりなくモレなく、素早くスキャン(調べる)
コツ③:集め過ぎない・知り過ぎない
→ 情報収集の効率はどこかで頭打ちに。情報がありすぎると、知恵も出なくなる。
また、一次情報とは誰のフィルターも通っていない情報のことを指します。
4.イシュー特定の5つのアプローチ
イシューの発見が困難な場合、以下の5つのアプローチが有効です。
アプローチ①:変数を削る
→ 関連要素が多くて複雑な場合、「変数を削る」もしくは「固定する」ことで、見極めるポイントを整理する。
アプローチ②:視覚化する
→ 人間は目で考える生き物。視覚化することで本質的なポイントが明らかになる。
アプローチ③:最終形から辿る
→ 見極めなければならないイシューを最終形から逆算して考えることで、構造化できる。
アプローチ④:「So What?」を繰り返す
→ 「So What?(だからなに?)」を繰り返すと仮説がどんどん具体的になり、検証すべきイシューが磨かれる。
アプローチ⑤:極端な事例を考える
→ 要素や変数が入り組んでいる場合、極端な事例をいくつか考えるとカギとなるイシューを探りやすくなる。
アプローチ④について、トヨタ自動車の「なぜなぜ5回」(問題の原因究明のために何度も「なぜ?」を問いかえて問題の核心を探る手法)も同じです。
表面に表れている事実を「だから何、なぜ? 」と問い続け掘り下げることで問題の本質をあぶり出し、真の原因を明らかにすることができます。
第2章:仮説ドリブン①〜イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
イシューの見極めをした後は、「解の質」を高める必要があります。解の質を高め、生産性を大きく向上させる作業が「ストーリーライン」づくりと「絵コンテ」づくりです。この2つを合わせて「イシュー分析」と言います。
「ストーリーライン」づくりには2つの作業があります。
STEP1:イシューを分解する
大元のイシューを、答えの出せるサイズのイシュー(サブイシュー)まで、「ダブりなくモレなく」・「本質的に意味のある固まり」で分解します。
STEP2:分解したイシューに基づいてストーリーラインを組み立てる
分解したイシューの構造を踏まえ、最終的に言いたいことを伝えるために、どのような順番でサブイシューを並べるのかを考えます。
たとえば、典型的なストーリーの流れは以下になります。
①必要な問題意識・前提となる知識の共有
②カギとなるイシュー、サブイシューの明確化
③それぞれのサブイシューについての検討結果
④それらを統合した意味合いについての整理
また、ストーリーラインにはの2つの型が存在します
1:「Why」の並び立て
→ 最終的に伝えたい主張をWhy(なぜ?)で並列的に理由づける方法
→ 重要な要素を「ダブりなくモレなく」選ぶ必要がある
2:「空」「雨」「傘」
→ ストーリー作りの基本形。最終的に言いたいこと(傘)を支えるという構図。
「Whyの並び立て」「空・雨・傘」ともに、最終的に伝えようとしていることを、いくつかのサブ的なメッセージで支える構造です。
第3章:仮説ドリブン②〜ストーリーを絵コンテにする〜
絵コンテづくりには3つのステップがあります。
STEP1:軸(分析の縦軸と横軸)を整理する
→ 「〇〇について調べる」ではなく、「どんな軸で、どんな値をどう比較するか」を具体的に設計
STEP2:イメージを具体化する
→ 具体的な数字を入れて分析・検討結果のイメージを作る(数字が細かければいいわけではない)
→ 「比較による結果の違い」を明確に表現できているかが重要(差がある/変化がある/パターンがある)
STEP3:方法を明示する
→ 分析手法と情報源を明示しておくと、より信頼度の高い分析になる
定量分析には主に「比較」「構成」「変化」の3つの型があり、それらを組み合わせることでデザインイメージも変わってきます。
また、STEP2のイメージの具体化において重要な「比較による結果の違い」とは、以下の3要素(差、変化、パターン)になります。
これは最終的な結果のイメージを想像で埋めていくプロセスです。「こんな結果がほしい」と思いつつ、楽しむことがコツです。
また、データがとれてから分析をするのではなく、予めどんなデータがほしいのかについてストーリーラインをもとに整理しておくことが必要です。
第4章:アウトプットドリブン〜実際の分析を進める〜
次は作成した絵コンテを分析していきます。ここでは以下3つを説明します。
①:アウトプットを生み出す前の大事なポイント2つ
②:トラブルのさばき方2つ
③:軽快に答えを出す
①:アウトプットを生み出す前の大事なポイント
ポイントは以下2つです。
ポイント1:いきなり分析や検証をはじめない
→ 結論や話の骨格に大きく影響するサブイシューから手をつけ、「本当にそれが検証できるのか」の答えを出す
→ それが概ねストーリーのカギとなる「前提」と「洞察」の部分になる。
→ この検証が終わったあとは、バリューが同じくらいなら早く終わりそうなものから手を付ける。
ポイント2:答えありきではない
→ 自分に都合のいいデータばかり持ってくる「答えありき」の姿勢ではなく、常に「フェアな姿勢」で検証する
特にポイント1に関しては、「前提」と「洞察」を先に検証しておかないと、描いていたストーリーが根底から崩れた場合にどうしようもなくなります。
②:トラブルのさばき方
アウトプットを進める上でトラブルはよく発生しますが、「正しくトラブルをさばく」ことが重要です。2つのトラブルのさばき方を解説します。
トラブル1:ほしい数字や証明が出ないとき
方法1.構造化して推定する
→どうやったら求める値が出るのか、どんな構造に分けて組み合わせれば出せるかを考える
方法2.足で稼ぐ
→フットワークで情報・データを集めまくる
方法3.複数のアプローチから推定する
→重要な数値の規模感が分からないときは、複数のアプローチから計算して値のレベルを知るやり方もある
このようなアプローチ方法を知っていると、重要な数値に関するざっくりとした試算もできるので、間違いを起こすリスクを減らすことができます。
トラブル2:自分の知識や技では埒が明かないとき
方法2-1.人に聞く
→最も簡単な方法。経験者に聞けば、かなりの確率で打開策の知恵を教えてもらえる
方法2-2.期限を切って、そこまでに解決の目処がつかなければ見切りをつける
→方法1の人に尋ねようのない場合、このような冷静な判断ができると代替案が何もないという事態は避けられる
③:軽快に答えを出す
答えを出す作業を丁寧にやりすぎる・固執しすぎるのではなく、軽快に答えを出して検証サイクルを回すと、解の質を高めるスピードが上がります。「完成度よりも回転数」「エレガンスよりもスピード」なのです。
「人工知能の父」マービン・ミンスキーが、リチャード・ファインマンを評した次の言葉こそ、質の高いアウトプットを出すことの本質です。
第5章:メッセージドリブン〜「伝えるもの」をまとめる〜
最後の章は、実際に論文やプレゼン等の資料をまとめる作業の解説です。
どんな話をする際も、受け手(聞き手)は専門知識はもっていないが、的確な伝え方をすれば必ず理解してくれる存在として信頼する。「賢いが無知」というのが基本とする受け手(聞き手)の想定です。
この章では「本質的」「シンプル」という2つの視点の磨き込みをおこなうため、ストーリーラインとチャートを磨きこむ説明をします。
1:ストーリーラインの磨き込み
ストーリーラインの磨き込みには3つのプロセスがあります。
プロセス①:論理構造を確認する
→ 「WHYの並べ立て」か「空・雨・傘」のいずれかで整理できているか確認
→ カギとなる洞察や理由にダブりやもれがないか確認
プロセス②:流れを磨く
→ 2種類のリハーサルをしながら、1つのテーマをカギとなるサブイシューに分解していく
→ リハーサル1.紙芝居形式にチャートを作成
:めくりながら聞き手が聞きたくなるように話の順番を探り、メッセージのメリハリを修正する
→ リハーサル2.人を相手にした細かい仕上げ
:自分では気づかないクセを指摘してもらtたり、わかりにくい言い回しを見つける
プロセス③:エレベーターテストに備える
→ 「自分がそのプロジェクトや企画をどこまで理解し、人に説明でき、売り込めるのか」を図る
ちなみにエレベーターテストとは、「仮にCEOとエレベーターに乗り合わせて、降りるまでの数十秒間で自分のプロジェクトの概要を簡潔に説明できるか」というものです。
2:チャートの磨き込み
伝わりやすい優れたチャートの3つの条件は以下となります。
条件1:イシューに沿ったメッセージがある
条件2:軸のタテとヨコに明確な意味がある
条件3:メッセージを支えている(メッセージに対してチャートが見当違いではないか?)
そして、上記の条件を満たすための磨き込みのコツが以下の3つです。
コツ①:1チャート・1メッセージを徹底する
→ シンプルになり、伝えたいことがはっきりします。「何を言うか」だけでなく「何を言わないか」も大切です。
コツ②:タテとヨコの比較軸を磨く(4つの見直しポイント)
→ 1.軸の選択をフェアにする
→ 自分に都合の良い軸ばかり選ばない。信用にも関わる。
→ 2.軸の順序に意味を持たせる
→ 「大きさ順」「プロセス発生順」などの視点で並べ直すだけで、分かりやすくなることも。
→ 3.軸を統合・合成する
→ 統合・合成して共通の軸をつくることで、絡まりあったものがシンプルに比較できる。
→ 4.軸の切り口を見直す
→ チャートのメッセージ性が弱いと感じたら、軸の選択を見直す必要もある。
→ 例:「人の属性」というセグメントで切ったものを、「年齢」で、「場面」で切ってみるなど
コツ③:メッセージと分析表現を揃える
→ 例:差分を表現する場合
→ 差分の大きさに意味があるなら、単位を揃える必要がある。
→ 変化の度合いに意味があるなら、単位の異なるデータを評価する。
本書を読み終えて
本書は職種を問わずに学びがある、仕事術の根幹的な内容だと感じました。
問題を解く前に、イシューの「見極め」をしているかどうかについて。
実際に問題(課題)を見つけた場合に、それをどうしたいか・どう解決したいのか、に気持ちが引っ張られ、正しい問題提起になっているかまで考えられていないという事態にも覚えがあります。
もちろんそれはサービスを良くしたい、チームを良くしたいという気持ちのあらわれですが、進めていくうちに根本の問題を見極められていなかったことに気づくこともありました。
著者が大切にしていることに「言葉で表現する」ことが書かれています。
当然のようですが、ひとつひとつを掘り下げてみると、「だからどうしたい?」「なぜそうするの?」が抜けていることも多くありますね。
序章で語られた「犬の道」の話は、自分にも非常に刺さる内容です。
なぜなら私自身も、IT業界に入ってからの最初の2〜3年はこの「犬の道」を歩んでいたからです。
若さゆえに、多くの業務をすること、なんでもやることに意義を見出していましたし、その方法が良いと思って部下に伝えていたこともありました。
きっと本書を読まれている方の中にも、かつてこの「犬の道」を歩んできた人は多いのではないでしょうか。著者も歩んだ経験があるとのことです。
早くからこの思考ができていればと思いつつ、当時は根性に頼ったおかげで様々な経験もできましたし、「犬の道」の経験があるからこそ、何が必要・不必要か見極める力もつくのかな、と今はポジティブに考えております。
「バリュー(価値)のある仕事」をおこなうために「犬の道」を歩むことはお勧めしませんので、本書が参考になればと思います。
さて、まもなく新年度の始まりですね!新卒の方に会えるのも楽しみです!
私の新卒の思い出は、3/31まで飲んでいたせいか入社初日に胃腸炎になり、2日目には会社を早退したことです!!!
そんな私でも社会人続けられてるので、大丈夫!
ペパボでは現在採用強化中です。
全国47都道府県から採用しています!
キャリア採用については以下よりご覧ください。
採用やペパボのことで相談などありましたら、
Twitterにて随時ご連絡をお待ちしています!
以上、ホスのおなつでした。
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