前田 岳郁

まえだ・たけふみ =昭和生まれの映画ブロガー▼古い映画、古い音楽、古い本、古い漫画が好きな、もと新聞記者 ▼(現時点の)マイベスト映画は「人情紙風船」(山中貞雄監督)▼落語は古今亭志ん生推しです▼福岡県北九州市出身

前田 岳郁

まえだ・たけふみ =昭和生まれの映画ブロガー▼古い映画、古い音楽、古い本、古い漫画が好きな、もと新聞記者 ▼(現時点の)マイベスト映画は「人情紙風船」(山中貞雄監督)▼落語は古今亭志ん生推しです▼福岡県北九州市出身

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「北九州キネマ紀行」へようこそ〜ささやかな前書き

「北九州キネマ紀行」とは 「北九州キネマ紀行」をご覧いただき、ありがとうございます。 このページは、北九州キネマ紀行本編の(ささやかな)前書きです。 福岡県北九州市は、九州の最北端にあります。 北九州キネマ紀行は、このまちでロケが行われたり、このまちと何らかの接点があったりする、主に古い日本映画やそれに関連するエピソードなどを綴っています。 わたしは北九州生まれの一映画ファン(昭和世代)。 子どものころは、まちにいくつかあった映画館が〝学校〟でした。 このまちで映画の

    • 北九州キネマ紀行【若松編】小津映画に〝登場〟する葦平作品〜同時代を生きた2人の戦争体験のこと

      (掲載のイラストはイメージです) 映画「麦秋」に〝登場〟する「麦と兵隊」 小津安二郎(1903〜1963、以下小津)と言えば、「東京物語」などで知られる映画監督。日本映画史の教科書には必ず名前が出てくる人。 その小津作品に、若松(福岡県北九州市若松区)出身の芥川賞作家、火野葦平(1906〜1960、以下葦平)の作品が出てくる映画がある。 それは1951(昭和26)年公開の「麦秋」。 主演は、原節子。 この年のキネマ旬報の日本映画ベストテンで1位になった。 この映画

      • 北九州キネマ紀行【八幡編】竹久夢二がいたまち枝光|竹久家が暮らした大正の活動写真館をたどって

        夢二は枝光に住んでいた 大正ロマンの美人画家、竹久夢二(1884〜1934)は明治の一時期、今の福岡県北九州市・八幡の枝光に住んでいた。 そして、創業期の八幡製鉄所で働いていた。 それは彼がまだ何者でもなかった、15歳から17歳ごろのこと。 夢二は程なく家出して上京したが、家族は大正まで枝光に住んでいたという。 夢二と八幡、そして大正の八幡の活動写真館(映画館)事情をたどってみたい。 製鉄所で「筆工」として働いた 夢二は1884(明治17)年、岡山県生まれ。 夢二の

        • 北九州キネマ紀行【若松編】宇宙大怪獣ドゴラが〝東洋一の吊り橋〟を破壊する〜若松出身の俳優・天本英世を見逃すな|そして葦平が見た東宝特撮映画 

          (掲載のイラストはイメージです) 橋の完成2年後に〝襲われる〟 若松(福岡県北九州市若松区)のシンボルの一つは、若戸大橋。 若松と戸畑を結ぶ巨大な赤い橋で、開通したのは1962(昭和37)年。 当時は〝東洋一の吊り橋〟と言われた。 その若戸大橋が、石炭を食べる宇宙大怪獣に襲われ、徹底的に破壊されてしまう‥‥。 それが(橋の完成2年後の)1964(昭和39)年公開の東宝映画「宇宙大怪獣ドゴラ」(監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二、音楽・伊福部昭)。 若松と石炭、天本英

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        「北九州キネマ紀行」へようこそ〜ささやかな前書き

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          北九州キネマ紀行【高倉健を「読む」編】小次郎役の健さんに父親が送った武蔵の絵〜映画「宮本武蔵 巌流島の決斗」

          健さんの数少ない時代劇映画 北九州ゆかりの映画俳優、高倉健(以下健さん、1931-2014)は生涯に205本の映画に出演した。 そのうち時代劇は数えるほどしかない。 「髷をつけるのが苦手で、似合わない」と出演を断り続けたという(キネマ旬報社「高倉健メモリーズ」)。 そのわずかな健さんの時代劇映画の中で、北九州と関係するのが、内田吐夢監督の「宮本武蔵」シリーズ。 1961(昭和36)年から1965(昭和40)年にかけて5作が公開された。 健さんは武蔵のライバル、佐々木小

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          北九州キネマ紀行【門司港編】石原裕次郎が北原三枝と栄町銀天街を歩く〜映画「錆びたナイフ」は、なぜ門司港で撮影されたのか

          昭和30年代の門司・小倉が映る 昭和の大スター、石原裕次郎(1934〜1987、以下裕次郎)が門司港(福岡県北九州市門司区)の商店街・栄町銀天街を歩く。 それも、のちに夫人となる女優、北原三枝(石原まき子)と肩を並べながら‥‥。 それが、1958(昭和33)年に公開された日活の裕次郎主演映画「錆びたナイフ」(舛田利雄監督)。 しかもこの映画、北九州ロケが行われ、門司駅や小倉も映る。 地元的には昭和30年代の映像記録としてもレア度は高い。 当時人気急上昇中のスター映画は

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          北九州キネマ紀行【若松編】アフガニスタンで倒れた医師・中村哲さんの根に張った「花と龍」の〝教え〟

          祖母は「花と龍」主人公の妻 アフガニスタンで人道支援に尽くし、凶弾に倒れた医師・中村哲さん(1946−2019)は、今なお多くの人たちの記憶の中に生き、その功績が色褪せることはない。 中村さんと、北九州・若松が舞台の映画「花と龍」はつながる。 映画に登場する実在の人、玉井マン(主人公・玉井金五郎の妻)は、中村さんの母方の祖母。 この祖母の教えが、中村さんの倫理観の根に張っていた。 その教えは 弱者は率先して庇え 職業に貴賎はない どんな小さな生き物の命も尊べ ‥‥‥

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          北九州キネマ紀行【門司港編】16歳・原節子は門司港からドイツに向かった〜1937年の新聞に見る国民的アイドル出国騒動記

          それは1937(昭和12)年3月だった 戦前・戦後の映画界の大スター、原節子(1920〜2015)。 彼女が門司港(福岡県北九州市門司区)にやってきて、大騒ぎになったことがあった。 それはインターネットもなければ、テレビもない1937(昭和12)年3月のこと。 彼女は当時16歳。 すさまじい熱狂の様子を、当時の新聞からたどってみたい。 初の日独合作映画のヒロインに 小津安二郎監督らの映画出演などで知られる原節子。 彼女は15歳だった1935(昭和10)年、「ためらふ

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          北九州キネマ紀行【高倉健を「読む」編】健さんと小倉の〝接点〟とは〜幻の映画「無法松の一生」、そしてシュルツ君のこと

          「無法松をやっておけばよかった」 北九州とゆかりのある映画俳優、高倉健(以下健さん)=2014年に83歳で死去=は、小倉(現在の福岡県北九州市)が舞台の映画「無法松の一生」に出演する話があった。 しかし、それは結局実現しなかった。 そのことについて、健さんは自著で次のように述べている。 健さんの無法松‥‥。 想像すると、何だかカッコ良すぎる気もするが、これは見てみたかった。 実現していれば、北九州のご当地映画を代表する一本になっていたことだろう。 「無法松の一生」とは

          北九州キネマ紀行【高倉健を「読む」編】健さんと小倉の〝接点〟とは〜幻の映画「無法松の一生」、そしてシュルツ君のこと

          北九州キネマ紀行【門司港編】門司の映画人が監督した「ゴジラの逆襲」〜まちの発展は明治から始まった

          怪獣映画の金字塔の続編 怪獣映画の金字塔といえば、1954(昭和29)年公開の「ゴジラ」 (監督・本多猪四郎、特殊技術・円谷英二ら)。 大ヒットして、翌年の1955(昭和30)年に 続編「ゴジラの逆襲」が公開された。 1作目で死んだと思われていたゴジラは、生きていた。 「ゴジラの逆襲」では、怪獣アンギラスが登場し、ゴジラと対決する。 「ゴジラの逆襲」の監督は、小田基義氏(以下敬称略)。 小田は門司(現在の福岡県北九州市門司区)出身の人。 1909(明治42)年に生ま

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          北九州キネマ紀行【若松編】吉永小百合が若松の女性を演じた「玄海つれづれ節」は映画館への〝愛〟がにじむ

          前を向いて生きる女性を演じた 日本を代表する映画女優、吉永小百合。 彼女が「北九州(若松)の女性」を演じたのが映画「玄海つれづれ節」=1986(昭和61)年公開(監督・出目昌伸、原作・吉田兼好、脚本・笠原和夫ら)。 東映の人情コメディーだ。 吉永の長いキャリアの中でも、彼女が北九州の女性を演じたのは、この作品が唯一のはず(北九州の近くでは、筑豊が舞台の映画「青春の門」に出演)。 「玄海つれづれ節」の舞台は、九州最北端にある福岡県北九州市の若松。 吉永は、ばりばりの北九

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          北九州キネマ紀行【小倉編】「銀河鉄道999」は小倉から旅立った〜漫画家・松本零士が乗った東京行き夜行列車

          高校時代から新聞に連載を持っていた 「銀河鉄道999」などの作品で知られる漫画家・松本零士さん(以下、敬称略)は2023(令和5)年2月13日、85歳で亡くなった。 松本は福岡県久留米市生まれ。 小学校から高校時代を現在の北九州市・小倉で過ごした。 小倉南高校の生徒だった松本は、当時すでに毎日小学生新聞で連載を持つなど、その才能を開花させ始めていた。 松本の漫画家としての〝原点〟は小倉で育まれたと言っていい。 北九州市は、松本ら数多くの漫画家を輩出した。 松本は「北九

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          北九州キネマ紀行【門司港編】戦地に赴く小林正樹監督が置いた〝遺書〟をめぐる物語

          この記事に書いていること 小林正樹(1916〜1996)という映画監督がいた。 「人間の條件」や「東京裁判」などの作品で知られる。 北海道小樽市出身の人だが、九州最北端のまち・福岡県北九州市の門司港とは、一つの〝縁〟がある。 映画「人間の條件」予告編( 約3分) その縁とは‥‥。 1941(昭和16)年12月8日、太平洋戦争が始まった。 小林はその年の5月、松竹大船撮影所に入社していたが、徴兵され 1944(昭和19)年7月、戦地へ移動の途中で門司港に上陸した。 当時

          北九州キネマ紀行【門司港編】戦地に赴く小林正樹監督が置いた〝遺書〟をめぐる物語

          北九州キネマ紀行【高倉健を「読む」編】健さんと江利チエミが見た映画「哀愁」〜そして健さんの映画で流れた「テネシー・ワルツ」

          この記事に書いていること 北九州とゆかりのある映画俳優、高倉健(以下、健さん)は2014年11月10日、83歳で亡くなった。 健さんは1959(昭和34)年、歌手の江利チエミと結婚。 健さんは28歳、江利は22歳だった。 二人は1971(昭和46)年、離婚。 江利は1982(昭和57)年、45歳の若さで亡くなった。 二人が知り合う遥か前、高校生の健さん(高校は現在の北九州市にある東筑高校)は、アメリカの恋愛映画「哀愁」を見て感激した。 一方、歌手デビューしていた江利チ

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          北九州キネマ紀行【小倉編】黒澤明も関心を寄せた? 幻の清張映画「黒地の絵」

          小倉祇園太鼓も絡む小説「黒地の絵」 松本清張(1909〜1992)は、現在の北九州市小倉北区出身の作家。 「黒地の絵」は1958(昭和33)年に清張が発表した小説。 「黒地の絵」の舞台は戦後間もない小倉。 地元の有名なお祭り・小倉祇園太鼓もストーリーに絡む。 清張は「黒地の絵」の映画化を望んでいた。 しかし、結局、それは実現しなかった。 幻となったプロセスをたどると、あの黒澤明(映画「七人の侍」などの監督)も登場する。 「黒地の絵」が映画化されていれば、〝北九州映画

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          北九州キネマ紀行【若松編】高倉健さんが学徒動員されていた地にまつわる不思議な話

          貨車から石炭を降ろす作業をさせられていた 2014年に83歳で亡くなった映画俳優、高倉健さん(以下、健さん)は、戦時中だった中学生の頃、学徒動員されていた。 健さんは当時のことを、次のように書いている。 健さんが学徒動員されていたのは、若松。 若松は九州の最北端、福岡県北九州市にあるまち。 八幡製鉄所(現日本製鉄)は当時、兵器製造の要である鉄を生産し、米軍の攻撃目標になっていた。 「湾」とあるのは、洞海湾のこと。 湾を挟んで南側に八幡製鉄所、北側に健さんたちが働かされ

          北九州キネマ紀行【若松編】高倉健さんが学徒動員されていた地にまつわる不思議な話