それなりに
期待していないが故に、それなりに生きていく元気があるなあと思う。
喫煙所に向かうエレベーターの中で、会社の先輩から軽く相談を受けた。
「仕事、たのしい?」
自分にとって今の仕事は、総合的に見ると楽しくはないので、
「んまあ、別に…可もなく不可もなくですね」
と正直に答えた。
人懐っこい笑顔の先輩は、そうかそうか、と言いながら、
「俺最近楽しくないんだよね」
と悩んでいるようだった。
心配だった。何か救いになるフックがないかと、さりげない風を装いながらいろんな質問をしてみた。
「どんなふうにですか?」
「う〜ん、なんか迷走してるっていうか。やりたいようにできていないっていうか、やりたい方法もわからないっていうか。」
「いつからですか?」
「先週からかなあ。なんかモチベーション上がらないんだよね。」
「何かきっかけがあってですか?」
「最近の顧客層がニーズ掴みにくいからかも。ニーズが難しいから、俺の提案も刺さらないし。」
すごいなあ、と率直に思った。ちゃんとやりたいことがあるからこその煩悶だろうし、モチベーションを上げるために糸口がないかと模索してこその吐露だろう。(単に愚痴をアウトプットしたいだけで、糸口を模索する意図はないかもしれないが、そのアウトプットによって少しでもすっきりするのであればそれは一つの糸口だと思う。無意識ながらでもその行動が取れるのはすごい)
その後も先輩は、私以外の同僚と喫煙所に行く際は「最近どう?」「モチベーションとか維持できてる?」と質問をしていた。
私は今の仕事に特段期待もしておらず、それなりにそれなりにやっていけばいいと思っているのだな、とつくづく感じた。
今の仕事にとびきりの楽しさがあると思っていないし、モチベーションはたまにでも高い日があれば上々だと思っているし、自分がやりたいこともある時はあるしない時はないよなと思っている。(自分の能力は少々過信しているが)
なので、1〜2週間なんとなく仕事が楽しくなくても、改善策を探さずに「まあそういう時期か」で放っておいてしまう。
つい数週間前も、同期から吐露を受けた。
「最近、楽しくないの。私はもっと、社会にこんな影響を与える仕事がしたいと思って入ったのに、それ以前に自分が楽しく働けていないのがしんどい。」
これもまた本当にすごいなと思ったし、自分は浅はかだなと恥ずかしくもなった。
社会に影響を与えたい、社会をこんなふうに変えていきたいだなんて微塵も思わずに進んできた就職活動だった。自分の好きなことをしたい、それが誰かに届いてあわよくば誰かを救えたらラッキー、そんな自己本位な考えだけで出版業界を目指した1年間だった。
何かに期待しない、理想を追わない、ということは大きな悲しみや苦しみを避ける私の防衛機制だと思うが、やはり期待や理想がある人はそれを原動力に動けるし、変えていけるのだろうなと感じる。
それ故に苦しさもあるだろうが、期待や理想を追える人はやはり自分にとっては尊敬の対象だ。
ただ、期待や理想を持たず、それなりに、それなりにと生きている私だからこそ、続けることもできている。
上手くいかなくても「まあそんなもんでしょ」、元気がなくても「今だけ我慢すればそのうちひょこっと元気になるでしょ」、たまに上手くいったら儲けもん。やる気がない時はこっそり昼寝だってするぜ俺は。
あと、期待や理想が特にないので、ちょっとしたことでも嬉しい。今日の退勤後なんかは2つもいいことがあった。1つは電車を降りた直後にICカードをポケットから落とした人を見つけて、急いで拾って走って渡したら「ありがとう」と言われたこと。もう1つはファミリーマートでサラダとおつまみとビールを買ったらお会計がピッタリ1000円だったこと。なんかいい日な感じがしてカレンダーを見たら今日は大安だった。
ゆる〜くそれなりに生きているので、些細な喜びがあるだけで「なんか今日ついてるかも」と思える。なので生きるのもぼちぼち続けていられる気がする。
前までは目標に向かって邁進する頑張り屋さんはえらい!それに比べて自分は!うわーん!と思っていたが、緩やかにそれなりに続けていけるのも一種の強みなのかもね、と思うようになってきた。(以前は頑張り屋さんを理想としていたのが、今となっては自分にはできないと諦めただけかもね、とも今思った)
何はともあれ、強みは違えどみんなえらい!明日もいいことありますように!!
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