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【アート感想】雨の日の室内みたいな:アレックス・カネフスキー「The Battle of Shahbarghan-シャバーガンの戦い」
アーティスト名:アレックス・カネフスキー
展覧会名:「The Battle of Shahbarghan」
会期:2024年4月6日ー5月24日
場所:104GALERIE - Home
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どうしてだろう。ここは不思議に居心地が良い。
「不思議に」というのは、ここに展示してある絵画は、一般的に綺麗だとか癒されるという類の絵画ではなく、静寂の中にどこか不穏な空気を纏っているからだ。
仮にそれぞれの絵が映画を構成している何万コマもある画像の内の一つだとして、普通ならこの後に何かしらのハプニングや変化が起きそうなものだが、これらの絵からはこの先物語が展開していく雰囲気があまり感じられない。途切れる気配のない分厚い雲のようにずっと同じような場面が淡々と続いていきそうな、そういう種類の怖さを感じる。
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展覧会名「The Battle of Shahbarghan-シャバーガンの戦い」とは1646年にインド、ムガール地方で起こったとされる、あまり知られていない戦いです。(中略)
『人は皆、他人には分からない戦いのさなかにいる(Everyone we meet is fighting a battle unknown to us.) 』という格言について、カネフスキーは私たちのありようをよく表していると言います。本展を構成する10点の作品は互いに関連性がなく、描かれている主題も異なります。それぞれに、外からは分かり得ない紆余曲折や苦しみが内包されているのです。
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あの居心地の良さはそういうことだったのかもしれないと思う。例えば人から失敗談を聞いて、自分だけが四苦八苦しているわけではないんだなぁと感じて癒されるようなことがあの空間でも起きていたのかもしれない。
それは、自分の苦しみが薄まる感覚だ。
もしくは、雨の日に家に籠っているような安心感とも似ている。ザアザア雨が降りしきる日の薄暗い室内が居心地良く感じるのは、外の雨が室内に及ばないことを知っているからだ。
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私は会話を退屈にするような事柄こそが絵を面白くするのだと心から思っています。人が言葉で表現できるようなことは絵の中では何も成しません。むしろ私が絵という存在で一番愛しているのは、言葉で説明できない何かなのです。
(後略)
何が描いてあるかのかは、見ることでしか受け取ることができないのです。
-アレックス・カネフスキー
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