これ来たら、絶対開ける。掟破りのダイレクトメール
やぁ、DMセンセーじゃ。
メリークリスマス🎄
今日は、ホワイトクリスマスに絡めて...というわけではないが、珍しい「真っ白な」DMを紹介しよう。
熊本市にある、健康食品などの通販企業、株式会社えがお。
黒酢や肝油のサプリで一頃は凄まじい成長を遂げた、業界では知らない人がいない有名会社じゃ。
我が家ではもう10年くらい、黒酢のサプリメントを定期購入しとる。
その関係で、よくDMが送られてくるんじゃが、どれもよく企画が練られており、ワシは研究のためウォッチしとる。
キミも、巷の気になる広告やDM、デザインなどはマメにストックして分析してみるといい。マーケターとしての眼が鍛えられるし、実戦でもその知識や感覚が役立つからのう。
それでは、真っ白なDMとはいったいどんなものか、さっそく見ていくぞ。
(1)外封筒
見てくれ、ビックリするくらい真っ白じゃろ?
①必要最低限以外いっさい記載なし
コピーも、ビジュアルもない。ただあるのは、
・差出人(社名と所在地)
・開封促進コピーとキリトリ線
のみじゃ。これだけ気持ちよく何も書かれていないと、むしろ何か重要な知らせなんじゃないかと思ってしまう。例えば、督促とか、何かへの招待とか、はたまた事業に関する重要な案内とか…
一般的な外封筒では、上記の要素以外に、開封したくなるような「お得な情報」「サンプル在中」をチラつかせたり、「申込期限」「15日間限定!」のように煽る表現を入れるものだが、それを完全に逆手にとって「無」に振り切っているところがスゴイ!だから、受け取り手は余計に気になるのじゃ。
(常日頃見慣れているような)販売促進っぽい匂いを出さず、あえて事務的な通知に見せかけることで「あれ、なんかいつもと違う。この大人しさが妙に気になる」という心理を起こすことから、実は開封率が高いとも言われておる。まぁ、たまにやるから効果があるのであって、一度「引っ掛かったら」次回からは効力は薄まるじゃろうが。
で、実際に首を傾げながら開封すると、下の写真のように3つのツールが入っておった。これらはまぁ、「定番3兄弟」=レター、ブローシャー(商品リーフレット)、オーダーフォーム(注文ハガキ)じゃな。
これらの封入物の状態を見て、何か気づくことはないかの?いつも言っとるが、ボーッと眺めているだけじゃダメなんじゃ。わからんか?
これが答えじゃよ。封入物ってのは、普通は数点ある。多いものでは5点くらい入っているものもある。DMの受け取り手に読んでもらいたいものが複数ある時、「どういう順序で読んでもらうか」は大切な視点じゃ。
通常は、以下の順で読み進めてもらう。
「ご挨拶」(なぜこのDMを送ったか/読んだ後どうして欲しいかを)
↓
「ご案内」(買ってほしい商品の説明/取ってほしいアクションのガイド)
↓
「申込み」(フリーダイヤル/注文用紙/QRコード/検索ワードなど)
この流れに沿って、封入物は
レター
↓
ブローシャー
↓
オーダーフォーム
の順に見てもらうように仕向けるんじゃ。
このDMでは、受け取り手の次のようなアクションが想定されておる。
封筒が届く(宛名を確認する)」
↓
どこからだろう?と裏面を見る
「あ、えがおからだ。何だろう?」と思う
(すでに同社で購入経験のある人に送っているので受け入れられる)
↓
封筒裏面上部をハサミで切り取って開封する
↓
そのまま、封入物を取り出す。
じゃから、外封筒の裏面側から見た場合、ちゃんとレター→ブローシャー→オーダーフォームの順にツールが重ねられておるんじゃ。基本的なことじゃが、マーケターたるもの、こういうことがサッと出来ねばならんぞ。
それじゃ、ツールを見ていくぞ。ここでは、レターとブローシャーに注目してみることにする。
(2)レター
レターひとつにこれだけのTIPSが隠されておる。さすが熟練の通販企業じゃ。
③縦書き
健康食品を必要とするこの会社の顧客層はシニアじゃ。おそらく60代以上、下手したら70代・80代がボリュームゾーンかもしれん。相当高齢じゃの。高齢者は、縦書きの手紙に親しんでいる。だからこのレターも懐に飛び込むように縦書きにしてあるんじゃ。もう少し若い人向けの化粧品の挨拶状などは横書きのお洒落なものも多く見かけるが、それのようなデザインは、高齢者からすると「違和感」があるので注意な。相手に話を聞いて欲しければ、相手の土俵に乗ることじゃ。
④段落とスペースをうまく使っており読みやすい
特にイラストなどは使用しておらんが、文の塊を作り、間を一行開けていることで、大変読みやすいのう。そこそこの長文だが、ストレスを感じないじゃろ?こういう気配りも、作り手としては忘れてはいかん。
⑤差出人は担当者個人で、個人的意見・エピソードを織り交ぜている
きちんと担当者のフルネームを明記しており、彼女の言葉でお客さんに語りかけている(感じがする)。もちろん、実際は担当者の「個人的」意見ではなく会社としてのメッセージではあるのじゃが、少なくとも「私(担当者)から、お客様であるあなたへの私信」という演出に成功しておる。
実際に日頃お客さんから寄せられる声、それを受けての自分の仕事への思い、将来にわたり健康でい続けるための提案、がリアリティを持ってスッと読み手の心に入ってくる。
⑥「追伸」を活用している
追伸をつけようという知識があることが素晴らしい。知らないとなかなか出来ない芸当じゃよ。追伸は「あ、そうそう、言い忘れましたが」というニュアンスで、実は本当に言いたいことを最後にメッセージするのに有効な手法なんじゃ。目上の人に対して追伸はマナー違反では?という話もあるが、すでに継続的な取引のある常連客に対しては「むしろかしこまりすぎない方が受け入れられる」というものじゃ。杓子定規の頭でっかちは黙っとれ。
しかも、この追伸、担当者の祖父母に商品をプレゼントしたというプライベートエピソードを被歴し、その際に一緒に渡したのと同じパンフレットをこのDMに同封した、と手がこんでおる。95%嘘エピソードじゃがの笑 しかし、自分の祖父母を思うようにお客さんのことを思って、有益な情報をお届けしようとする姿勢がよく伝わるのう。優秀じゃ!
(3)ブローシャー
⑦商品に込めた社長の思い
このDMは結局、「鮫珠(サメダマ)」という肝油のサプリメントの販売が目的じゃな。その商品を紹介するこのブローシャーには、社長が写真付きで登場し、いかに安くて高品質な商品を開発し好評いただているか、という裏話を披露しておる。これがあることで、商品パッケージと成分だけが記載されているより、ずっとこの商品が良いものに見えてくるじゃろ。
サプリメントなんて世の中に溢れまくっておる。成分や機能や効果に関してはどこも似たようなもんじゃ(一般生活者から見れば)。その中でこの商品を選ぶ理由は、物性的価値ではないんじゃ。差別化する上で大事なのは情緒的な価値。つまり会社への信頼感、ブランドへの好意、額に汗している従業員の顔といったものなんじゃよ。
⑧商品とお客さんの距離を縮める工夫
その意味では、「肝油ドロップ」の話を持ち出すのも上手じゃな。ワシも幼少期は虚弱じゃったから、親に1日一粒食べさせられておった。今の人はいらんじゃろうがの。高齢のお客さんは「懐かしい!」と思うし、体に良いイメージをすでに持っているので、そこに絡めて今回のサメ肝油サプリの効果を訴えると話が早いというわけじゃ。
まとめ
さて、どうじゃったかな?今回のTIPSをおさらいするぞ。
ダイレクトマーケティングの世界において、特に健康食品通販の歴史は長い。じゃからこそ、「お客さんの気持ちを動かす」膨大な知見を蓄えておるんじゃ。商品特性上、ターゲットや顧客層は高齢者であることがほとんどじゃが、相手のことをよぉく理解して適切なチャネル、ツール、クリエイティブでコミュニケーションする必要のあるマーケターに取って、汎用性の高い学びが山ほどある。
謙虚に学んで、仕事に役立ててれよな。
最後まで読んでくれてありがとうな。よかったらスキして行ってくれ。あ、それとフォローもしておくと、今後もダイレクトマーケティングのヒントになる情報を入手できるぞ。じゃ、また次回な。