セグメンテーションとは
セグメンテーションについて、よく問い合わせをいただくことは概念的で良く理解ができないということです。セグメンテーションをターゲティングと混合してしまい、違いを理解できていないことが非常に多いと感じます。多くのサイトでは「環境分析を前提として、不特定多数の人々を同じニーズや性質を持つ固まり(セグメント)に分けることであり、市場細分化といいます」と表記されています。これらは正しいけれど、実際の現場においてどのように活用すればいいか理解できない、という声も非常に多く聞かれます。
また、セグメンテーションの目的を見失うケースもあり、結果的にマーケティング活動が徒労に終わってしまうこともあるかもしれません。今回はきちんとセグメンテーションを学び、目的に沿ったやり方でセグメンテーションの解説を薦めていきたいと思います。男女や年代だけでセグメントを行っていたというケースが少しでも減っていくことを望んでいます。きちんと理解し、いつでも活用できるように理解を深めていただければ、あなたのスキルアップにつながっていくことと思います。
セグメンテーションの背景
街を歩けば、いつも新しいものに目が移り、いつの間にか気に入っていた商品から興味がなくなりその商品は消えていく。そんなことってあまり気にされて生活していないかもしれませんが、市場や消費者においては、成熟化が進み、ニーズが多様化していることはご理解いただけるでしょう。
世の中の人に喜んでもらいたいと思って作った商品でも、実際に全員に喜んで頂くことなんて不可能な話で、一度に全員は満たすことができません。そして全員に喜んでもらうということは決して効率的と言うことはできません。市場が成熟し、消費者のニーズが多様化する中において、企業は顧客を絞り込んでいかなければなりません。その第一歩がセグメンテーションとなります。
意図的に、戦略的にセグメンテーションを行うことで、企業にとっては企業な資源を有効に活用できるというメリットに繋がります。抽象的な表現ですが、私が好きな言葉で「掘り下げれば掘り下げるほど穴は横に広がる」というものがあり、どこを掘り下げるかその選択肢を作ることがセグメンテーションということができます。
STP戦略におけるセグメンテーションとは?
STPとは、S:セグメンテーション、T:ターゲティング、P:ポジショニングの頭文字です。外部環境分析と内部環境分析の後にこのSTP分析を行うというのが、マーケティング戦略の一般的な進め方ですが、S:セグメンテーションというものは、どんなセグメントに分類するかを考えていく大変重要なステップです。このセグメントの分類の仕方には、「基本セグメント」と「固有セグメント」というものがあり、特に固有セグメントの方は業界によって異なるため、後ほどやり方を共有させていただきます。
セグメンテーションとターゲティングの違いをなかなか私も理解できていなかったんですが、分類して一覧にするまでがセグメンテーションで、その一覧から選択することがターゲティングです。そのため、セグメンテーションが最初の段階でずれていると、ターゲティングも結果的にずれてしまうことになります。ポジショニングはセグメンテーションと用途が違うので理解はされやすいのですが、ここでもセグメンテーションがずれてしまうと、独自の強みを業界においてどう発揮するかが異なってしまうので、しっかりと考えていきたいものです。
セグメンテーションにおける切り口
さていよいよここからがセグメンテーションに入っていきます。具体的な切り口を参考にご紹介します。従来、マスマーケティングが主流だったマーケティング手法ですが、画一化された方法は大量生産・大量販売の時代には適していたかもしれません。しかし、先に触れたとおり市場の成熟化と消費者のニーズが多様化した現代においては、特定のニーズに応えることができない状況となってしまいました。
そこで、ターゲットを特定の属性で分けて市場を細分化することで、マーケティング効果が最大化するアプローチが有効になりました。特にITだと理解しやすいかもしれませんが、ヤフーとグーグルにおいてある程度ユーザーは選別できますし、facebook、Twitter、instagram、pinterest、linkedinなどそれぞれユーザーが異なることは理解できることと思います。
また、最近のSNSの仕組みで進んでいるものは、さらに顧客を細分化できる仕組みにもなっています。それら環境が整ってきていることもセグメンテーションが大事になってきている理由だと思います。一般的にセグメンテーションで利用されている変数/切り口は以下に上げられます。
・地理的変数によるセグメンテーション(ジオグラフィック変数)
・人口動態変数によるセグメンテーション(デモグラフィック変数)
・心理的変数によるセグメンテーション(サイコグラフィック変数)
・行動変数によるセグメンテーション
・固有変数によるセグメンテーション
これらを徐々に掘り下げていきますので、あなたも自身の商品サービスの切り口を具体的にイメージしながら読み進めてみてください。
地理的変数によるセグメンテーション(ジオグラフィック変数)について
まずは、地理的変数についてですが、項目を決めることから始めます。地理的変数というものは、地域的なことに起因するセグメントになります。簡単な例で言えば、コンビニエンスストアでは、地域によっておいている商品が異なったり、おでんの出汁を変えてみたり地域の特性に合わせて提供する商品・サービスを変更しています。
また居酒屋などで競合他社と同じエリアだけれども、駅から近い・遠いによって店舗の規模を変えたり、価格を変えたりと特長を出しているのは、そのような地理的背景もあるかもしれません。そのため、世界の地域、日本の地域、地方、市町村、人口規模、人口密度、駅からの距離、気候、都市部、郊外、文化、宗教、経済状況などが切り口として考えられます。
昨今は、これらにオンライン、オフラインという切り口も考えていけるのではないかと思います。日本の地域でも、オンラインかオフラインかという判断が当然あるわけで、ネット通販で東京をターゲットにするということがマーケティングにおいて可能になっているので、どんな切り口をもたせるかの1つの切り口になろうかと思います。
さて、上記に挙げたものでセグメンテーションを解説できているのではなく、その切り口をどう細かくセグメントするかを考えてみたいと思います。例えば、日本の地域という切り口であれば、関東/関西/四国…だったり、東京/名古屋/千葉…だったり、まずはこれらのエリアを一覧にしてみてください。駅からの距離であれば、100m圏内/100-500m/500m-3km…という具合に、都市部か郊外かであればどちらかがセグメントになろうかと思います。
宗教であれば、仏教/神道/イスラム教/キリスト教…という具合にセグメントを一覧にすることがセグメンテーションです。この段階では、どれかに決めていく作業ではなく、リストにする作業といったほうがわかりやすいことと思います。どれかに決めていくことは、後々のターゲティングやポジショニング、さらにはペルソナ設定時に詳細に欠けるものになってしまいます。それは、つまりは穴埋め作業になり、いずれ廃れていく運命をたどります。
そして、企業ごとに、業界ごとに、商品・サービスごとにこれらの切り口とセグメント一覧は異なります。大事なことはこのセグメンテーションの段階では、なるべく白紙で発想を豊かにして考えてみることをおすすめします。
人口動態変数によるセグメンテーション(デモグラフィック変数)
人口動態変数も同様に項目を決めていきましょう。人口動態変数というものは、年齢、性別、家族構成、家族のライフスタイル、年収、職業、最終学歴など、ヒトの活動に起因する変数であり、デモグラフィック変数と呼ばれることもあります。具体的には、子育て、住宅や就職などは人口動態変数によるセグメンテーションがよく活用されます。
人口動態を元にしたデータは、総務省や公的機関等からも統計や調査結果が公開されていますので、オンラインで検索できるものもあります。さて、人口動態変数もセグメントしてみましょう。
例えば、年齢という切口であれば参考として、10代未満/10代/20代/30代…という具合にセグメントすることができます。また、家族構成ということであれば、核家族/3世代家族/単身/未亡人/4人家族/5人家族…というようにセグメントできました。家族のライフスタイルは、昨今多種多様になっています、自然派、都会派、健康志向、趣味優先、スポーツ、アウトドア、インドア、文化など多様化していることがご理解いただけると思います。これらは将来的にペルソナ設定にもに生かされていきますので、様々な視野で一覧を作成してみてください。
心理的変数によるセグメンテーション(サイコグラフィック変数)
心理的変数も項目を決めていく作業です。心理的変数とは、社会階層、ライフスタイル、性格、価値観、好み、購買動機など感性に起因する変数であり、サイコグラフィック変数ともよばれています。趣味や個性を表現できるファッションや自動車などは心理的変数が影響していると考えられます。
例えば、ハーレーダビッドソンのファンは、自分が気にいるような表現をされています。パーツを購入し、バイクをカスタマイズしてオリジナルのバイクに仕立てていく、そんな楽しみをまさに謳歌している方々です。ハーレーを売ることは文化を売ることと言われているのは、ハーレーダビッドソンジャパンの元社長です。
社会階層とは、高い、低い、中くらいなど、ライフスタイルは人口動態でもお伝えしました。価値観は、どんな価値観を優先しているかと考えてもいいかと思います。健康重視、お金、家族、友人、信用、性欲、時間、などが挙げられます。サイコグラフィック分析は、共感できるところとできないこともすべて含めて一覧にしていきましょう。
行動変数によるセグメンテーション
行動変数とは、曜日や時間、購買の状況、経路、頻度、使用場面、求めるベネフィット、利用経験、ロイヤリティ、利用水準、購買準備段階などの消費者が実際に購入した要素で分類するものです。昨今では、解析ツールやMAなどの台頭により、オンラインでは随分と顧客の動きが把握できるようになってきました。どのような意識で、どんな様子でユーザーが買い物をしているかなどが行動変数に関係します。
例えば、雑誌を例に上げると、コンビニやamazon、書店で購入するという購入場所や経路による違いもあれば、毎月購入する、定期購入する、都度購入するという頻度の違いもあるわけです。また、最近は決済方法も多様化していることも興味深いですね。カード払い、交通系電子マネー払い、現金、プリペイド、仮想通貨などの多様化していますが、あなたはどんな決済方法を選択しますか?
求めるベネフィットは、品質、サービス、価格、スピード、利便性、懐かしさなど様々なものが挙げられます。ロイヤリティは、ゼロ、強い、中程度、などのレベルがありますね。いかがでしょうか。このように購入における行動変数というのは、いろいろと考えられるものですね。
固有変数によるセグメンテーション
固有変数によるセグメンテーションとは、あなたの業界・業種に特化した変数を用います。例えば、ホテルなどの旅館業であれば、年間の旅行回数やマイル獲得量、旅の目的である一人旅か家族旅行か、出張かなどが固有変数にあたります。また、リフォーム会社であれば、既存の住宅の不満、リフォーム対象場所、希望内容などがリフォーム業界特有のセグメンテーションになると考えられます。
一般的なセグメンテーションで賄えないところが、各業種ごとに存在します。それらのセグメントも可視化することで、ターゲティングとポジショニングがより具体的に差別化ができるようになります。私たちがウェブ制作を行う際の固有セグメンテーションは、ウェブ制作の経験値、過去のご不満や課題、スイッチする目的、などなどをセグメントしていきます。そうするだけで、より顧客像も具現がしやすくなりますので、固有変数を活用することはオススメします。
効果的なセグメンテーションと4R
ここまでセグメンテーションの方法についてまとめてまいりましたが、細分化しようとしても切りなく行う必要は有りません。むしろ不要な細分化は避けたいものです。セグメンテーションに複雑さが増すとターゲティングが明確でなくなってきますので、4Rという判断軸をお持ちいただく必要があります。4Rというものは、Rank(優先順位)、Realistic(有効規模)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)です。
・Rank(優先順位):あなたの商品・サービスに関する経営戦略から判断した重要度によってランク付を行います。
・Realistic(有効規模):セグメント分けした市場が十分な収益を生み出すための規模が存在するかを検討します。ターゲットの規模が小さければ、十分な収益は確保することができません。
・Reach(到達可能性):到達可能性は、顧客ターゲットに対して届くようなマーケティング施策があるか、そして、難易度はどれくらいかということを判断します。
・Response(測定可能性):セグメントの規模や購買力など、測定しうる数値がどれだけあるかを検討します。顧客の反応を適切に測定したり、分析したりすることがさらなる施策の土台となります。
セグメンテーションの事例
ここではセグメンテーションの事例をご紹介したいと思います。
ハーゲンダッツ
余談になりますが、ネスレから売却が決まったハーゲンダッツですが、なぜ売却したのでしょうか。それは、いくら収益が上がっていても、今後の健康志向における消費者のニーズは満たせなくなるというネスレの判断だそうです。会社が売上・利益ではない時代が来ているのだと感じられました。
さて、スーパー、ドラッグストアやコンビニにて私はハーゲンダッツより高いアイスクリームを知りません。みなさんご存知の通り、プレミアムアイスクリームの雄ですね。アイスキャンディは、おやつ市場でありますが、ハーゲンダッツは、高品質なおやつを求める大人というセグメントを定義しました。
限定的なショップを除くと、2013年には、日本国内におけるハーゲンダッツの店舗は無くなってしまいましたが、現在では流通市場におけるパッケージ商品の展開のみとなっています。結果、ハーゲンダッツは、どこででも購入できる高品質なおやつというセグメントで今も人気を博しています。
アップル
お馴染みのアップルですが、iPhoneは市場の大きなシェアを誇り、時価総額トップを走り続けるアップルですが、マーケティングが大変優れているのでご紹介したいと思います。
私自身は、アップルユーザーですが、パソコンが一般的に普及した成熟期、それは他社は機能的なスペックを高めたり、頑丈にしたりとパソコンの能力を高めている時代でした。しかし、性能よりももっと必要とされているニーズがあるのではないかと考えたのではないかと思います。アップルが他の商品よりも優れていたことは、ユーザー視点の使いやすさです。
それは一言で言ってしまえば、デザインと片付けられるかもしれません。しかし、デザインというものはユーザーが存在して初めて意味を成すものですので、人の使いやすさにこだわった結果、アルミを切り出して作り出したmac bookやmac book airなどが、商品のパフォーマンスと相まってユーザーを獲得したことを記憶しています。
性能を強化していた他社に比べ、ユーザー視点の使いやすさにフォーカスを当てたアップルが、デザインに拘るクリエイティブな市場カテゴリーを更に成長させたという事例です。
セグメンテーションのまとめ
市場の成熟化が進み、消費者の価値観が多様化している昨今において、企業は限られた資源の中でより効果的・効率的にビジネスを展開していきたいと考えています。あなたの顧客はだれですか?私はこの問をとても重要視しています。本当のあなたの商品やサービスを必要としている顧客を見つけるためには、無鉄砲なマーケティングでは実現が不可能になっています。
そこで、専門家や事業家の知恵を借りる中で、このセグメンテーションという手法が今後引き継がれるターゲティングとポジショニングを含めて、顧客を特定するために有効な手段であると考えています。セグメントには、いくつもの変数が有りますが、闇雲に羅列するだけでは意味がありません。
1つのゴールは、ビジネスを効果的・効率的に推進していくためなので、そのセグメントが有効であるかを判断しなければなりません。そのための切口に4Rをご紹介しました。4Rというものは、Rank(優先順位)、Realistic(有効規模)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)のことで、それらの視点で事業性があるか、持続性があるかなどを検証していきます。
そして、大切なことは時間軸です。セグメンテーションは100%の回答を持ってはいません。継続して、検証してき、STP分析の中で精度を高め続けることが大事です。事業と同様、持続的にアップデートしていくことを心がけていただければと思います。