ブランディングとマーケティングの違い
あなたは、ブランディングとマーケティングの違いについて、きちんと理解されていますか?
ブランディングとマーケティングには明らかな違いが存在します。しかし、その違いが理解できると、ブランディングがすごくわかりやすく、楽しくなります。他の会社のブランディングも理解できるようになってきますので、意識してブランディングについて考えることをおすすめしています。
ブランディングとマーケティングにおいては、マーケティングよりもグランディングの方が戦略として上位に位置しています。マーケティングはブランディングのための手段として位置づけることが重要です。
私がブランディングとマーケティングを学びだしたのは、広告会社でのキャリアをスタートしてからでした。マーケティングというものを理解していなかった私は、コトラーのマーケティング・マネジメントという約1000ページほどの分厚い書籍と格闘することを決めました。
読み進むというよりも学習という言葉が近いかもしれませんが、ページをめくるほどにのめり込んで行きました。
後から知ったのですが、そのコトラーという人はアメリカのマーケティングの神様みたいな方で、事細かに内容が書かれており、今でも第一線で活躍する方達のバイブル的存在になっています。その書籍の中で、コトラーがマーケティングの定義を明記しています。
マーケティングとは、個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである。
ーフィリップ・コトラー
また、アメリカのAMA(アメリカマーケティング協会)の定義は、マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」とあります。
つまり、「企業の価値を顧客に提供し収益を生み出すプロセス」と両者は言われています。私もマーケティングということに関して言えば、まったく異論はありません。
アメリカマーケティング協会の「ブランド」の定義は、以下となっています。
ーアメリカマーケティング協会ー
個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの。
弊社では、「ブランドとは、企業/商品/サービスが、購買者/非購買者に対して与える心象そのものです。ブランドは、購買者の感情移入を引き起こし、愛着心を育てる影響力を持つものです。」と定義づけています。ブランディング(BRAND+ING)はそのための活動となります
マーケティングという活動は、実は企業目線であることがいえます。またブランディングというものは、消費者目線であるということです。これは2つの違いを明確にする上で大変重要なことです。
企業は業績を高めていくことがミッションとしてあるわけですから、「どのように販売するか」ということを考えていると思います。しかし、そこに落とし穴が存在します。売ろう、売ろうとすればするほど、企業目線となってしまいがちになります。
企業に必要なことは顧客目線になること
そこで大切なことは徹底した顧客目線になることです。あなたにとって顧客目線ということはどういうことでしょうか?ぜひ深く考えてみていただきたいと思います。顧客目線とは、顧客自身がどんな生活を理想としているか、理想の自分像はどのようなものか、をしっかりと理解することではないでしょうか。
そのためにフィールドリサーチや顧客インタビューを積み重ねていくのですが、お客様の価値観を理解し、どのような感情移入を起こすかを深く推察してみてください。そして確信に至るまで考え尽くしてみてください。
またマーケティングは企業の視点であると同時に、ブランディングにおけるエクスターナルブランディングの一環でもあります。社外に向けたブランドの浸透というものは、マーケティングの戦略立案手法を活用します。
何度もお伝えしているかもしれませんが、ブランドはどこに存在するかと言えば、顧客や従業員を含めた人々の頭の中に存在します。手法においてはエクスターナルブランディング=マーケティングであるため、その活動を通じて顧客の頭と心のシェアを獲得していくことが大切です。
ブランディングとマーケティングの違い7つのポイント
マーケティングとブランディングの違い「起点」
マーケティングとブランディングの違いはその着想の起点が異なります。
・マーケティング:自社の商品・サービスをどのように顧客に購入してもらうか?その仕組をどうするか?
・ブランディング:消費者にどうやって感情移入してもらい、ファンになってもらうか?どのように理想の関係を構築していくか?
マーケティングは企業視点、ブランディングは顧客視点であることは、何度も強調してきました。消費者が理想の自分を表現できるような商品・サービスを創造し、なおかつ、その商品・サービスが消費者の理想の自分を表現できると感情移入させることが大事です。ここがミソです。
何度もお伝えしますが、ブランドはどこに存在するかというと頭や心の中に、像や感情として存在します。ブランディングはそれらにダイレクトに影響を与えられるように取り組んでいく必要があります。
マーケティングとブランディングの違い「消費者とは」
当サイトにおける消費者とは、顧客、生活者、ターゲット、企業、ヒトなどざまざまな意味合いをもたせています。大切なことは、消費者(購入する人・企業)はヒトであるということ。
デザイン思考でも起点は人ということをその中心に据えていますが、感情を持ったヒトは必ずしも企業が思う通りに行動してくれるとは限りません。だからこそ、マーケティングとブランディングの違いをしっかりと理解しておきましょう。
・マーケティング:自社の商品・サービスが他社よりも優れていれば、消費者に選んでもらえる。
・ブランディング:商品・サービスの優位性に加え、前向きな感情を高めることで消費者に選んでもらえる。
人間の脳というものは、3層構造になっています。外から人間脳、哺乳類脳、爬虫類脳という構造になっています。脳の外から中心に向けて、理性、感情、本能となっています。人間はどんなに理性で考えていても、やはり動物的な部分があり、結果消費行動に大きな影響を与えています。
消費者の視点でシンプルに考えると、好きなものにはたくさんお金を使うし、興味のないものにはお金を払うことはありません。マーケティングとブランディングの違いについて言えば、消費者の感情というものに目を向けているか向けていないかの違いといえます。つまり、消費者が求めているものは、機能や実質的な価値だけではないということがご理解いただけると思います。
マーケティングとブランディングの違い「マーケットについて」
マーケットというものの捉え方も両者には違いがあるといえます。
・マーケティング:自社の商品・サービスが他社よりも優れており、効果的な販売促進活動でシェアを高めることができる。
・ブランディング:モノが溢れている社会において、消費者に選択される商品・サービスになるためには、消費者のインサイトを理解し、マーケットを創造していかなければならない。
モノが溢れている時代と言われている昨今、顕在化しているニーズを満たすにはすでに競合他社が存在しており、なかなか参入してシェアを獲得するということは簡単とはいえないでしょう。
新たな商品・サービスで市場を想像することでシェアを生み出している会社は、顧客の行動心理や消費者心理/インサイトというもの深く理解しようとしています。顕在化していないニーズを、顧客を観察することによって見出しているわけです。その手段としてエスノグラフィという調査方法も大変有効であると言われています。
先駆者利益というものは数字以上にブランディングに影響しますし、ブランディングは消費者から新たなシーズを発見し、マーケットを創造することが大変重要なことで、そのような商品・サービスを生み出す事業構想力が求められています。
マーケティングとブランディングの違い「プロモーションについて」
マーケットというものの捉え方も両者には違いがあるといえます。
・マーケティング:自社の商品・サービスの認知度を高め、他社との優位性を周知させる。
・ブランディング:消費者の感情を動かし、ブランドへの感情移入を促進させる。
プロモーションにおいてマーケティングは消費者に購入してもらうための活動であり、ブランディングはファンを増やすことをゴールとしています。そのため傍から見れば双方が同じような施策に見えるかもしれませんし、双方が結果的に業績を上げることを目指していることも忘れてはなりません。
当社においては、ブランディングの1つの手段として、マーケティングというものが存在していることは何度かお伝えしてきました。そして、ブランディングがマーケティングの上位概念であることもご理解いただけると思います。
そのため、プロモーション:コミュニケーションとして消費者へ企業の情報を届けるということにおいては、ブランディングという意識でマーケティングを行うことが大事であると考えています。マーケティングを通じて消費者の感情を動かし、ブランドへの感情移入を促進させることが、ブランディング目線のプロモーションということが出来ます。
マーケティングとブランディングの違い「顧客接点」
・マーケティング:なるべく多くの方に情報を発信して、できるだけたくさんのヒトに情報をとどける。
・ブランディング:電話応対、接客、インテリアデザイン、パッケージ、理念、など全ての点において顧客接点においてポジティブな感情を抱かせる。
この点がマーケティングとブランディングの明らかな違いであるといえます。マーケティングは、4P/4Cというフレームワークにも代表されますが、あくまでも商品・サービスに提供時におけるコミュニケーションであることに対して、ブランディングにおいていえばすでに顧客が商品・サービスに直に触れる前から考えていくことが求められます。
例えば、「東京 ホテル」というキーワードで宿泊予約する際、マーケティング目線であればオンラインの広告を出して、データを計測していきましょう。そして、WEBや広告内容に改善を加えていきましょう、と考えたとします。
しかし、ブランディングにおいては、上記のマーケティングを行いつつも、そもそもお客様を受け入れるだけの考え方や在り方は充分消費者を感動させるだけ充分なものだろうか。電話で問い合わせがあった際にその応対は消費者の課題を解決させることが出来るだろうか。当社の考え方や在り方をお客様はどのように理解しているだろうか。
などなど、非常に多面的に考えなければならず、それらは消費者の体験を見込み客、購入、リピート、ファン化というステージに置いてそれぞれ感動を与え、感情移入を生み出すものになりうるかを考察しなければなりません。ただの情報発信や露出と言ったレベルのものではなく、包括的に顧客のインサイトを理解し感動を生み出すものに作り上げていくことがブランディングと言えるのです。
マーケティングとブランディングの違い「目標・ゴール」
・マーケティング:他社と差別化を図り、最高の商品・サービスを消費者に提供する。
・ブランディング:消費者に愛され、尊敬され、ファンになってもらうブランドを作る。
目標やゴールにおいて、明らかにマーケティングとブランディングに違いが存在します。それは「販売すること」と「販売することとファン化すること」の違いといえます。
販売するためには、競合他社より良い商品で、リーズナブルな価格設定が必要ですが、そのことに加えてどのようにファンになってもらうかを考えることが決定的な違いです。顧客にファンになってもらうことはなかなか簡単なことではありません。しかし、事業を永続的に発展させるには、販売するだけでなく、ファンを増やすということを目指していかなければなりません。
マーケティングとブランディングの違い「キャンペーン」
・マーケティング:目前の数字目標達成のために、売上を作り出さなければならない。
・ブランディング:顧客の感情移入を生み出し、ファンになっていただけるような関係性を作り出そう。
事業を継続させていくためには双方が重要です。売上も作り、ファンになっていただく。この両軸を成立させることがクリエイティブに求められます。
「ブランディング無しのマーケティングはで凶器であり、マーケティング無しのブランディングは戯言である」
売上を作るためのマーケティングと信頼関係を築くためのブランディング。なんとしてでも売上を作るということであれば、会社の哲学に反してしまうこともあるかもしれません。また、売上に結びつかないブランディングというものも価値がありません。この2つを実現する事ができるキャンペーンを意図していくことが大事なことではないでしょうか。
マーケティングとブランディングの違い:まとめ
いかがだったでしょうか?当社のお客様においてもブランディングは興味ないという方も多数おられます。それは、売上に結びつくことが無いからという誤った捉え方をしています。
ブランディングとマーケティングは一対であり、表裏一体です。ブランディングとマーケティングは重なり合う活動であり、どちらかをやればいいというものでは有りません。
多くの方は知らず知らずのうちにブランディングもマーケティングも行っています。私はそれでいいのだと思います。私たちはプロフェッショナルですから、その点は意識的に資源を使わなければなりませんが、結果企業が成長していて、消費者から良いブランドであると認識してもらっていればいいわけです。
ただし、今回このブランディングとマーケティングの違いについて述べる理由は、明らかに視点が違うということです。戦略を立てて、コミュニケーションを行う場合は、企業目線だけではなく、消費者目線を持つということが必要になります。