本と育つ、本で育つ yearning for islands
島、どんな島?私の島。小さな島。人のいない島。入り江、砂浜、森、泉、湖、小川、ここちよい風、咲き乱れる花々、色あざやかな果実、日当たりの良い丘に建つ私だけの家・・・思い描くだけでわくわくしてくる。
「エルマーのぼうけん」、「宝島」、「ロビンソンクルーソー」、小学校低学年で読んだこの三冊が、私の島へのあこがれの原点。特にその挿絵によって私の想像力を培ってくれたのが「エルマーのぼうけん」だ。作者ルース・スタイルス・ガネットの義理の母親、ルース・クリスマン・ガネットが描いた絵心あふれる島の地図は、見ているだけで楽しくわくわくし、その後自分が創作活動をする際に念入りに描いた島の地図の手本となった。
三冊を読むのとちょうど時期を合わせたように、フジテレビ「世界名作劇場」で「ふしぎな島のフローネ」が放映され、今でも主題歌を歌えるくらい夢中で見ていた。小学校中学年になると、「三十棺桶島」や「二十四の瞳」(珍しく和書)が加わり、小学校高学年の「つばめ号とアマゾン号」で私の島への憧れは確固たるものとなる。
この物語の素敵なところは、子供だけで過ごす無人島での夏の暮らし!行き来できる場所にお母さんや見守ってくれる大人たちがいるとは言え、ヨットを操り、運搬した食べ物で自炊し、すべてを自分たちで決めて行動する子どもたちに私は驚嘆し、尊敬し、魅了された。作者のアーサー・ランサム自身が描いたその挿絵は、イギリスらしく(と私は感じた)素敵で、なんといっても「ヤマネコ島」の地図が素晴らしい。「エルマーのぼうけん」の地図の大人版のようで、地図だけ見ていてもまったく飽きることがなかった。この島で、子どもだけで暮らせたら!怖がりで虫嫌い、料理に興味がなく自炊など夢のまた夢、そんな私だからこそあこがれの思いが膨らんだ。
そして中学生以降、生涯の愛読書となるルーシー・モード・モンゴメリの作品たちが私の人生に登場する。「世界で一番美しい場所」プリンス・エドワード島との出合いで、私の島へのあこがれは深化してゆく。モンゴメリがことばで描く島の自然の美しさは、いつ読んでもこころ震える感動を私の中に呼び起こす。自分のふるさとが島で、そこが世界で一番美しいと思えたモンゴメリの幸せ!私もそこに生まれていたら、きっと同じ思いで幸せに生涯を過ごしたことだろう・・・!
さて、大人になった今も、私の島へのあこがれは募る一方だ。英米児童文学の中でも特にモンゴメリとイギリスの作品が好きなのは、どちらも舞台が島であることが一因だろう。他から離れて存在することで育まれる個性。他から離れることで得られる解放感。「離れて」在る島は私のanother world、そこにはきっと自由があり、のびのびと生きられる。そんな思いが私を島に惹きつける。孤島に建てた小屋で生涯の長い時間を過ごしたトーベ・ヤンソンの思いが、こころの中の島への思いに重なる。いつか私も・・・!
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