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町田そのこ「ぎょらん」感想~信じるか信じないかはあなた次第です~

小学生のころ、「こっくりさん」が流行っていた。

文字と数字が書かれた紙の上に数人で十円玉に手を置き、こっくりさん、こっくりさんと呼びかけ質問し答えてもらう。

そう、あの「こっくりさん」

自分は動かしていないはず...。
なのに自然とこっくりさんに導かれ動く。

途中で指を離すと呪われるー(;Д;)ギャー!という、謎のルールあり(←たしか?)
思わぬ回答に怖くなり手を離してしまう私。
呪われるー(;Д;)ギャー!

呪われないために、このビー玉を持っていれば大丈夫と友人A子から渡され、ビビりの私は数年にわたりポケットにしのばせておいた。

その事実を後々になってA子に告白すると、
返ってきた答えは、「そんなことあったっけ」
えぇ?脅かしただけ?それとも慰め行為で?ビー玉くれたの...。
私のビビり時間を返しておくれーー!( ;ㅿ; )


これは信じてしまった私の、信じるか信じないかはあなた次第体験談。

本書もまた、信じるか信じないかはあなた次第です。

自分だけが知る罪や罪悪感を背負う人たちが前を向くまでのお話。

<簡単あらすじ>
死者が最期に遺す、赤い珠。それがもたらすのは、救いか、それとも苦しみか――。人が死ぬ瞬間に生み出す珠、「ぎょらん」。それを噛み潰すと、死者の最期の願いが見えるという――。十数年前の雑誌に一度だけ載った幻の漫画、『ぎょらん』。そして、ある地方の葬儀会社で交錯する「ぎょらん」を知る者たちの生。果たしてそれは実在するのか? 

最近、仕事のトラブルでメンタル落ちで読書が進まない中、キンドル読み放題に入っていたのでお風呂読書でちまちまと読む。

既読の町田さん作品の中で一番好き♡

今の私に届き響く。

ちなみに既読なのは、
「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」
「52ヘルツのクジラたち」
「うつくしが丘の不幸の家」
「星を掬う」
「宙ごはん」


死者が最後に残すぎょらん(イクラ)のような珠がつなぐ六編からなる連作短編集。

友人の死がキッカケでニートになった青年が葬儀屋で働くことで、出会った人々を通じ遺された者はどう生きるのかを考え成長していく姿が軸になって描かれる。

どれもよかったのですが今の私には、「冬越しのさくら」が響いた。

私生活で上手くいかず仕事に邁進するが、まわりから孤立する女性が主人公。
仕事に依存する姿がうるさい中堅社員にしか見えない姿が私と重なる。
でもちゃんとわかってくれる人がいるのよ。

強がっても弱くてもいい。

ありがちなテーマだし、落ちも想像がつくし、普段の私ならいつもの感じね…で終わっていた。

でも読了後に、どの物語も前を向ける。
生きていく強さをもらえる一冊に感謝。

やっぱり読書は良き。
読書は、ここではないどこかへ連れていってもくれるが、真っ暗な沼に埋もれた私を光ある沼に誘ってくれる。
そう読書沼は、欲望の赴くままにハマるが、好きなときに抜け出せる安全な沼なのだ。


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