そうだ、定家の更級日記を読もう
大河ドラマの影響なのかふと思い立って昔のときどき「みみずののたくったような」と呼ばれてしまうあの文字を読みたい気持ちが出てきまして。手元にちょうど藤原定家の写本した更級日記(笠間影印叢刊)があったので、まあ手近にこれがあるし、高校の参考書(全文訳付き)もあるし、これを使うかーと思って使うことにした。まあ、定家は平安時代の人かっていうとちょっとギリギリなんじゃないの?とは思うけども。更級日記は源氏物語が読みたくて仕方がない藤原孝標女が書いたものだから内容的に大河ドラマの題材とはリンクはしているか(こじつけ)。
定家の文字なんだけど、大河ドラマで出てくる流麗でみやびな平安貴族の文字のイメージとはちょっと離れている。あんまりつながって書かれてもいないし、すらら〜と流れる文字ではなく、インクの太いところが目立つ、ガッチリした字。つながっていないだけでもかなり読みやすいんじゃないかなって思う。ちなみに定家のお父さんや息子さんの文字は似てる部分もありつつなんか線が細い。親子でもずいぶん受ける印象は違うなあと思う。
勉強ってほどのことでもなく、飽きっぽいので、飽きた時にダメージが少ないようにとりあえず無料でできることは無料でしようスタンスなのだけど、読み方としては、定家の文字を何て書かれているのか参考書を横において読み方を調べる。で、見たことない文字だけど、これは「か(ka)」と読むらしい、となった時はその字母を調べる。字母は「人文学オープンデータ利用センター」の「Unicode変体仮名一覧」あたりを見ると大体わかったりする。
で、気がついたんだけど、定家の手書きのこちらにとっては読みにくい文字以前に、今まで学校教育で触れてきた「古文」の更級日記の文章ってあれでも随分現代人が読みやすく作られてるんだなと。定家のは句読点もなければ、使われている漢字も非常に限られている。点も丸もないひらがなの文章なので、意味が掴みにくいような気がする。「古文」だと章ごとに「門出」とか「竹芝寺」とかタイトルがつけられているけれどそれもない。あの章立ての名前って誰がつけたんだろね?
更級日記という作品については、定家はオリジナルを写したわけではないらしい。どうも自分が持ってる写本に間違いが多いからあたらしく写本しよう!って写本したらしい。他の人が書いた写本も現存しないので今私たちが読んでる現代語訳とか古文の時間で使ってる更級日記は全部定家が写本した更級日記をもとに作られている。
なんか写本っていうと、一字一句違いなく写す努力がされているものというイメージがあったのだけど、どうもそうじゃないらしい。当時は1音につき一字ではないので、同じ「i」という音を書くにしても「以」にしよっか、「意」にしよっかそれとも「伊」にしよっかなーと選択肢がたくさんあってどれを使っても「i」だったわけで。自分からしたら、本を手書きで写すのは大変な作業だと思うし、どの字を使うか選択するよりも元の本と同じ字を使った方が労力が少ない気がするんだけど、どうもその辺の感覚は違うらしい。定家の場合も元の写本が間違ってると思ったところは彼なりに修正しているし、写本に写本を重ね続けることで内容すら少しずつ変わってきているのかも知れないなと思うと、オリジナルはどんな風に書かれていたんだろうなあと妄想が捗る。
で、仮名文字を読むというところに戻ってくるのだけど、どうにかして更級日記の定家の文字が字母はどんなだったか簡単に調べる方法はないものか。だって更級日記なんて絶対古くからたくさんのそれはもうたくさんの誰かが研究しまくってる題材でしょ?って思うので調べたら、あった。
広島大学の日本語史研究会というところで作られているサイトなのだけど、検索窓を空欄のままに検索ボタンを押すと、全文が字母と一緒に出てくる。現在訂正中(最終訂正日2012年4月23日)とのことなので精度が100%でないにしろものすごい心強いサイト。
定家の更級日記を見つつ、字母検索しつつ思ったんだけど、こうやって検索性が高くなるようにデータ化してくれるのすごくありがたいなあと思う一方、1音が一字に対応していないこの時代で、同じ人が書き、同じ字母なのに、違う字形を使っている場合、音が同じなので、内容に変わりはないはずなのだけど、その文字をそこで選んだ定家の意図みたいなのは省かれてしまうなあと。もしかしたらそんなもんはなくて単に見た感じがいいみたいなものなのかもしれないけど。
なんてことを思いつつ、オロオロえっちらおっちら、更級日記を読む。
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