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ターゲティング

今回は、STP分析のTのターゲティングに入っていきたいと思います。ターゲティングは、「40代の女性」という程度のものではなく、見える化することを意識していただきたいと思います。ターゲティングは、設定することが目的なのではなく、「的(まと)」を見える化することで他の従業員さんや外部のマーケティング会社にも共有できるため、そのような意味で的を定めることが重要です。

当社自身も、経験を積みながら、少しづつステップアップしてきて大きな会社のプロジェクトにも関わらせていただくようになった経験による学びの中で、少しでもあなたの役に立つターゲティングの方法を共有していきたいと考えています。もしあなたがターゲティングにおいて課題を感じることがあれば、読み進めていくうちに少しでも理解が深められたら嬉しく感じます。

前回のセグメンテーションに加え、このターゲティングというプロセスは、事業成功への可能性を高めることには大変重要であるため、ぜひその要点を学んでいただきたいと思います。

セグメンテーションとターゲティング

ターゲティングとは、限りある資源を、つまりヒト・モノ・カネをどのように活かすかという意思決定でもあります。また同時に、顧客とブランドの双方にとって利益の最大化を目指すものでなければなりません。

セグメンテーションの項でも触れましたが、Rank(優先順位)、Realistic(有効規模)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)という4Rが判断基準として機能します。

セグメンテーションとターゲティングがうまくいかなければ、誰にとっての商品・サービスであるかが定まらず、誰にも喜んでもらえないという状況になってしまいます。もしあなたがターゲットは「全員」という設定をしてしまっていれば、いくつかの課題を生んでしまいます。

1つ目は、ターゲットを社内で共有できなくなります。ターゲットを見える化するためには、ペルソナという仮想の人物を設定しますが、共有できなくなるということは部門間でバラバラにターゲット像を解釈してしまったり、施策もバラバラになってしまう可能性があります。結果的に、クリエイティブも意味付けができないものになり、好き嫌いという好みで判断されてしまいます。

2つ目は、ブランドイメージや提供価値が定まらず、コミュニケーション戦略に課題が生まれます。本来ならば、顧客が明確に定まることで、その顧客に喜んでもらえる価値を提供できますが、ターゲットが「全員」となると、多様化しているニーズに応えることは非常に困難であると考えられます。また、年齢や性別だけのターゲット設定であれば、ターゲットを「全員」と設定しているときと同様に、こちらも多様化したニーズを満たせることはできなくなります。

ターゲティングは、マーケティングにおける最も重要な意思決定の1つです。その設定は事業の発展性を左右するものとしてお考えいただきたいと思います。

事業戦略における正しいターゲット設定の決め方

ターゲティングの成功とはどのようなものかといえば、顧客のニーズと商品・サービスの交差点が最高レベルであり、なおかつ市場がもっとも最大化した状態ではないかと思います。ニーズにヒットさせるためには、ターゲットを選択した上で、なおかつ競合他社との比較という課題にも直面します。そのため、作業的なターゲティングにならないように、KPIを定めた上で、ターゲティングが機能しなければならないということを頭の隅っこに考えておかなければなりません。

繰り返しますが、ターゲティングの成功というものは、適切なマーケットで収益を最大化させることが前提であるということです。あなたはそのターゲットにマーケティングを行ったときにどれくらいの事業性があるかなど、様々な視点で包括的に検討しなければなりません。ところが、そうは理解していても、なかなか簡単にターゲティングが機能せず、多くの企業が顧客像をつかめないまま事業を進めているケースが見受けられます。あなたはチラシやパンフレットを作るときにだけターゲット設定を年齢と性別だけで作成したりしていませんか?そんなときは、もっと根本的なブランド戦略の見直しが必要かもしれませんね。

話は戻しますが、留意すべきターゲット設定のポイントは、

・設定したKPIを実現しうるものかどうか。
・そして、どうターゲットにリーチさせるか。
・競合他社との差別化は明確かどうか。
・顧客像が見える化できているかどうか。

ターゲティングは、ペルソナという形にて共有すると社内のコンセンサスが取れやすく、有効であると思います。

ターゲティングとは、他を捨てるということ

事業において、絞り込むという事をよく耳にするかもしれません。ニーズの多様化により、以前のようなマスマーケティングのやり方では、顧客にメッセージが届かなくなったことが理由ですが、中小企業においては、特にマーケットやターゲットを絞り込んでいかなければ、事業の優位性を得ることはできません。絞り込むということは、他の顧客層を捨てるということです。この「捨てる」ということがなかなか困難であるようです。

よく例えに挙げるのですが、ハイブランドのコアターゲットは、まさにモデルのような方々をイメージできると思います。時に洋館で、時に海岸で、彼らはきれいに洋服を着こなしています。しかし、店頭で商品を購入するのは、アジア人ですね。

この2つの人物像は実はブランディングにおいては、意味合いが違います。ブランディングにおいては、普通の消費者がモデルになるようなことはありません。ハイブランドの企業は、きれいなモデルをブランドターゲットとしていますが、マーケッティングターゲットは普通のどこにでもいる一般人なのです。どこにでもいる一般人がコアターゲットとなってしまうと、ブランドへの憧れが落ちてしまって、商品は購入されなくなってしまいます。

大変雑な表現をしていますが、ターゲットを絞るというのは、このブランドを表現できる、またさらに高いブランド価値を作ることができるというものでなければなりません。ターゲットを絞ることの意味がご理解いただけましたでしょうか。この場合であれば、普通の一般人を捨てるということです。誰にでも購入してもらいたい気持ちを抑えて、ブランドを高めるためにターゲットを絞ることは、結果的に消費行動を促すことができるのです。この点がターゲティングのテクニックになります。

ターゲティングの絞り込み方

さて、ターゲティングの具体的な方法を語るウェブページはあまり有りませんので、そのやり方を共有します。STP分析のセグメンテーションについて解説したページで以下の切口についてお伝えいたしました。

・地理的変数によるセグメンテーション(ジオグラフィック変数)
・人口動態変数によるセグメンテーション(デモグラフィック変数)
・心理的変数によるセグメンテーション(サイコグラフィック変数)
・行動変数によるセグメンテーション
・固有変数によるセグメンテーション

ターゲティングはこれらのセグメンテーションから具体的に絞り込んでいきます。

例えば酒販店を経営しているとします。地理的変数であれば、出店エリアを、都市部、地方、関東、関西、北海道、東北、中京・・・と区切ります。そしてターゲット顧客は、最寄り駅から500m圏内、500m-1km圏内、1-2km圏内、2-3km圏内、3-5km圏内、5-10km圏内、10km以上などと区切ることができます。これらのリストの中から、関東を選択したり、その中でも最寄り駅から500m、500m-1kmと選択したりしていきます。

人口動態変数においても同様です。家族構成を、核家族、単身、3世帯、シングルマザー、シングルファザー、両親、子供1、子供2、子供3、祖父、祖母などと区切ることができれば、この中から、3世代で、両親、子供2、祖父と選択します。それらの意図としては、両親と祖父が一緒に晩酌したりするシーンを描くことで、先のステップでのクリエイティブでその方々の日常の団らん風景を切り取ったポスターなどが作成されるわけです。セグメントからターゲットを選択していき、イメージをより鮮明に具現化する作業がターゲティングで行う作業になります。

では、心理的変数ではどうでしょうか。ライフスタイルという切口で言えば、アウトドア派、インドア派、車好き、自然派、高級志向、流行志向、機能志向、などが上げられますね。酒販店であれば、アウトドア派をターゲティングすると、クーラボックスを無料レンタルしてBBQセット用の飲み物セットをサービスとして提供できるかもしれません。

もちろん、そのようなニーズが有るかどうか、つまり、商売となるかどうかを検討することが最優先ですが、ターゲットが絞れてくるだけで、サービスを強化できることも多々あります。このようにターゲットが明確になるだけで、漠然とした商品・サービスが急にキラキラと可能性が輝き出すような感覚になるのは私だけでしょうか。

ターゲットが明確になると、商売も「イケる!」と思えるようになってきます。それは競合他社さえも関係なくなる領域があるかもしれません。その積み重ねが「戦わないブランド」へと成長させるきっかけになると信じています。

ターゲティングの成功事例

羊羹で長く愛されているブランドは、ご存知の「とらや」ですね。とらやは自社のブランドの高さを非常に理解している好例だと思います。和菓子業界のハイブランドであることは間違いありません。とらやはそのことをよく理解されているのだと思いますが、デパートには出店しているのに、ショッピングセンターで見かけることはありません。ターゲットがショッピングセンターの顧客ではなく、品質を求める百貨店のブランドだと意識しているのです。もしここで、ターゲットを安価なものを欲しがっている顧客と設定してしまうと、一気にブランド価値が下がってしまいます。

スターバックスはいかがでしょうか?お店に行けばわかりますが、若い感度の高そうな方々がゆったりとした時間を過ごしていますね。コーヒーチェーン店のドトールなどとはターゲットが明らかに異なることがわかると思います。カフェスペースでタバコをふかしている中年はいませんし、お金に余裕のない学生もいません。スターバックスは設定したターゲットを見事に顧客にしているのです。

高級スーパーの成城石井はいかがでしょうか。立地も駅から近く便利ですし、住宅地にはあまり見かけません。品質の高いものを世界中から探してきては、新しい食文化を求めている方々がターゲットになっています。STP分析というものは、企業のビジネスモデルと密接な関係を持っています。

ブランド価値を高めることと顧客ターゲット及び顧客ニーズに整合性を取ることが最も難しいことかもしれませんが、その価値を最大限必要としているターゲットを必ず見つけることが重要です。時折、同業他社の動向によって、自社の廉価版のブランドをリリースしてしまうケースがありますが、その選択が本当に正しいのか、意思決定の前に深く考えていただきたいと思います。

ターゲティングまとめ

いかがでしたか?ターゲティングのやり方が理解いただけたでしょうか。ターゲティングにおいて、一般消費者のような全員というターゲットは機能しません。また40代女性という大まかすぎるターゲットは、より具体性が必要です。ターゲット顧客の見える化と呼んでいますが、そのプロセスがターゲティングです。

ただ、条件も色々とあって、設定したKPIを実現し、競合他社との差別化を行い、顧客像が従業員と共有できるまでに具現化していく必要があります。また一方で、Rank(優先順位)、Realistic(有効規模)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)という4Rという判断基準を持つことも求められます。

どんなターゲットにしようという意思決定をする上でも、様々な要因が関与していることは事実です。これらは感覚に頼るのではなく、どれだけ戦略的にロジカルに考えられるでしょうか。しかもクリティカルに。

ターゲティングは正しくできているだろうではなく、Aというケースの場合はどうだろうか、Bというケースはどうだろうかと様々な状況を想定して、仮説と検証の上に設定していきましょう。当事者としては、あまりクリティカルに考えたくないことにも直面するかもしれません。しかし、その積み上げでしか事業を成功に導けないのです。ターゲティングはそのための大切なステップだと理解し、アップデートを重ねていただければと思います。

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