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高瀬隼子「水たまりで息をする」「犬のかたちをしているもの」感想~埋まらないかたちをさがす~

芥川賞受賞作「おいしいごはんが食べられますように」が好きだったので、
高瀬さんの他の作品も読んでみたく手に取りました。

<「水たまりで息をする」簡単あらすじ>
ある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づいた衣津実。入浴を拒み続ける。彼女はペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるように...。


<「犬のかたちをしているもの」簡単あらすじ>
卵巣の病気を患ってからももともとすきじゃないセックスに抵抗を感じ、つきあっている郁也にものうちセックスしなくなると宣言した薫の前に、郁也が金だけ払ってセックスした女、ミナシロからこどもをもらってくれないかと提案される...。

【どちらも意表を突く設定が面白い!】

<水たまりで息をするの場合>
・風呂に入らなくなった夫なんてー!
びっくり仰天の前に頼むから風呂にはいってくれよ、小言が先にきそうなのに主人公の妻は...という展開の意外性。

<犬のかたちをしているものの場合>
・主人公の彼氏と愛情なしの関係でセックスし子供ができ堕すのは怖いので産むけど育てられないので生まれた子は育ててくれと依頼してくる女。
びっくり仰天の前に、子供をもらってくれと、頼む女も、頼まれる女も、頼む男も、フツーに会話してる感覚が狂ってないか。

【どちらも対比させて読ませる】

<水たまりで息をするの場合>
・台風が去った水たまりの中で見つけた魚「台風ちゃん」を飼う。
台風ちゃんはテキトーに飼育しても死なない強さがある。
・夫はふざけた後輩に水をかけられたことがキッカケとなり風呂に入らなくなったのか?夫は弱いのか?

<犬のかたちをしているものの場合>
・死んでもなお埋められないカタチをした大好きだった犬のロクジロウを愛しているのと同じくらい恋人の郁也のことが主人公は好きのかと疑問を抱く。
・子供は産んでおいたほうがいいという風潮のなか、産む産まないの問題が自分では育てず渡すことでクリアとあっけらかんとしていたミナシロだったはずが、生まれてきた子がかわいくミナシロが選択したのは…。

【どちらも最後に、アッと静かに驚く仕掛けが上手い】

夫の行く末に、産まれた子供の行く末がどうなっちゃうのーー!

でも一番の読みどころ共通点は!
パートナーの存在とは何なのか?なのかな...。

埋まらないかたちを模索するパートナーたちの姿が歪にみえるが、その歪さは誰しもがもってるんだろうね。
そこに共感もできるのよ。

そして、不完全な人間たちの生き様が生々しい。

ぶっ飛んだ設定ゆえに痛みが心の中に浸み込み自分の弱さも知り、
完全じゃなくてもいいと安心もできる。

うん、私は好きな作品たちでしたよ♡

うまく捨てられたような、捨てるのさえ大事にできなかったような、両方の気持ちがした。(「水たまりで息をする」本文より)

わたしの考えているところの愛の形で、ちゃんと。愛してもらえるのかな、この人や、わたしの家族に。(「犬のかたちをしているもの」本文より)

#読書の秋2022 #水たまりで息をする #犬のかたちをしているもの






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